成果があがる営業組織を作りたい

2024.09.26

商談は営業の想像よりも前の段階で決まっている

営業チームの強化は「商談フェーズの定義」がカギを握る

なぜ「商談フェーズの定義」が重要なのか?

多くの商談は営業が想像しているよりも前の段階で決まっています。「実際に勝負が決まる場面」に力を注ぐことで、受注率が上がります。今回は「商談フェーズを定義することで営業チームを強くする方法」についてお伝えします。

「商談フェーズの定義」が営業チームを強くする

多くの商談は営業が想像しているよりも前の段階で決まっています。見積もりや提案の提出、決裁者とのアポイント設定にいくら力を入れても、実はすでに手遅れで、お客様の心は決まっていることがよくあります。手遅れを防ぐためには、商談の「フェーズ」を組織でどう運用するかがカギとなります。

「営業の見える化をしたい」というご相談をよく受けますが、成功のカギは「フェーズ」の概念が組織全体で理解されるかどうかにあります。多くの営業チームでは、見積もりの段階で上司に詳しく報告し、見積もりを提示する時に上司がサポートを始めますが、これを前倒しすることが重要です。

案件の発生段階からきちんとマネジメントすることを提案すると、多くのマネジャーは「メンバーに毎回の商談を日報で詳しく報告させている」と答えます。しかし、ここが落とし穴になりやすいのです。日報に頼ったマネジメントをすると、「報告だけは詳しく書く」メンバーが増え、大事な情報が埋もれてしまいます。

フェーズを定義し、「商談が前進しているかどうか」に焦点を合わせることで、次のようなメリットが生まれます。

フェーズを定義することによって生じるメリット

  • 報告のための報告が減り、実質的な営業活動に集中できる
  • 経験の浅いメンバーでも、やるべきことが明確になる
  • 営業活動の進捗が可視化される
  • 受注見込みの精度が上がる
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フェーズの運用には、「この段階に来たら、こういう情報がわかっているはず」という項目を定義し、「然るべきフェーズに来たときに、必要な情報が入力されているかどうか」を確認することが必要です。フェーズの定義がしっかりされていれば、SFA(Sales Force Automation)で効率的に運用できます。

接戦の決定場面をヒアリングすると、「どの瞬間にお客様の心が動いたか」がわかります。多くの場合、その瞬間は意外に早い段階にあります。それがフェーズのどこに当たるのか、その「フェーズの番号」を組織全体で認識できるかどうかが、勝ちパターンにつながります。

例えば、当社では過去に接戦の決定場面をヒアリングした結果、初回訪問から数日間の要件整理の段階でお客様の心が大きく動くことがわかりました。そのため、この「勝負フェーズ」は特に詳細に定義しています。この場面でのアクション精度が勝率に反映されるからです。

当社ではフェーズ4が勝負所なので、以下の点をアラートのダッシュボードで確認するようにしてます。

  • (A)フェーズ3から4に進めず停滞している商談がないか
  • (B)フェーズ4から5に進めず停滞している商談がないか

(A)は「勝ちパターンが実行できていない商談」、(B)は「勝ちパターンのやり方を間違えている商談」です。これがなければ順調に商談を進めることができています。

当社の定義では、見積もりや提案を出すのはもう少し後のフェーズです。見積もりや提案の段階から頑張り始めるのでは遅すぎます。「実際に勝負が決まる場面」に力を注ぐことで、提案内容の微調整や値引きをしなくても、受注率が上がります。実際に勝負が決まる場面は、多くの営業が想像するよりも前の段階にあります。

商談は営業の想像よりも前に決まっている

「接戦の決定場面を問う質問」をすることでお客様の心がどのタイミングで動いたのかを知りましょう。この内容は、弊社代表の高橋が著書や講演で一番強調している点でもあります。「接戦の決定場面を問う質問」は、営業活動の中で非常に重要です。

多くの営業はお客様の心の中でどのタイミングで決定が下されているかを把握せずに活動しています。そのため、実際に決まっているポイントを過ぎてから頑張ろうとする方が非常に多いのです。具体的に言うと「見積もりを作成する」「提案書を作る」「決裁者に会う」といったポイントで頑張ろうとすることが多いです。これらのポイントが営業の勝負どころだと考えがちですが、実際にお客様に「どの瞬間に心が動いたのか」を聞いてみると、多くの場合、それよりも前の段階で決まっていることがわかります。

多くの企業でこの質問を活用してもらっていますが、ほとんどの場合、「営業が想像していたポイントとは違うところで決まっていた」と驚かれることが多いです。もちろん、全てのケースで前の段階で決まっているとは限りませんが、営業が重要なポイントとして認識すべきことは、自分が考えている決定の場面とお客様の心が実際に動いた場面が食い違っていることが多いという点です。

