「5つの思い込み」を知って業務を効率化しよう
「忙しくて時間がないけれど、この案件は逃したくない」
このような時、多くの営業が段取り力やタイムマネジメント、さらには気合いや残業で乗り越えようとしますが、それには物理的な限界があります。そこで、「5つの思い込み」に気づき、時間をうまく活用する方法を知っておくことが重要です。
営業の多くは以下の「5つの思い込み」に囚われてしまい、時間の効率的な使い方を見失いがちです。
- ①「きちんとした議事録を送らないといけない」
- ②「お客様に送る資料の体裁は整っていないといけない」
- ③「提案書は完成してから送らないといけない」
- ④「電話で込み入ったことを話してはいけない」
- ⑤「宿題への回答はきちんとしていないといけない」
これらの思い込みを解消することで、営業の仕事は大幅に効率化されます。
以下、①〜⑤の説明です。
①「きちんとした議事録を送らないといけない」
商談終了と同時に「ラフなメモですが」と断って簡単なメモを送るだけで喜ぶお客様は実はかなり多いです。「決定事項」「双方のタスク」があるだけで価値があります。ここで重要なのはスピードです。もちろん、間違いがないようチェックしたものを送ることが求められる業界もありますが、そのような場合はメモを2段階に分けて送るようにしましょう。
②「お客様に送る資料の体裁は整っていないといけない」
お客様へ「表紙無しの資料」を送ることに抵抗がなくなれば、提案活動はいっきに効率化します。お勧めは「要件整理の1枚はすぐに送る」ことです。できればヒアリングから2営業日以内に送るようにしましょう。それだけで大きなアドバンテージになります。
③「提案書は完成してから送らないといけない」
提案書を完成させるには時間がかかります。提案書は「一気に完成させる」というやり方だけではなく、数枚ごとにお客様の合意を取っていき、最後に統合するというやり方もあります。例えば、ビジネス書は最初から最後まで順番に書く著者はほとんどいません。数千字のパーツを集めて、最後に統合して整えています。
④「電話で込み入ったことを話してはいけない」
「発注を検討する可能性が(多少なりとも)ある」営業に対しては、電話でのディスカッションをいとわないお客様は実は多いです。アポイントを設定して商談の場で話すだけだと、どうしてもアポイントの間の時間が空いてしまいがちです。「10分電話商談」が使えると、お客様との接点が増えます。
⑤「宿題への回答はきちんとしていないといけない」
例えば宿題が3つ生まれたとします。それを3つキレイにまとめて回答しようとすると、そのうちの1つが重たかったりするだけで回答に時間がかかります。その間、お客様をお待たせしてしまい、こちらも気が重たくなります。そうであれば1つずつ、できることから応えていくというやり方がおすすめです。
重要なのは「他の可能性に気づくこと」
弊社代表の高橋はリベラルアーツ教育に関わる仕事もしています。普段は主に営業の方々を支援する仕事をしていますが、一部の時間を割いて大企業の社長や取締役を対象としたリベラルアーツに関する研修やセミナーの運営をサポートしています。
「リベラルアーツなんて何の役に立つの?」という疑問をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。もちろん、人間としての器を広げたり、豊かな人生を送るために役立つ側面もあります。それに加え、高橋はリベラルアーツのメリットは「他の可能性に気づくこと」だと言います。
高橋は以前、大企業の経営者に混じって1週間のセミナーに参加したことがあります。その参加者の多くは数千人、数万人規模の部下を抱え、日々多忙なスケジュールの中で迅速に意思決定をしなければならない立場にいます。そんな方々に対して、アカデミアの世界で非常に高名な先生がセミナーの締めくくりでおっしゃった言葉が、今でも強く印象に残っていると言います。
その先生はセミナーの最後に「皆さん、このセミナーで結局何を学んだかが気になると思いますが、それは『オルタナティブ』です」とおっしゃったのです。オルタナティブ、つまり「別の可能性」について学んだのだ、というのです。
組織のトップに上り詰めた方は非常に優れた能力を持ち、リーダーシップにも長けていることが多いですが、それでも意思決定に際して「本当にこれが正しいのか?」「他に別の可能性はないのか?」と考えることは非常に重要です。この問いかけに気づかないまま物事を進めることは、大変危険であるということです。
そのセミナーは日々多忙な経営者たちが1週間にわたり古典にどっぷり浸かり、じっくりと対話を重ねるというものでした。そして最後にこの言葉が投げかけられたとき、その言葉の重みが一気に押し寄せてきたと高橋は言います。このセリフを聞き、衝撃を受け、「自分が日々考えていることが本当に正しいのか」「他の可能性を見落としていないか」という問いに深く向き合わされたと言うのです。
日々の忙しさに流されると、どうしても思考が停止しがちです。しかし、「ちょっと待てよ」と立ち止まって考えることができるかどうかが、実は非常に重要です。
「本当にやるべきこと」を見極めよう
忙しさに追われ思考が停止してしまい、他の可能性に気づかなくなることは非常に危険です。特に役職が上がるほど、その影響は大きくなるでしょう。忙しいと、どうしても「仕事をしている」という実感が湧いてしまいます。充実しているように錯覚することさえあります。
高橋は経営者の勉強会にいくつか参加していますが、中でも中小企業の経営者は成功している方ほど「暇」なのだと言います。もちろん、これは良い意味での「暇」です。
そのような経営者はあくせくせず、時間にゆとりがあり、その時間を将来のビジョンや新しい領域の開拓に使っているのです。そして、現場の仕事に関しては、すでに自分が直接関与しなくても回る仕組みができています。
忙しすぎると、これとは逆の状態に陥ってしまいます。何をしているのかよくわからないまま、ただ次々とタスクをこなしているだけになってしまうのです。そして最も危険なのは、それで「仕事をしている」という錯覚に陥ることです。
忙しくてクタクタになっているのに妙な充実感があったり、ハイな気分になってしまうのはよくあることです。忙しいと感じるときこそ、「本当にこれをやらなければならないのか?」「このやり方で本当に正しいのか?」と徹底的に疑うことが大切です。
いろいろなライフハックや仕事のテクニックがありますが、「それで本当に良いのか?」という問いを忘れてはいけません。そもそも、「自分が本当にやるべきことは何なのか?」という本質を見極めながら、毎日を過ごすことが重要です。