決定権者が曖昧だと危険な理由
今回は「複数人との商談をうまく進めるコツ」についてお伝えします。
営業の方とお話すると、「相手の方が複数人いらっしゃる商談はなかなか進まず難しい」といったお悩みをよく耳にします。
弊社の「お客様1万人調査」で、誰が決定権を持つのか曖昧なまま複数人の参加者で営業との商談に臨んだことがあるかをお伺いしたところ、6割以上の方が「ある」と答えています
さらに本調査において「具体的にはどのような状況なのか」をお伺いすると、下記のような状況が浮かび上がってきました。
- 誰が最終決定をするのか不明な商談(検討プロセス自体がが整っていない)(23.5%)
- 担当者が判断可能なのか、上司の承認が必要なのかが定まらず、念のため上司が参加する商談(22.9%)
- 決定権を持つ「キーパーソン」が複数人いる商談(20.15%)
- 貴重な意見を言ってくれそうな人が巻き込みの趣旨で会議に招待されている商談(20.0%)
2割以上の方が「経験したことがある」と回答した状況は、攻略法を考える上でも押さえておきましょう。
複数人での商談を進めるにあたってよく生じがちな課題は、営業がお客様に対してボールを預けるような進め方をしてしまうことです。これでは、決定権を持つ方が曖昧なので商談中には決まりません。困った挙句に「では一旦、皆さんでご相談の上、またご連絡ください」といった言い回しをしてしまうと、商談は一向に進まず、停滞してしまいます。
商談停滞への攻略法は「仕切る」こと
商談を停滞させないためには、相手が複数人の商談では、まずきちんと「仕切る」ことです。「仕切る」というのは商談の流れや段取りをしっかりと計画することです。弊社代表の高橋がよくやっているのは、商談の最後1分間を事前に想定することです。
具体的には、「誰がどんな発言をしてくださったらこの商談は大成功だと言えるのか」を定義し、その大成功の状態を、なるべく詳しく書き出します。「キーパーソンの合意を得る」という抽象的な状態を目標として設定してしまうと、達成できたのかどうかは分かりづらくなってしまうからこそ、具体性は重要です。
「商談最後の1分の状況」から逆算方式で考える
商談を段取りよく進めるための準備として、商談に参加する人物とセリフを脚本のように書いていくことをおすすめします。解決しなくてはいけない疑問や課題などが浮き上がり、目標へのステップも明確になってきます。お客様の疑問や懸念点を想定し、それらを払拭できるような答えを用意しておくのもよいでしょう。
しかし、単に疑問や懸念点を払拭できるように備えるだけでは充分ではありません。商談全体の流れも考慮に入れる必要があります。例えば役職者の方と営業が同席する場合、それぞれの人物がどのように振る舞うのか、場合分けをしながら熟考することが大切です。
役職者といっても、主導権を握ってお話される方もいれば、まずは営業の話を聞き、それに対して反応をするという方もいらっしゃいます。あれこれと想像を巡らせながら、「こちらが狙っている特定の発言をお客様がする」という最終的な目標から逆算方式でステップを考えていくのです。
予想外のことは「深掘り質問」でチャンスに変える
予想外のことが起こることもあるでしょう。例えば、「役員が静観していると予想していたのに、意外にも積極的に発言された」というような場合です。その際は、今までお伝えしてきた内容と一見矛盾するかもしれませんが、自分が用意してきたプランに固執しすぎないことが重要です。準備が必要ないという訳ではありません。準備がしっかりとされているからこそ、いざというときには落ち着いて柔軟に対応できるのです。
事前に予想していなかった事態が起きた場合は、慌てるのではなく、新たな情報が得られるチャンスと捉え、しっかりと「深掘り質問」をしてください。
最近、オンラインでの商談も多くなっています。オンラインでは相手の反応が読みづらい場合もあるため、商談中に「ブレイクアウトルーム」を設けてお客様同士で議論できる時間を作ってみると良いでしょう。これにより、一旦社内で議論するという状況を避け、スムーズに商談を進行できるはずです。