営業メンバーのスキルを上げたい

2024.11.20

「組織を動かす経験」が営業力の向上に繋がる

クロージングの「段取り力」を磨くことが受注率の向上に繋がる

クロージングで鍵となるのは「段取り力」

クロージングは「段取り」次第で受注になることもあれば、失注になることもあります。その「段取り力」は「組織を動かす経験」によって向上します。今回はクロージングにおける「段取りの仕方」と「段取り力の磨き方」についてお伝えします。

クロージングは「細かく、具体的に」

法人営業におけるクロージングの際、「決定予定日」だけを確認していると失注のリスクが高くなります。取りこぼしを防ぐためには、以下の要素を押さえる必要があります。

  • ①決定予定日(会議、もしくは個別の上申)
  • ②決定前に合意を取るべき人物と担当者がやり取りされる日
  • ③必要な資料が最終化される日
  • ④その資料について自社と相談する日

特に稟議系の案件で否決や保留されるケースの多くは、以下の2つの要因に帰着します。

  • スケジュールや段取りの確認不足
  • お客様との関係が十分に築けていない

そのため、マネジャーが「意思決定のスケジュールをお客様に確認して」と指示を出しても、「今月中に決まるそうです」「了解しました」といった表面的なやり取りで終わってしまうことが多いです。

重要なのは、「最終的に決定する予定の日付に向けて、どんなプロセスが必要か」を逆算し、自社とのミーティングを設定することです。その際に特に確認すべきなのが、先ほどの「②決定前に合意を取るべき人物と担当者がやり取りされる日」「③必要な資料が最終化される日」です。これらをお客様と確認できている場合、受注率が上がる傾向があります。

②と③を確認するためには、単なる「営業とお客様」の関係ではなく、「一緒に考える」という関係を築くことが重要です。お客様と共同で企画書を作るようなイメージです。弊社が正式な稟議に必要となる段階までは提案書に表紙をつけないことを勧めるのもこの理由からです。表紙を外すことで、受注率が上がることがあります。

もし、そこまでの関係を築く前に稟議の日程が迫っている場合は、質問力で勝負しましょう。例えば、「②決定前に合意を取るべき人物と担当者がやり取りされる日」を確認したい場合、「本件で取締役会の前に事業部長とお話されると思うのですが、それは来週のどこかですか?」といったように「限定質問」で聞くことが効果的です。

日程について「XXXされる日はいつですか?」とオープン・クエスチョンで尋ねると、はぐらかされてしまったり、曖昧な答えが返ってくることが多いです。そこで、一旦クローズド・クエスチョンで聞き、その答えに対してさらに具体的に質問することで、日付を特定しやすくなります。この手法は、予算や競合の提示価格を確認する際にも有効です。

「組織を動かす」という視点で営業をしよう

お客様が「どうやって組織を動かしていったらいいかわからない」というケースは非常に多いです。多くの営業は受注することに焦点を当てています。しかし、「受注すること」よりも「組織を動かすこと」の方がより大きな意味を持ちます。組織を動かせなければ、受注することも難しくなるでしょう。

外部の会社に発注するということは会社のお金を使うということであり、そのお金を使うことで何らかのリターンを目指します。この意思決定は必然的に組織になにかしらの変化をもたらすものです。例えば新たに何かを購入する場合、継続的な取引であれば「これまでのものを維持する」という選択かもしれませんが、いずれにせよお金を使うことで組織に変化が生じます。

この変化には様々な障害が伴うことがあります。経営者や決裁者が賛同しない場合や、現場の人がその変化を歓迎しない場合もあります。したがって、組織を動かす際には法人がどのように意思決定を行い、コミュニケーションを取って動いていくかという大きなメカニズムを理解することが求められます。

このメカニズムを理解していないとお客様も営業から提案を受けても「まずは上司の承認を得て…」といった表面的な考えにとどまり、結果的に行き詰まることになるでしょう。

商材の種類にもよりますが、多くの商品やサービスは購入した時点がゴールなわけではなく、そこがスタート地点になります。購入後、会社を変えていく必要があるわけです。「会社をどう変えるか」が重要なのです。

会社を変えるための明確なイメージやビジョンを持たない担当者がアクションを起こすと、途中で行き詰まる可能性が高いでしょう。多くの営業は「提案のプロセス」が止まることを問題視しますが、本質的には「会社を変えようとするプロセス」がどこかで停滞しているのです。

会社を変えるにはその会社特有のメカニズムや文化、つまり「お作法」に基づいて進める必要があります。例えばトップダウンで迅速に指示が降りてくる会社もあれば、合意形成を積み重ねながら進んでいく会社もあります。あるいは、議論が何度も繰り返され、ようやく少し動くような会社もあるかもしれません。これらはすべて会社ごとに異なります。

お客様は必ずしもこれらのプロセスについて十分なイメージやビジョン、スキルを持っているわけではありません。そのような場合、お客様は上司に相談しようとします。しかし、上司に相談するという行為は一歩目を踏み出したように感じるかもしれませんが、その時点で初手を誤っている可能性もあります。「こんな提案が来ましたが、どうしましょうか」と上司に相談することが「会社を変えるためのアクション」として正しいかどうかはわかりません。

「会社を変える」過程で困難が生じたとき、営業がいかに良い支援を提供できるかが鍵となります。ところが、営業が自分が働いているわけでもない別の会社を変えるというのは非常に難しいことです。営業にはただ商材を売るだけではなく、その組織に変化をもたらすためのリテラシーが求められます。

まずは「自分のいる組織を変える」ことから

営業の立場から会社を変えるための感度を高めるには、「自分が働いている会社を変えるためのアクションを起こす」ことが重要です。

例えば、営業であれば自社の業務を改善するために「こうした方が良いのではないか」と考えたことを実行に移すことは1つの方法でしょう。必ずしも大きなプロジェクトを立ち上げたり、リーダーになる必要はありません。会社を変えるために何らかの貢献をし、結果として3ヶ月、半年、1年後に「会社が良い方向に変わった」と実感できるようなことをするのです。

このような経験をすると組織がどのように動き、変わっていくのかを実感できます。そして、こうした体験を持つ営業はお客様に提案を行う際にただ商品を売るのではなく、相手の組織を良い方向に導くために何が必要かが見えてくるでしょう。

組織のダイナミズムやその動きをある程度理解して感度を持っていると、稟議や承認がどのように進み、最終的に決まっていくかについてより具体的なイメージを持って取り組むことができます。

「会社を変える」取り組みをする際、何かしらの時間やリソースを投資し、誰かに意思決定をしてもらう必要が出てきます。例えば、皆に1時間集まってもらうだけでも、時間を投資してもらうことになります。このような状況では「このメンバーに1時間集まってもらうことの必要性」を説明したり、関係者に必要な働きかけをしたりすることが不可欠です。これはまさに購買側のお客様が行うことと同じです。
自分が勤めている会社でこのような経験を積むことで、組織を動かすための「段取り力」が向上します。こうした視点で自分の仕事を見直してみると、それが会社に飛躍をもたらし、営業活動の成功率を高めることにも繋がるでしょう。

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