商談が流れないようにすべきこととは?
今回は「見積もりサプライズによる案件消滅をなくす方法」についてお伝えします。
以下は弊社の「お客様1万人調査」で「購買プロセスの途中で優先順位が下がり、結果として購買自体を行わなかったことがある」と回答された方に対する質問です。質問内容は「購買の優先順位が再び上がるためには何が必要でしたか」というものです。
この質問に対してトップの項目となったのが「見積もりが高すぎたことが原因なので、値引きさえしてくれれば上がったと思う」というものでした。 しかし、『無敗営業 「3つの質問」と「4つの力」』(日経BP社)にも書いておりますが、その解決策として安易な値引きをすることは推奨できません。
なぜなら、値引きに依存すると、その他の価値提供で勝負できなくなってしまうからです。当然、特定の状況下で値引きが必要な場合もありますが、それが前提となってしまうと、営業としては致命的です。
重要なのは、お客様が価格に対してどう感じるか
ここで重要なのは「お客様のお金に対する感覚」に影響を与えることです。たとえば、高級ブランドの店舗に入ると、内装やスタッフの態度から高額商品が展示されていることが予想されますよね。これは、お店が事前にお客様の「価格に対する期待値」を形作っているからです。
商談の場でも同様のことが言えます。営業としては、お客様がどれくらいの相場感を持っているのか外からはわかりません。ただ、お客様自身が何らかの相場感を持っていることは確かです。
そこで、営業が行うべきはこの相場感にどう影響を与えるかです。お客様の相場感を理解し、適切な価格で提案することができれば、「見積もりが高すぎる」という障壁も低くなります。ですから、営業戦略としては、単なる値引きではなく、お客様が価格に対してどう感じるかを慎重に考える必要があります。
お客様が高い価格の相場感で考えている場合、見積もりでのサプライズは生じません。例えば、数億円の商材を扱っている企業様に営業強化支援コンサルティングの提案をする際「TORiXさん、安いですね」と言われることがあります。
それは、数億円の商材を取り扱っている企業様ですので、弊社の提供する営業強化支援コンサルティングにかかる金額は簡単に支払うことができるからです。 一方で、数百円単位の商品を扱っている企業様と商談をすると、厳密に予算について聞かれる場合があります。相場観に対して「そんなに高いの?」というふうに思われてしまうのが見積もりサプライズの正体です。それを防ぐために、弊社は商談の始めの5分間でお客様の予想を上回るようなポジティブな印象を与えることを意識しています。
典型的な営業パターンで商談を進めるのをやめよう
では、具体的にどうしたらいいのでしょうか。いくつか例を挙げます。
まず1つは、「安く売ってくる会社がやりがちなことはやらないようにする」というものです。
例えば「本日お時間いただきましてありがとうございます。まずは簡単に弊社の概要を紹介させていただきます」と会社の自己紹介から入り、サービス紹介をして、「いかがでしょうか?」と聞く典型的な営業のパターンで商談を進めることです。
お客様からすると「またか」という感じになり、高い価値を感じてはいただけません。それをやった後に高い価格を提示すると、やはり「そんなに高いの?」という反応になってしまうでしょう。まず、そういうことをやらないということが重要になります。
では、どうしたらよいのでしょうか。
1つは、まずしっかりとした下調べをしてきているということを示すことです。「御社のホームページも拝見しました」と伝えれば、「準備をしてきているんだ」と思っていただけるでしょう。大半の営業はそういう準備をちゃんとやっていないというのが現実ですので、「ちゃんと準備をしていますよ」というサインをはっきり示すだけで、ポジティブなサプライズが生まれます。 また、いきなり核心を突いた質問をする、というのも効果的でしょう。
「高いですね」と言われないためには下準備が必要
弊社代表の高橋が20代の時からずっとやっていることに「核心質問」というものがあります。高橋は20代の時、人事部の方に対して教育研修サービスを売っていました。教育研修業界は沢山のプレイヤーがいる世界です。当時高橋がいた会社の10分の1くらいの価格で売ってくる会社もありました。ものすごく価格の幅が広い業界だったのです。そのため、最初の5分間でサプライズを作らないことには、見積もりを出すときに「高いですね」と言われてしまうのです。
その中で、いつも「御社の課題は何ですか」と最初に課題をヒアリングさせていただいていたのですが、ある時、微妙にお客様の表情がこわばるということがありました。そこで、その時に「あれ、なんかちょっと変なこと言いましたか?」と聞いてみたのです。するとそのお客様が、「いや、もういつも喋っていますので」とおっしゃったのです。 その時、高橋は「普通に課題とか悩みをヒアリングされるという行為は、お客様からすると年がら年中やっているから、その時点で「その他大勢」と一緒にくくられてしまっているのだな」ということに気が付いたと言います。
重要なのは「予定調和」を崩すこと
そこで高橋は、どうしたらその課題とか悩みをうまく聞き出せるかを考えました。
高橋は当時、一部上場企業の大手企業ばかりをターゲットにアプローチしていましたので、あるときに「御社のような就職人気ランキングが高い企業様だと、優秀な人たちが多くご入社される中で課題などないのではないでしょうか?」と聞いたのです。
すると、「いやいや、そんなことないんですよ」という感じでお客様がお話をされ始めて、その後はすごく自然に話をしてくださったのです。
この予定調和の崩し方には再現性があります。当時、とにかく商談の最初の5分間を並の営業がやっているものとは違う形にできないかと試行錯誤する中で、最も人に真似してもらいやすいのが「核心質問」だったのです。
「核心質問」をした後に、さらに「今ここに時間を使っている理由」についてしっかりとお客様に話していただけると、他の営業とは違った存在としてお客様から見ていただけるようになるでしょう。 その辺りのことについては弊社代表高橋の著書『無敗営業 「3つの質問」と「4つの力」』(日経BP社) と『質問しだいで仕事がうまくいくって本当ですか? 無敗営業マンの「瞬間」問題解決法』(KADOKAWA社)に詳しく記載しておりますので、よろしければご覧ください。