リーダーとマネジャーのバランス
マネジメント上手な人は「良い意味で」人に期待しません。 やるべきことをやらないメンバーには行動を促す「仕組み」を作っており、意欲や能力が高くなくても成果が上がるよう設計しています。 決して、憤怒と叱責の声を荒げることはありません。 外からは「淡々と」成果をあげているように見えます。
一方、優れたリーダーは、人の可能性に「期待」し、皆の心に火をつけます。チームの潜在能力を極限まで引き出し、信じられないような成果を叩き出します。 「これは無理だろう」と予想されていた下馬評をひっくり返し、奇跡を起こしてしまいます。 外から見ると、「お祭り騒ぎ」が起こっているように見えます。
「みんな、あの山に登ろうぜ!!絶対イケるよ!登ったら素晴らしい景色が見えるから!」と言うリーダー。 「みんな、あの山頂に明日の昼12時までに着きたい。プランを伝えるから聞いてくれ」と言うマネジャー。 両方いる組織は強いです。 しかし、一人の人物がリーダーとマネジャーを兼任すると、途端に難しくなります。
特にスタートアップで難しいのは、創業期は「不可能を可能にする」リーダーが不可欠なのですが、途中から「安定して目標達成する」マネジャーが必要になることです。 マネジャーが結果を出すためには一定のリソース(兵站)が必要です。ただ、創業者は「リソースが足りない!?何言っているのだお前」となりがちです。
組織拡大の壁を越えるスタートアップの3パターン
「頼れるNo.2がいない」と嘆く創業者は、マネジメントができるCOOを探すのですが、簡単には採用できません。そこでプロ人材にパートタイムで仕組み化を丸っと投げようとしても、創業者がマネジメントを理解していないとうまくいきません。苦手でも、マネジメントを「ちょっと学ぶ」ぐらいはやっておいた方がよいでしょう。
組織拡大の壁を越えるスタートアップは下記の3つのパターンが多いです。
①リーダーシップとマネジメント、それぞれ得意な人間が創業チームにいた
②リーダーシップに溢れた創業者が途中でマネジメントを学び、COOの採用に間に合った
③創業者がマネジメントが得意な気質で、初めから「仕組み化」を意識していた
そもそもこのテーマを考えようと思ったきっかけは、神戸大学大学院経営学研究科教授の金井壽宏さんと京都大学大学院教育学研究科教授の楠見孝さんが書かれた『実践知』(有斐閣)という本です。
本書では、人間がマネジメントとリーダーシップの両方を備えるのは難しいと記載されています。
当社はよく、マネジメントとリーダーシップを山に例えて説明します。マネジメントは、目的と制約条件を設定し、それを達成する方法を模索するものです。リーダーシップも目的を達成するために他人を動かす部分は共通していますが、人々を熱意に満ちた行動へ駆り立てる力が求められます。
両方を兼ね備えることが求められる現代において、そのバランスと効果を正しく理解し、適用することが重要であると言えるでしょう。
なぜ、両方を兼ねるのは難しいのか
コロナで集合型の研修がキャンセルされる中、当社の業績にも影響があったものの、最終的には逆に良い結果で終えることができました。しかし、いわゆるV字回復の時期には、毎日必死でみんなを鼓舞し続けなければなりませんでした。少しでも良いことがあれば、顔を合わせることができなくても、盛り上がる雰囲気やムードを大切にしていました。
当社代表の高橋は、マネジメントの要素はむいているものの、リーダーシップの要素は苦手な部分もあります。本当に必要な時にやるくらいが心地よいのです。ずっとリーダーシップを発揮していると、自分が自分でないような気がしてしまう時があるのです。
リーダーシップとマネジメント、両方を1人でやるのはなかなか難しいこともあるでしょう。その場合は、組織の中にリーダーシップ的な役割を担う人とマネジメント的な役割を担う人が両方いると安心です。
よく起こるのは、彼らの摩擦です。例えば、リーダーシップ側が感じる「みんながポテンシャルを発揮していない」感じと、マネジメント側が感じる「再現性がない、精神論に寄りすぎている」感じとで違いがあるからです。しかし、リーダーシップとマネジメントは裏表のようなもので、互いに必要な側面です。
1人でどちらもこなさなくてはならない場合、高橋が実践して向いていたのは、極端に片方に焦点を当てて行動し、次にもう片方にスイッチする方法でした。器用にバランスを取れる方はそうしてもいいと思いますが、やりづらい方は、期間限定で極端に片方を行い、その後でスイッチする方がいいかもしれません。