「時期」への感度が鋭くなると受注率が上がる
今回は「お客様の時間軸を捉えると提案活動が変わる」についてお伝えします。
営業活動においては「BANT情報」を意識することが大切と言われます。BANT情報とはBudget(予算)、Authority(権限)、Need(ニーズ)、Timeframe(時期)の頭文字をとった言葉です。
BANT情報を意識はしていても「時期(Timeframe)」をざっくりとしか考えていない営業は多いです。時期への感度が鋭くなると受注率は上がります。その際に考慮すべきは以下の4つの項目です
時期への感度を鋭くするために考慮すべき項目
「時期(Timeframe)」を意識して、受注率を高めよう!
- ①お客様(企業)の導入・検討時期
- ②選択肢が出揃うまでの流れ
- ③判断軸がFIXされる時点
- ④購買担当者が判断に入るとき
営業活動をうまくいかせる4つのポイント
営業活動をうまくいかせるためには、①〜④を総合的に押さえる必要があります。
①お客様の導入・検討時期
営業が一般的にイメージしやすいのは「そろそろ検討に入る」「次年度の計画を立てる」という時間軸です。これはお客様に対して通常のヒアリングをしていれば手に入る情報です。しかし、これだけ聞いていても「時期外れの提案」がなくなるだけで、受注率は上がりません。鍵となるのは②~④になります。
②選択肢が出揃うまでの流れ
購買活動を行う際、お客様はまず情報収集をします。そして次に、見積をもらってそれぞれの提案を比較します。その際、競合情報をきっちりと押さえておきましょう。これは「躊躇なく聞くかどうか」で差がつくところです。
③判断軸がFIXされる時点
ここでいきなり難易度が上がります。要件整理をもとに「網羅感」「具体化」「優先順位」を尋ねる営業は、この時間軸をコントロールできます。要件整理をしないと、お客様が解像度の低い判断軸で検討に入ってしまいます。そうすると、価格競争に陥りやすいです。その際、提案ロジック構築力が肝となります。
④購買担当者が判断に入るとき
これは「決定場面を問う質問」を繰り返すことでつかめるようになります。自社が明らかに優位だと確信できていないときは、やすやすと「判断モード」にさせてはいけません。「決裁者以外への提案資料に表紙を付けない」のは、それが目的です。
時期は「受動的」に捉えてはいけない
多くの営業は「お客様の導入・検討時期に提案しよう」といったように、時間を「受動的」に捉えています。
- ①お客様の導入・検討時期
- ②選択肢が出揃うまでの流れ
- ③判断軸がFIXされる時点
- ④購買担当者が判断に入るとき
上記のうち、②〜④は力をつけることで時間に対して主導権を取ることができます。はじめは上記の情報を把握するのは難しいかもしれません。難しいということは、営業によって実力の差、成果の差が出やすいということでもあります。
購買活動における意思決定はそもそもスムーズにいかないものだということを営業は認識しておく必要があります。
「社内で検討します」で待ってはいけない
当社も会社の予算に対して様々な会社さんから日々ご提案をいただいておりますが、購買活動における検討というのはやはりなかなか落ち着いてすることができません。常に他の仕事やタスクが入ってくるため、購買の判断をする際に「あれ、これってどうなっていたんだっけ?」と思い出すのに時間がかかることもあります。
そのような状況になると、大抵の場合購買側であるお客様は「社内で検討しますのでお待ちください」とおっしゃいますよね。言ってみればこれは「先延ばし」なのです。先延ばしをしているので、待ったからといってどこかのタイミングで検討がスムーズに始まるわけではありません。
そのため、お客様の購買活動がなかなかスムーズに進まないという問題に対して営業の側が待つということはやめましょう。そうではなく、いかにお客様の負担を下げ、かつ検討が前に進むような支援ができるかを考えるようにしましょう。
お客様にとって一番いいのは「必要なものが差し出されてくる」ということです。
例えば「判断軸ってどうやって考えたらいいのでしょうか?」という疑問をお客様が持っているとします。それに対して、営業が「はい、ここに判断軸の候補はあります」と言えることが重要です。
お客様のお役にたつ2つの支援
それにはお客様の意思決定における実務的なプロセスに関する支援と、検討する際の頭の中を整理する支援の2つがあります。
前者については、例えば社内用のメールやメッセージの文章の素材というのがあればお客様にとってはありがたいです。「それをコピーして貼り付ければ、社内にすぐ送れる」という状態になっているとお客様は社内の手続きを進めやすいです。
後者については拙著『無敗営業 「3つの質問」と「4つの力」』(日経BP)でもお伝えしている「要件整理」というのが重要になります。
購買活動をする際、本当に理想通りのものがとても安く買えるのであればそれ以上のことはありません。しかし、現実には理想のものを買おうとしたら高くなります。あるいは予算に収めようとすると何かを妥協しなくてはならなくなることが多いです。そうすると、優先順位をつけて判断をするということになります。
その際には、「網羅感」「具体化」「優先順位」を検討するようにしましょう。
具体的には、考えるべきポイントは以下の2つに集約されます。
- 何かを諦める時、諦めることによる影響はどのようなものか
- 「妥協しない」場合、上がった分のコストを社内にどう説明するか
「何かを妥協したときの影響範囲」を数字で伝えよう
例えば、「このサービスのオプションを削れば、予算に収まります」という状況があったとします。ただ、そのオプションが魅力的で、やめるとなると人力の作業が発生するとします。
そうなった時、実際それを時間に換算すると何時間何分ぐらいのことなのかを整理します。それが例えばせいぜい月に1時間ぐらいなのであれば、「確かに月に1時間の手間はかかるけれども、それで予算に間に合うのであればそれでいこうか」という判断になるかもしれません。あるいは逆に、「それで月に1時間分も時間とられるのであれば、むしろお金を払ってしまった得だ」という判断になるかもしれません。
このように考えると、「何かを妥協したときの影響範囲」がわかります。それはお客様にとって非常に重要な情報です。ここを語れる営業は、お客様の判断に関して非常に有用な情報を提供することができます。
「『妥協しない』場合、上がった分のコストを社内にどう説明するか」についても重要です。
「金額が上がる理由」を説明できるか
昨今、世の中全体的に値上げというものが始まっています。買い手側からすれば、「金額が上がるのは到底受け入れられない」という方もいらっしゃるでしょう。そうなった時、金額が上がる理由を説明できる必要があります。
一番良くないのは「何月から料金を改定させていただくことになりましたのでよろしくお願いします」と言って終わり、というものです。
これだと、購買担当の方が挟まれてしまいます。お客様の会社からすると「そんなの、安くしてもらってよ」となります。それに対して営業の側が「すみません、もう会社の決まりなので」と言ってしまうと、購買担当としては仕事がしづらくなってしまいます。
そうなると購買担当としては社内を説得するか、営業に価格を下げてもらうかのどちらかを選択する必要がでてきます。その際、営業からするとちゃんと社内にご納得いただけるような説明のロジックということをお伝えできるかどうかが重要です。
具体的には、「方針として高くなってしまうのですが、社内説明用にこういうふうな言い方で説明していただけますか」という伝え方ができれば、お客様も社内を説得しやすくなるでしょう。