「10分電話商談」で営業の生産性を上げよう
営業組織では「行動量を増やそう」という言葉が頻繁に使われます。従来、この「行動量」は「訪問数」や「コール数」で評価されることが多かったですが、新たな視点として「10分電話商談」を導入することで、お客様への提案活動の生産性を大幅に向上させることが可能です。では、「10分電話商談」をどのように効果的に活用すればよいのでしょうか。
「10分電話商談」とは、「商談やミーティングほどの時間ではないが、お客様に手元で何らかの情報を見てもらいながら、電話で意味のあるやり取りをする場を意図的に活用すること」を指します。「10分電話商談」を成功させるには以下の4つのポイントが重要です。
- ①時間の短さ
- ②お客様の手元での情報参照
- ③質問や議論、合意確認による商談の前進
- ④営業側のオプション
コロナ禍の影響により、「対面でなければ大事なことは話せない」というお客様は減少しました。一方、営業側が「大事なことは商談の場で話そう」という従来の意識を持ち続けると、商談の場に限られる時間や移動コストの制約で行動量を増やしきれない可能性があります。
このような状況下では「明日の13:00から10分ほどお電話でお話できますか?」といったカジュアルな「10分電話商談」が有効になります。特に、オンライン商談の30分でも長いと感じるお客様には「10分ならOK」というケースも多く、営業側としても活動の合間に組み込みやすいメリットがあります。
「10分電話商談」の効果を最大限に引き出すためには、「手元で何かしらの情報を参照していただきながら話をすること」が重要です。たとえば、事前に送った箇条書きの情報や添付ファイルを見ながら会話をすることで、一定の情報量を確保できます。日常的に送るメールもわかりやすく端的な箇条書きを心がけておくと良いでしょう。
さらに、メールの箇条書きは「・」よりも「1,2,3,…」といった番号付きで記載すると、電話での会話がスムーズになります。「1番について…」といった形で、顔が見えなくても誤解なく認識をすり合わせることが可能です。同様に、資料でも大事なスライドには番号やアルファベットを振っておくと良いでしょう。
適切な情報を相手に提供しておけば、10分という短時間の電話でも以下のようなやり取りが可能です。
- 課題やお悩み、やりたいことに関する質問
- 意見が分かれるポイントについての議論
- お客様の意思やちょっとした合意の確認
大事なニュアンスについては、対面商談やオンライン商談で改めて確認することで、確実に商談を進められます。
「10分電話商談」を活用することで、アポイントの時間やコミュニケーション手段(対面商談、オンライン商談、電話、メール)に関する選択肢が広がります。顔を合わせずに商談を進めるスキルが身につけば、短い時間しか確保できないお客様や、忙しい時期でも複数の商談を効率よく進めることが可能です。
取引の可能性が高まればお客様は電話をしてくれる
営業と一口に言っても新規のお客様に対するアプローチと既存のお客様に提案を行うのとではその業務内容が異なります。特に新規のテレアポなどの活動に従事している方々は近年電話が繋がりにくくなっていると感じているのではないでしょうか。実際、1年前や2年前と比較して、マーケティングやインサイドセールスの難易度が上がっているようです。
世の中である手法が広まると、市場のパイが限られているため競争が激化するのは避けられません。そんな中、営業生産性をどのように向上させればいいのでしょうか。
弊社の調査で、電話の活用についてお客様に直接伺ってみました。お客様に営業とのやり取りにおいて電話をどの程度活用したいかを尋ねたところ、興味深い結果が得られました。これについては弊社代表高橋の著書『無敗営業 チーム戦略 オンラインとリアル ハイブリッドで勝つ』(日経BP)にも書いております。
「発注を高い確率で検討している営業」と「発注をまだ検討していない営業」に分けて調査を行ったところ、「発注を高い確率で検討している営業」との電話を嫌がるお客様は全体の約5%に過ぎませんでした。一方で、「発注をまだ検討していない営業」に対しては約3割のお客様が電話を断る傾向にあるという結果が出ました。
