「考えてもらう5分間ロールプレイ」とは?
今回は「時間対効果の高い5分間ロールプレイ」についてお伝えします。
商談ロールプレイを社内で実施しているけれども効果が感じられない、練習をするべきだと思いつつも、忙しさから優先順位が下がってしまう……と悩む営業組織は多いです。単純な商品説明のロールプレイを続けても、レベルアップできるのはごく一部のケースのみです。
そこで、少し手間を加えて「考えてもらう5分間ロールプレイ」をすることをお勧めします。これを実践することで、マネジャーの時間をそれほど使わなくてもメンバーの考える力を向上させることができます。
「考えてもらう5分間ロールプレイ」とは、「もしもこの状況になったらどう対処する?」というように、「もしも」の状況を設定し、考え、実行に移すことです。この5分間ロールプレイは商談前に実施しても有効ですし、商談後の振り返りにおいても活用できます。
商談後には、例えば「想定通りに進まなかったポイントは何か?」とメンバーから聞き、そのシーンを5分間演じておさらいします。実施にその場面を想定して実演してもらうことで、単なるアドバイスよりも高い効果が得られるでしょう。
営業活動における次のステップを考えるときにも「5分間ロールプレイ」は有効です。
「次の商談に向けて必要な準備は?」という問いはマネジャーがメンバーに対して行う定番の質問ですが、メンバーの想像力だけではリスク要因を十分に洗い出すことが困難な場合があります。
そこで「次の商談に向けた5分間ロールプレイ」を行い、実際にメンバーにその場面を想定して考えてもらうことで「ああ、この準備も必要になるのだ」と実感してもらうことができるでしょう。
人が物事に熟達していくのには段階がある
忙しい営業マネジャーがメンバーを指導する時間を作るのは大変です。
しかし、「指導の時間が確保できないからといって、同行して何とか商談の質を保つ」という方針では、メンバーの能力が向上することを期待できず、マネジャーの負担も減らせません。
そんな状況の中で、「5分間ロールプレイ」は時間対効果の高い指導方法となるはずです。
「5分間ロールプレイ」では、1本のロールプレイを極めて短い時間で行います。その短い時間の中で、難しいお題を持ってくるのが特徴です。営業が即座に対応できないような問題を突きつけることによって「対処できるかどうか」を確認します。
この方法は商談前の準備や商談後の振り返り、次の商談に向けた事前準備としても使えます。
しかし、多くの営業組織で実際に行われているのは、上司からの確認やアドバイスが主流です。マネジャーから見れば、それできちんと指導しているつもりかもしれません。しかし、実際にはそれでは教育効果が得られず、お客様との商談がうまくいかないことや、成長を感じられないという問題が生じることが多いのです。
元陸上選手で有名な為末大氏が『熟達論―人はいつまでも学び、成長できる―』(新潮社)という本を出しました。当社代表の高橋は「子供に残すべき100冊の本リスト」を作っているのですが、この本は間違いなくそのリストに入る本です。本書には、人が物事に熟達していく段階についての興味深い説明があります。
ビジネスにおける「遊び」の重要性
一番最初の段階は「遊ぶ」ということです。多くのスポーツに共通する本書の内容は、楽しくて夢中になる「遊ぶ」ということから始まるのです。
ビジネスシーンにおいても、この「遊ぶ」というアプローチは非常に重要だと思います。なぜなら、「遊ぶ」ということの中には自発性、ランダム性、没頭する要素が含まれているからです。高橋が営業の世界に最初に入ったのも、この「遊ぶ」という段階からでした。
高橋は高校2年生の時、飛び込み営業のアルバイトを始めました。お客様に英会話学校のポスターを渡してお店に貼ってもらう仕事でした。当時は高校生でプレッシャーや責任感を強く感じることもなく、何が起こるかわからないランダムな世界で楽しくやっていました。この初めての営業の体験が、後に高橋が営業というものを奥深く探求する原動力となりました。
物事が上達するとき、この「遊ぶ」という段階がしっかりとした土台になっていると、大きな違いが生まれます。この段階では、楽しみながらも真剣に取り組んで、自分の成長を促すことができるのです。それが「遊ぶ」という言葉が持つ深い意味であり、私たちの仕事や成長において欠かせない要素なのです。
ランダム性が仕事を「遊び」に変える
創意工夫や努力を楽しいと感じることは、遊びととても密接な関係があると思います。それを仕事にどう応用するかを考えることは、営業の世界において特に重要なことだと感じます。
営業としての仕事には目標やノルマなど、業績達成のプレッシャーがついてきます。よほどの情熱がなければ、遊ぶような楽しいモードで仕事ができるわけではありません。
そこで重要になるのが「5分間ロールプレイ」です。「5分間ロールプレイ」は仕事の中に遊び的な要素を持たせることにもなります。「5分間ロールプレイ」を実施する際には上司から指示されるのが一般的ですが、チームメンバーから自発的に提案されたテーマで実施するとさらに効果的です。
この「5分間ロールプレイ」にはランダム性があります。「何が起こるかわからない」という要素は、通常のロールプレイには少ないものです。ここでのランダム性は、当社が長年に渡り営業コンサルティング会社として様々な企業様と関わってきた中で非常に重要だと感じていることです。ランダム性があるからこそ、やった後についついお互いに話したくなり、予期していなかった新しい発見について語り合うことが多くなります。
しかし、「5分間ロールプレイ」も仕事の時間に行うため、完全に「遊ぶ」という態度でやることは難しいです。それでも当社は「遊ぶ」中でのランダム性が大事だと感じています。上司がいつも同じように商談前のゴールや商談後の反省点について話をするのは、ワンパターンな指導になりがちだからです。
実際に商談が始まってみると展開が変わり、上司がフォローしてくれたり、帰り道で指導されたりすることもあります。この状況に対して、「5分間ロールプレイ」のランダム性と没頭する要素を持たせると、営業としての取り組みがもっと楽しく、成果を出す方向へと進んでいくと思います。
この「5分間ロールプレイ」の効果を実感することで、忙しい中でも継続して実践しようと思うようになります。個人的には、これが営業の世界で非常に大切なことだと感じています。お客様やチームメンバーとのコミュニケーションを深めるためにも、ぜひこの方法を試してみてください。