「コミュニケーションセンス」と「数字のセンス」
今回は「営業センスを磨くための具体的なアクション」についてお伝えします。
営業支援の現場に行くと、多くのマネジャーの方が「チームメンバーに営業センスを身に付けてもらいたいがなかなか上手くいかない」と歯がゆい思いをされています。
まずは、営業センスを磨くために重要なキーワードとなる「コミュニケーションセンス」と「数字のセンス」を磨くことの重要性についてご説明します。
商談中に予想外のことがおきたら、柔軟に対応し、軌道修正する必要があります。例えば、一方的に説明をしてもお客様の反応がよくない場合は、流れを変えてお客様と会話をしたり、事例を提示してご説明しても効果がないと感じた場合は別の事例をお示ししたりする必要があります。
こういった軌道修正が出来ないと、お客様との意思疎通がうまくいかず、重要な商談が消失してしまうリスクが高くなります。コミュニケーションセンスの有無が、商談の成否を分けるのです。
最も危険なのは「過信」と「決めつけ」
お客様の反応に気付けるようになるための「コミュニケーションセンス」を磨くために一番危険なことは、自分が「センスがある」と過信することと、逆に「センスがない」と決めつけてしまうことです。
古代ギリシャの哲学者ソクラテスが「無知の知」を唱えましたが、これは「自分は無知であることを知っている」状態を指します。コミュニケーションセンスがあるという過度な自信はお客様のニーズや反応に気づきにくくなってしまいます。
一方自信を無くしすぎるのも良くありません。感覚として、8割の自信を持ち2割を疑うといった「良い塩梅の臆病さ」を持ち、自分が何を知らないかを常に意識し、その確認を怠らない心構えを持ってください。自信が過信に変わらないように常に注意を払いましょう。
目標売上達成に必要な「数」をさっと計算できるか
続いて、「数字のセンス」についてご説明します。ハイパフォーマー営業は、目標売上に対してしっかりと逆算できる人が多いです。具体的には、目標売上達成に必要なお客様へのアプローチ数や見積もり数をさっと計算できます。そして、今どのお客様にどんなアプローチしたらよいのかを判断できるセンスも持っています。
お客様には「緊急度が高いお客様」と「あまり緊急度は高くないお客様」がいらっしゃいますが、ほとんどの営業は緊急度の高いお客様への対応ばかりしてしまいがちです。
しかし、緊急度が高くないお客様に対しても、普段からお役立ち情報をお送りするなど継続的な対応を怠らないことで、将来アプローチできるお客様の厚みが増します。結果として、ビジネスチャンスを広げることができるのです。
「数字のセンス」は他人の目標達成を手助けする経験があるマネジャーは身につきやすいのですが、プレイヤーである営業でも自分自身を客観的に見ることで磨くことができます。例えば後輩への指導やチームでのケーススタディを行い、他人の商談を客観的にみる体験を増やしてバランスを身に付けるとよいでしょう。
「営業センス」を向上させる9つのアクション
「コミュニケーションセンス」と「数字のセンス」を活かして、「営業センス」を向上させることが可能です。
営業の現場では、特殊なコミュニケーションセンスが必要となることがあります。例えば、お客様と営業の双方が、表ではにこやかに会話をしながらも、心のなかでは「利害が一致しないこともあるかもしれない」と想定しながらコミュニケーションをしていることがあります。こうした状況も踏まえつつ、営業センスを磨くために必要な9つのアクションを紹介します。
営業センスを磨くために必要な9つのアクション
- ①自分の商談を振り返る
- ②他者の視点で自分の商談を評価する
- ③既存のお客様に意見を求める
- ④見込みのお客様の評価を聞く
- ⑤自ら購買者となる
- ⑥社内の購買担当者と対話する
- ⑦他者の商談に参加し、観察する
- ⑧他メンバーのお客様の声を聞く
- ⑨自分の商談手法を見直す
それぞれ解説していきますので、ぜひ実際の現場で実践してみてください。
9つのアクションを深堀りしてみよう
①自分の商談を振り返る
自分の商談を振り返る際、多くの方は「良かった点」「改善が必要な点」程度で考察が終わっています。「想定通りだったこと」「想定通りにいかなかったこと」もあわせて検証し、丁寧に振り返ることが大切です。この行動を繰り返すことにより、仮説の検証やシナリオの設計力が高まります。
②他者の視点で自分の商談を評価する
上司や先輩に助言を求めても、得られるアドバイスは一般的なものになってしまうことが多いのですが、「あの瞬間、私はこのように行動しましたが、もし●●さんが私だったらどう行動していたでしょうか?」と具体的に質問することで、より実践的で個別的な評価を得ることができます。
③既存のお客様に意見を求める
お客様は営業をよく観察されています。お付き合いいただいているお客様に「満足した点」「不満だった点」だけでなく、「過去に印象に残った営業はいましたか?」と聞いてみるのもよいでしょう。自分の名前が出れば良いですが、他社の名前が出たら、なぜそう感じたのか状況を詳しく聞くと多くの学びを得ることができます。
④見込みのお客様の評価を聞く
まだ取引がない段階でも、見込みのお客様からの意見も貴重です。「なぜ今その会社と取引しているのか」を詳しく聞き、100点満点で何点くらいの満足度なのか、その理由まで探ることで競合と差をつけることができます。
⑤自ら購買者となる
購買者としての経験もまた、気づきの宝庫です。高額な商品を購入する際には、多くの提案を受けて比較します。そこで得られた感情や印象をメモに残しておき、後で自分の営業活動に活かします。
⑥社内の購買担当者と対話する
人事部や総務部、マーケティング部など、自社にも多くの「購買担当者」がいます。購買担当者の立場として日頃営業から「どのような提案を受けているのか」「何を基準に選んでいるのか」などをしっかりとヒアリングします。
⑦他者の商談に参加し、観察する
他の営業メンバーの商談に参加して観察します。目立つほどメモを取るようなことは避ける必要がありますが、「脳内シミュレーションと簡潔なメモ」で観察結果を記録し、各自のアプローチや手法を比較しながら自分に足りない要素が何かを洗い出します。
⑧他メンバーのお客様の声を聞く
もし社内の他メンバーのお客様とご一緒し雑談できるタイミングがあれば、さりげなくその担当営業のどんなポイントが評価されているのかを確認してみてください。これは、その営業へのフィードバックができるだけでなく、自分自身の改善ポイントを見つけることにもつながります。
⑨自分の商談手法を見直す
自分の商談や営業活動をマンネリ化させないために、「新しく試すこと」「やり方を変えること」を毎回織り交ぜながら、常に進化することが重要です。気づいたことはすぐに実践し、他メンバーを見て「いいな」と思ったことは素直に真似てみるなど、日々の改善の積み重ねがセンスを錆びさせない最大のコツです。