これにより、まだ関係が構築されていない段階での電話は、約3割のお客様に拒否される可能性があることがわかります。
しかし、発注の可能性が高くなると電話NGの割合は約5%にまで減少します。この結果から、お客様の心理が見えてきます。取引の可能性が高まるにつれて、電話が非常に有効なコミュニケーションの手段となるのです。
このように考えると、インサイドセールスやフィールドセールスを問わず既に接点があるお客様とのコミュニケーションにおいては「10分電話商談」は非常に効果的で生産性を高める手段となり得ると考えられます。
「10分電話商談」の特徴は事前にお客様と電話のアポイントを取ることにあります。お客様にとってアポイントなしで突然電話がかかってくるのは仕事が中断されたりして好ましくない場合があります。しかし、あらかじめ時間を決めて電話で話すことで、30分や1時間のオンライン商談や通常の打ち合わせに比べて、短時間で効率的に済ませることができます。
例えば、弊社ではメンバーが「10分電話商談」を提案する際に特定の言い回しを共有しています。具体的には、「30分や1時間のお時間を取らせてしまうのは申し訳ないので、代わりに10分ほどお電話でいかがでしょうか」といった具合です。そして、念のために「10分というのは短いかもしれませんので、一応15分間のお時間を確保いただけませんか」と提案することで、お客様は1時間の商談に比べて短時間で済ませられると感じることができます。
連絡が途絶えてしまったらお役立ちメールを送ろう
最近では、多くの方がハンズフリーで電話をすることが増えており、Bluetoothイヤホンなどを利用してパソコンの画面を見ながら電話をすることも一般的です。このように、電話を活用することで営業の生産性が向上する可能性が高まります。
一方で連絡が途絶えてしまったお客様や、電話にも出ず、メールも返信が来ない場合もあります。特にメールに返信が来ないお客様に対しては、弊社では「ご検討状況はいかがでしょうか?」という表現を極力使わない方針を取っています。もちろん、全く使わないわけではありません。例えば、既にお客様と「この時期に確認しましょう」と合意している場合には、「いかがでしょうか?」と尋ねることもあります。
しかし、一度連絡が途絶えかけたお客様に対してリマインドをする際に、「ご検討状況はいかがでしょうか?」という言葉を使うと、お客様にプレッシャーを与える可能性があり、あまり良い印象を与えません。そのため、リマインドや連絡が取りにくくなったお客様に対しては、この表現を避けるようにしています。
そこでおすすめなのが、お役立ち情報をメールで送るということです。弊社では、何十通りものお役立ち情報のメールサンプルが用意されており、その中から選んでお客様に送付しています。このようにお役立ち情報を何回かお送りすると、お客様にとってプラスに感じてもらえるケースが増えてきます。重要なのは、形式的に情報を送るのではなく、本当に役に立つと思って作成したコンテンツを提供することです。こうして2回、3回とお役立ち情報を送った後に電話をすると、連絡がつながりやすくなる傾向があります。
レスポンスの速さでお客様に貢献しよう
以上のように、電話はうまく使うと営業の生産性に大きく影響を与えるツールです。昔からある手段ですが、意外とその活用方法を突き詰めて考えていないケースも多いのではないでしょうか。『無敗営業 「3つの質問」と「4つの力」』(日経BP)と『無敗営業 チーム戦略 オンラインとリアル ハイブリッドで勝つ』(日経BP)でも触れていますが、「10分電話商談」では電話の後にすぐにメールを送るようにしましょう。「10分電話商談」の後に内容をまとめたメールを迅速に送ることは非常に効果的です。お客様は時間に対する要望やレスポンスの速さに高い期待を持っているため、商談後すぐにメールを送ることで良い印象を与えることができるでしょう。
電話をかける際に、電話が可能な時間をやり取りするコミュニケーションも重要です。例えば、「折り返しの際にはこの時間にお願いします」といったように電話が通じやすい時間を具体的に伝える人は繋がりやすい傾向にあります。電話のコミュニケーションはメールと組み合わせることでより効果的なものとなるでしょう。