お客様は営業の想定とは異なる理由で購入している
お客様が購入する理由を広げることは、営業にとって重要なテーマです。多くの営業との会話を通じて、弊社はお客様が購入する理由を営業側で固定化しすぎているのではないかと感じています。
例えば、「この課題を解決できるから購入すべきです」「費用対効果が高いから購入すべきです」といった提案方法があります。しかし、弊社が感じるのは「最終的にお客様が購入する理由を決めるのはお客様自身」であり、「営業の想定とは異なる理由でお客様が購入していることが多い」ということです。
営業がどれだけ一生懸命に提案を考えたり、狙いを絞って「この理由で購入してください」と言っても、必ずしも思い通りに購入していただけるとは限りません。
よく営業が「響く」「刺さる」といった言葉を使いますが、これはお客様に対して訴求するポイントをあらかじめ定めて、お客様の反応を引き出そうとすることを意味しています。しかし、弊社はお客様を自分たちが思う通りにコントロールできるとは考えていません。お客様が購入する理由の半分くらいは後付けではないかとさえ思っています。
真のニーズを理解し、それに答えることが重要
最近の営業は提案資料を作成する際にはパンフレットだけではなく、パワーポイントなどを用いて美しい資料を作成しています。20年前と比べると、提案資料のレベルは格段に上がっています。しかし、重要なのは資料の見た目ではなく、お客様が本当に求めているものを理解し、それに応えることです。
購入する側の考え方は、20年前と比べてもそこまで変わっていないのではないかと思います。多くのお客様は、はっきりとした理由を持たずに購入したり、断ったりしていることが多いようです。
お客様が購入する理由は1つではない
「購入するか、断るか」の判断において、お客様がその理由を正確に言葉で表現できないことは多いです。何かを購入した理由を尋ねられた時に、それを言語化して説明するのが難しいことがあるのです。後になってからもっともらしい理由が出てくることもあります。
例えばリモートワークで仕事をしているとき、甘いものを食べたくなることがあります。その際にカロリーを気にして、最終的に和菓子を選ぶことがあります。しかし、そこには「カロリーが低いから」という理由だけでなく、「和菓子が好きだから」という理由もあります。このように、購入する際の真の理由は必ずしも1つではなく、後からさまざまな理由が挙げられることがあります。
会社のお金を使って商品やサービスを購入する場合、会社に対して説明の義務が発生しますが、言葉で説明される理由は必ずしも信頼できるものではありません。そのため、営業としては自分が思い描く理由に固執するのではなく、お客様が購入する理由の引き出しを広く持っておくことが重要です。お客様の好みや傾向は人それぞれ異なるため、営業としてはお客様に合わせて様々な購入理由を提供できるようにすることが大切です。
お客様が購入する理由は人それぞれ異なる
例えば、DX(デジタルトランスフォーメーション)に関連する商材を提案する場合、営業は「このツールを使うことで、従来の作業時間が3分の1に短縮されます」といった訴求をすることが多いです。
確かに作業時間が短縮されるという点に魅力を感じて購入するお客様もいるでしょう。しかし、お客様が購入する理由は人それぞれ異なるため、営業が時間短縮の利点だけを強調するのは不十分かもしれません。重要なのは、お客様のニーズや関心に合わせて、さまざまな購入理由を提供できるようにすることです。
経験を積むことで、特定のタイプのお客様にはどのような提案が響くのかがわかってきます。しかし、その経験を確かなものにするためには、お客様がなぜその商品やサービスを選んだのか、または選ばなかったのか、さらにはどのタイミングで心が動いたのかをしっかりと確認することが重要です。
弊社の「お客様1万人調査」の結果によると、お客様の多くは見積もりを見る前に購入を決めていることがわかります。そのため、営業としては一定の道筋で購入を促すのではなく、お客様一人ひとりの感じ方や考え方に合わせて購入理由を幅広く提供することが大切です。