発注の可能性がないのは、たったの13.7%
今回はお客様から「検討します」と言われずに受注率を上げるために必要なことをお伝えしたいと思います。
お客様と商談を進めてクロージングの段階になった際、「あとは社内で検討しますので、お待ちください」とお客様から言われて悩む営業は多いのではないでしょうか。多くの営業はこの段階でほぼ受注の見込みはないと感じてしまうはずです。
実際に弊社のセミナーで100人以上の方々に聞いてみたところ、最も多い解答は「検討します、と言われた際の受注確率は、10%から20%ぐらいだと思う」というものでした。しかし、弊社の「お客様1万人調査」の結果、「どんなことがあっても発注の可能性がなく、検討しますのでおまちください、と解答した」というケースは 13.7%にすぎなかったのです。
まずは、大前提として営業活動ではお客様の状況や心境を理解することが大切です。営業は毎日のように受注を目指して活動している一方、お客様にとってどこに発注するかを決めることは非常に重い判断となります。特に法人営業の場合、意思決定はさらに難しくなるでしょう。
そのような状況の中で、営業とお客様のコミュニケーションの温度感が平坦なところからいきなり盛り上がって受注に至る、というのは現実的ではありません。
「予想通りに進まないこと」を楽しむコツ
クロージング力のある営業は、突然クロージングをするのではなく、クロージングに向けた段取りが優れています。感情を一気に盛り上げるのではなく、徐々に温度感を上げていくようにしています。
多くの人は自分の存在を必要とされたり、自分の意見を求められたりするのは嬉しいものです。営業はお客様に「相手は自分の存在を必要だと思ってくれている」「受け入れられている」と感じてもらえるように心掛けて、お客様と一緒に商談をつくっていきましょう。
お客様の理解を深めることが重要である一方で、商談が思い通りに進まなくなることを恐れて、お客様との対話を避けて説明重視になるケースもよく見受けられます。しかし、予想通りに進まないことは、学びと成長のチャンスでもあります。
対話の中でお客様から出た要求を100%満たせないと買ってもらえないのではないか、と思ってしまう営業も多くいますが、無理なことは素直にお伝えしてみたり、お客様のご要望の背景を深掘りしてみたり、商談一回一回を純粋にお客様との対話を楽しめる状態にできるようにしたりすることを心がけましょう。
「商談終盤の10か条」とは?
時間軸も大切な概念です。短期的な目標ばかりを見据えて活動すると、目の前の商談がうまくいかないことにストレスを感じ、不安や恐怖を抱きます。そのような状況ではお客様との温度感をうまく上げることができません。
短期的な成果に追い詰められず、長い視野で戦略を練り、お客様との関係を築いていくことを心がけましょう。
下記は、「商談終盤の10か条」です。
商談終盤の10か条
10個のルールをマスターすることが重要です。
- ①お客様が今ここに時間を使う理由
- ②提案への感触
- ③進め方の意向
- ④BANTCH情報
- ⑤お客様社内の今後の予定
- ⑥検討上のネックや判断基準
- ⑦ネクストステップ
- ⑧当社へのリクエスト
- ⑨こちらの熱意
- ⑩直後のコミュニケーション許可
これらのポイントを押さえながら商談の終盤を進めていけるように、マネジャーはメンバーに確認をすることも重要な鍵となります。
メンバーは、マネジャーからいつも確認されることで「これはお客様に聞いておかなければならない」と身体で覚えます。マネジャーがこの部分をおろそかにすると、詰めが甘い営業に育ってしまう恐れがあります。
重要なのはお客様から引き出す「質問力」
マネジャーが特に注意すべき「危ない商談」の4つのポイントも挙げておきます。
「危ない商談」の4つのポイント
こんな状況が見られたら注意が必要です。
- ①お客様の商談参加目的が不明確
- ②提案への感触を聞いても避けられる
- ③お客様が今後どう進めるのかが不明
- ④予算や意思決定ルートを教えていただけない
これらの場合、営業を知識不足のまま商談に行かせてはいけません。
「枕詞」「特定質問」「深掘り質問」を活用して、はぐらかしてくるお客様に対しても聞き出す力が求められます。ただし、これらは単にマニュアル的に聞いていくものではなく、自然な会話の流れでお客様から引き出すリズムで進める必要があります。また、関係が築かれていない場合、シャットアウトされない技術も重要となります。
対話を通してお客様と長い時間軸で信頼関係を築くこと、営業の思い通りにいかない場面への対応を強化することが営業のクロージング力向上に繋がります。
これらのポイントを意識しながら、お客様との対話を純粋に楽しめる状態を作り出すことが真に営業を楽しむ秘訣と言えるでしょう。「営業を楽しむ」と「営業で成果が出る」。この2つはどちらが先かわからない鶏と卵のような問題ですが、楽しむことが成果につながることは間違いありません。
商談自体を楽しみながら、お客様との関係を深める。そういったマネジャーのもとで育つ営業は、成果も上がることでしょう。