高橋はいろいろな場で「営業側の思い込みに注意しましょう」と話していますが、自分が思うようにお客様をコントロールできるわけではないという前提に立ち、提案活動を進めることが非常に重要です。

多くの営業は頑張ろうとするポイントが遅すぎて結果として時間が足りなくなり、他の案件のクオリティも落ちてしまいます。先手必勝という言葉がありますが、上流段階で決めに行くことに集中すれば営業活動の時間の使い方も大きく変わるでしょう。

「勝負フェーズ」の認識を合わせる

商談フェーズは本来目に見えない商談の進捗段階を言葉で区切り、明確に区別するものです。例えば、「この商談はフェーズ1です」とか「この商談はフェーズ2です」というように、それぞれのフェーズの定義に照らし合わせて、現在の商談の状態を判断します。多くの企業がフェーズを運用していると思いますが、「御社の勝負フェーズは何番ですか?」と問われたときに、「うちの勝負フェーズは〇〇番です」と答えられる方は少ないのではないでしょうか。

高橋はよく研修で、SFAを使ってプロセスマネジメントで商談を管理しているお客様の場合、「御社の商談には6つのフェーズがありますが、その中で最も重要な勝負フェーズは何番ですか?」と尋ねます。オンライン研修でZoomのチャット機能を使って一斉に回答してもらうこともありますが、これが見事にばらつくことが多いです。

当然ながら、この勝負フェーズが何番目かということについて認識がばらついていると、力のかけどころが分散しますし、マネジメントの焦点が絞りにくくなります。もちろん、商談の一件一件を詳しく見ていけば、勝負フェーズには多少のばらつきがあるかもしれません。しかし、デフォルトで「うちの商談フェーズの中での勝負どころはここだ」というコンセンサスがなければ、特にメンバーの戦力化に時間がかかってしまいます。

なぜなら、営業活動で何でもかんでもできるようになるのは難しいことだからです。一番重要なところをしっかり覚えてもらい、そこからコアとなる部分にどんどん肉付けして上達していくことで、営業スキルが向上していきます。営業ができ上がっていく際には、どの部分を強化するのかが重要です。

例えば、最低限の商品説明ができないと商談にはなりませんが、商品説明やサービス紹介は何回かやればすぐに慣れるものです。しかし、質的に向上させるべき勝負の部分はそこではありません。どんなに巧みにサービス紹介をしても、プレゼンが神懸かり的に上手い人でもない限り、そこで差をつけるのは難しいです。
ある程度お客様と双方向でやり取りが発生し、お客様との合意や納得を作れるかどうかが営業の腕が問われるところです。それが商談のフェーズで言うと何番目なのかを会社の中でコンセンサスを取れていると、非常に強い営業チームになります。

「勝負フェーズ」を前にずらすことが重要

その商談フェーズを活用して勝ちパターンを作るということですが、経営者やマネジャー、リーダーの方々には、時間が経つごとにその力点が手前に移動しているかどうかをチェックしていただきたいと思います。

勝負フェーズを認識しないままに皆が営業活動を行うと、どうしても瀬戸際で頑張るという状況になりがちです。瀬戸際で頑張ると、当然ながら苦しい方向に向かいます。

商談のフェーズ管理やプロセスマネジメントを行っている会社は多いと思いますが、「勝負フェーズは何番か?」 を試しに社内で確認してみてください。もし返ってくる答えがバラバラだったら、それは危険信号です。

勝負フェーズの認識を揃え、なぜそのフェーズが勝負どころなのかを理解することが重要です。そのためには、お客様の生の声を集めることが必要です。「接戦の決定場面を問う質問」によって、お客様が実際に心が動いた瞬間を知り、その事実を情報として蓄積していきましょう。

この商談フェーズを活用して勝ちパターンを作ることについてですが、もう一つ効果があります。それは単価と粗利率が上がるということです。なぜ上がるのかというと、営業の何割かは、高い提案を出すことに躊躇してしまいます。例えば、高すぎる提案を出せなかったり、高い提案を遠慮してしまったり、あるいはお客様から言われてもいないのに勝手に値引きしてしまうことが多いです。高いと売れないんじゃないか、安くしないと売れないんじゃないかと考えてしまうのです。

ただ、商談フェーズを活用して勝ちパターンを作ると、お金の話をする前にお客様の心が動いていることが分かります。そうすると、お客様が買いたいという意思表示を早めの段階で引き出すことができ、値引きをしたり、不十分なプランを提案することが減っていきます。さらに、お客様の方から「もっと良い提案をしてほしい」と言ってくださることもあります。

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