二人三脚の商談で「共同作業」をする
今回は「お客様の意見がはっきりしない場面での進め方」についてお伝えします。
営業活動をしていると「意見がはっきりせず、なかなか決めてくれないお客様にどうアプローチしたらよいか?」という問題に突き当たることがあります。
それに対しては、「パワーポイントの画面を編集モードにしてお客様と議論をしながら加筆し、共に作成したファイルをすぐに送付する」のがお勧めです。
対面での営業ではプロジェクターを使用し、オンライン商談では画面共有機能を使用しましょう。
「お客様がご自分の意見を持っていない場合、なかなか商談が進まない。上司を紹介してもらおうとしても断られる」という営業の悩みをよく聞きます。そのような時、営業は「自分の意見を持っていない」と考えられるお客様に、オープンクエスチョン(「はい」「いいえ」などの選択肢がなく回答者が自由に考えて答える質問)をぶつけてしまっている場合が多いです。
例えば、以下のようなやりとりが発生することがあります。
営業パーソン
御社の課題は何ですか?
お客様
んー、こんなのもあって、こんな悩みもあって…そもそも、社風ですよ。根本的なところがダメですね
営業パーソン
(なんだか批評家のようで、課題解決の意思もなさそう…)
このようになると、「できない理由」ばかりを言われ、心が折れてしまう場合があります。
議論でお客様の熱量を上げ、共に課題を特定する
お客様との商談が停滞しがちな状況では、オープンクエスチョンでは話が先に進みません。そのような時は「選択肢付きのクローズドクエスチョン」を投げかけましょう。例えば「上司が頻繁に指摘する課題としてAとBがありますが、どちらがより多いですか?」と、AとBの選択を促します。
お客様の意見がはっきりしない場合は「お互いに同じ資料を見ながら、その場で意見を頂き、相手からのコメントをすぐ書き込む」のが効果的です。パワーポイントはプレゼンモードではなく編集モードにしましょう。プレゼンモードで説明するとお客様の意見をリアルタイムに反映できないためです。
編集モードのパワーポイントにお客様の意見や反応を書き込んでいくと、資料が混沌とします。この「混沌とした資料」こそがお客様と二人三脚で課題解決に向かっている証です。それが商談を前に進める鍵となります。 「あの議論を一緒にしたんだ」という熱量を作り、それをお客様が組織内に説明できるように資料を仕上げていくのです。
「パワーポイントを編集モードで画面共有し、AかBかを尋ねて資料に書き込みながら商談をする」ことが、優柔不断と考えられるお客様に効果的な理由は以下の通りです。
- ①「いま見てほしいポイント」が絞られる
- ②AかBかを選んで頂くことで相手の思考負荷を下げられる
- ③意見が即時反映されることで、お客様の温度感も上がる
「お客様がなかなか決めてくれないタイプ」に見えると、営業は頭の中で「この担当者は考えてない、ダメだ。キーパーソンに当たろう」となることが多いです。しかし、それはお客様にはっきり伝わっています。相手を軽んじては商談は前に進みません。目の前の人を大切にして、二人三脚で温度感を上げていきましょう。
議論を「見える化」する
パワーポイントの編集画面を共有しながらお客様と一緒に内容を作成する方法が、難易度が高いと感じる場合もあるでしょう。そのような時は、テキストのメモを画面共有して議論を進めることもおすすめです。何より大切なのは、議論を「見える化」することです。
弊社代表の高橋がこの「見える化」に重きを置くようになったきっかけは、新卒で入社したコンサルティング会社での経験からです。先輩たちは議論の流れをホワイトボードに書き出すことが当たり前でした。ホワイトボードを用いる文化は、議論に参加した全員にとって、議論のプロセスや要点を理解する助けになりました。
高橋は対面での打ち合わせでは、よくホワイトボードを用いてお客様と議論を深めます。オンラインの場合も、パワーポイントやテキストを用いて議論を可視化しています。
営業の根底にあるのは「リーダーシップ」
ただ、見える化はあくまでテクニックの一部です。営業の根底にあるのは「リーダーシップ」です。営業がお客様に対してリーダーシップを発揮することは、非常に重要です。営業活動はお客様が判断する部分も多いため、相手主体になりがちです。しかし、お客様が「何をすべきかわからない」と困っているときに、営業が明確な方向性を示すことが求められます。
リーダーシップとは「これが正解ですよ」と言うだけではありません。お客様の心に火をつけ、「一緒に考えましょう」と提案することもリーダーシップです。
リーダーシップを発揮しながらも、お客様の反応や疑問に柔軟に対応する姿勢を維持することが重要です。最初は何が正解かわからない状態でスタートします。お客様と一緒にその答えを見つけるプロセスこそが営業が提供できる価値です。
若手の営業はお客様との商談でリーダーシップを発揮することを躊躇してしまうことがあるかもしれません。その時に大切なのは、根底に「お客様をリードしてより良い未来を作りたい」という真摯な意志があるかどうかです。
営業としての使命は、単に「正解」を提供することではありません。お客様には多数の選択肢があり、どれを選ぶかは非常に難しい判断です。そのような状況で、お客様が一緒に前に進みたいと思える相手であることが最も重要です。