営業マネジャーのスキルを上げたい

2024.02.09

「安さ」だけで決定するお客様は、実は少数派だった?

「安さ」で勝負をするのはやめよう:高価格での提案が受け入れられる理由とは?

お客様が重視するのは費用対効果

営業の方々と話をする中でよく耳にするのが、「価格」や「値段」についての問題です。しかし、営業が想像するよりも価格重視のお客様は少なく、多くのお客様は「費用対効果」で選びます。今回は「高くても買ってもらえる『ディスカッション営業』」についてお伝えします。

なぜお客様は「価格だけ」で選ばないのか?

今回は「高くても買ってもらえる『ディスカッション営業』」についてお伝えします。

営業の方々と話をする中でよく耳にするのが、「価格」や「値段」についての問題です。当社代表の高橋の著書『無敗営業 「3つの質問」と「4つの力」』(日経BP)にも書いていますが、お客様は価格の絶対額で製品やサービスを選ぶわけではありません。確かに、一部のお客様は価格を重視することも事実です。しかし、本当に安いかどうかで決定するお客様は少数派です。

無敗営業 「3つの質問」と「4つの力」

高橋浩一

多くの営業が想像するよりも価格重視のお客様は少なく、多くのお客様は「費用対効果」で選びます。すなわち、何かと比較した感覚に基づいて商品やサービスを選ぶのです。

弊社の「お客様1万人調査」の中で、「予算を超えても購買した経験があるか」という質問に対して、なんと7965人、すなわち8割弱のお客様が想定よりも高い価格で購買した経験があると答えています。この事実はぜひ頭に入れておきたいところです。

では、そのお客様たちはなぜ高い価格で購買したのか。「予算を上回った提案と予算を下回った提案が両方あったが、提案の質や内容を重視した」という回答が28.1%となり、この回答が1位でした。

つまり、安い価格で購買する選択肢があったにも関わらず、お客様は高い方を選んでいるのです。この事実を営業として強く心に留めておくべきです。

お客様の考えに変化を起こす「ディスカッション営業」

1万人のお客様の中で8割弱の方が予算を超えて購買した経験があり、予算より安い方を選ぶことができたのにも関わらず、わざわざ高い方を選んだということです。

次いで第2位が「提案を受けて判断基準が変わり、予算以外に大切なものが明確になった」という回答で、25.3%でした。

第3位が「予算を上回っているが、価格交渉によって多少下がることで社内の了解を得られた」で22.1%、第4位が「全ての会社からの見積提示額が予算を上回っており、当初予算では現実的に無理だった」が19.5%という結果でした。これは、お客様が自社内で予算の交渉を行ったということを示しています。

この調査結果が非常に象徴的だと思うのは、営業に対する価格交渉や社内に対する交渉をしたというのが第3位と第4位であり、第1位と第2位はそうではない、ということです。第1位と第2位ではお客様の脳内に何かの働きかけがあり、それによってお客様の考えに変化が起こったということを示しています。そのためにどうしたらいいかが本日のテーマである「ディスカッション営業」ということになります。

「ディスカッション営業」というのは一般的なビジネス用語ではなく、当社の造語です。当社はこの言葉を「判断基準に変化を起こす議論ができる営業」という意味で使っています。

具体的な思考で、イメージを現実化する

ディスカッションをするということは、判断基準に変化を起こすということです。何かを買うときに、自分の判断基準に確信を持てている人というのはそれほど多くありません。

例えば高い買い物をする時、具体的な製品の実物やデモンストレーションを見せるというやり方が効果的だと考えられています。そのアプローチによって、お客様の考えや判断基準に変化を起こすことができるからです。「多くのお客様は、買う前に明確な判断軸を持っているわけではない」ということを抑えておきましょう。

人は何かを考えるとき、抽象的な思考モードと具体的な思考モードを行ったり来たりしています。営業が抽象的な思考モードのままで話を進めると、お客様は内容がよくわからなくて決めるのが怖く、リスクを取りたくないという気持ちが働いて買わないという選択をするようになる傾向があります。

ですが、具体的な思考モードになるとお客様はイメージをしやすくなります。お客様の目の前で何かしら具体的な実物に近いものを提示することによって、お客様の頭の中を具体的な方に寄せていきましょう。

脳には「相反する2つのものを同時に考えることはできない」という性質があります。具体的なことを考えてるときには抽象的なことは考えにくいですし、抽象的なことを考えているときは具体的なものは考えにくいです。

具体と抽象の行き来で、お客様の判断基準を固める

抽象的な思考モードと具体的な思考モードを急に切り替えることは難しいです。そのため、一旦具体的な方に話を寄せると、抽象的なイメージからは少し離れることになります。その具体的な実物を見せるとき、できたら1つの側面だけではなく、いろんな側面を見せると良いでしょう。いろんな側面を見せるということは、その分判断基準のバリエーションを作っていることになるわけです。

そして次に、その具体的なものに関するいくつかの側面を再び抽象的な言葉で落とし込んでいきます。説明を補足する、ということです。具体的な思考モードのままだと要点がわからないままになってしまうため、一旦また抽象的な思考モードに戻すのです。

つまり「ディスカッション営業」では、「抽象的な思考モードと具体的な思考モードを、お客様と一緒にスムーズに行き来する」ということがポイントになってきます。

そのため、先ほど申し上げたようにいくつかの側面をお見せする(すなわち、判断基準を増やす)とより効果的でしょう。そして最後にもう一度抽象的な言葉に戻して、お客様の判断基準を固めにいくのです。

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