営業の悩みの多くは「予算をうまく聞き出せない」こと
今日は「予算をはぐらかされずに聞く方法」についてお伝えします。
多くの方が予算の聞き出しを苦手と感じているようです。当社の「営業1万人調査」の結果、目標達成の障害となる1つの要素が「予算をうまく聞き出せないこと」であることが明らかになりました。これについて弊社代表の高橋が『質問しだいで仕事がうまくいくって本当ですか? 無敗営業マンの「瞬間」問題解決法』(KADOKAWA社)という書籍で、予算の聞き出し方について解説しています。
予算を聞く際には言い回しだけでなく、予算が作られるプロセスを理解することも重要です。特に若手営業は、企業の上層部でどのように計画が立てられているかを理解していないことが多く、ピンと来ないと感じることがあるでしょう。
では、どうやったらそのプロセスがわかるのでしょうか。一番効果的な方法は、お客様に直接見せていただくことです。当社の経験では、お客様に質問することで予算の具体的な構造が明らかになることが多いです。
まずは20%の「親切なお客様」にお聞きする
営業活動ではうまくいかないこともあります。当社も予算を聞き出すことに関しては以前から悩んでいました。予算がどれぐらいか聞くと、「まだ決まってない」などの返答が多かったのです。しかし、多くの方に聞いていくと10人に2人くらいの割合で親切に教えてくださる方がいました。親切なお客様が2割いるとするなら、その2割のお客様に具体的な質問を投げかけることが重要です。
その2割の親切なお客様に尋ねると、予算の具体的な情報が得られます。もちろんすべてのお客様が答えてくれるわけではありませんが、親切なお客様からは具体的な情報を得ることができるのです。
当社代表の高橋は、あるお客様から予算の組み立て方についてエクセルを印刷した紙で説明していただいた経験があります。当時、高橋は人事向けの研修商材の営業をしていたため、人事の方から研修計画表などをエクセルで作成していることを教えていただきました。
このような経験を通して、お客様とのコミュニケーションが予算を聞き出す上で極めて有効であることがわかりました。営業にとって、お客様との対話を深化することは効果的な営業を展開するためのカギとなるのです。
カギは諦めずに色々なお客様にヒアリングをすること
高橋が研修計画についての話し合いをしていた時のことです。まず、どの会でどの対象者に何の研修を行うのかという内容が一覧表に並んでいました。その表を直接見せていただいたのですが、具体的な金額が記載されていなかったので、各項目に決まった金額があるのかどうかを聞きました。
するとお客様は、次のように説明されました。
お客様
うん、それはあるんだけど、年度途中で新たに何かを始めたくなることもあるから、予算のバッファーが必要なんだよ
バッファーとは、途中で何かを始めたくなった際に対応できるように、予め予算を確保しておくことです。チームでどれくらいの金額を確保しているのかと聞きましたが、最初は教えてくれる人はいませんでした。
しかし、聞き続けると、時折おおらかな方がいて、具体的な金額を教えてくれました。高橋は「なるほど、これが現場の実態なのか」と感じたようです。そして、自社のサービスをどうやったら取り入れていただけるのかと尋ねました。
すると、「今年のはもう決まっているから無理だよ、来年も既に候補が決まっているから、再来年かな」という回答がありました。この時点で、高橋はタイミングの重要性を痛感したようです。
色々お伺いしていくと、実際の意思決定のプロセスがわかってきたのです。ただ話を聞くだけなのと、実際に何かを見せてもらうのとではインパクトが全く違います。この経験を通じて、高橋は営業としての役割やお客様とのコミュニケーションの重要性を再認識することができたと言います。
実際の表で初めて理解した「お客様の計画」
以前、高橋の元に25人ほどの営業がいたことがあります。その時、高橋はメンバーに言いました。
高橋
みんな、ちょっと聞いてくれ。一定規模以上の企業だと、絶対に研修の計画表があるはずだ。5年間の計画は必ず各個人の手元にあるはずだから、それをもらってきてほしい
その結果、ある営業がアプローチ先の企業から研修の計画表をもらってきました。主に20代の新卒が中心のメンバーでしたが、企業から計画表をいただけるケースが20%以上もあったのです。
5社に1社もらえるのは、結構すごいことだと思います。それで、みんなで計画表を眺めました。そこから、お客様がどうやって計画を立てるのかが見えてきたのです。お客様からの口頭での説明だけではなかなか理解できない部分があります。実際の計画表を見ないと分からないことも多いのです。
まずは「駄目もとで聞いてみる」が突破のカギ
現在は、オンラインの商談が主流です。お客様の資料やファイルを見ることは、内部情報としてなかなか難しい場合もあります。しかし、お客様に予算などの情報を見せていただく方法はあります。
まずはお客様に自社の商品やサービスをほしいと思っていただくことです。そして、私たちの力で支援させていただきたいと伝え、お客様の計画の中にどう入れていただけるのかを聞くことです。
その際に社内の計画や方針をまとめた資料があるかを聞くと、お客様が計画表を見せてくれることがあります。現物を見ると、「ああ、こんな感じなんだ!」と理解が深まります。その後のアクションが見えてくるのです。
多くの営業がお客様に聞く前から「予算に関する情報や計画表などは見せてもらえないだろう」と思い込んでいるようです。
しかし、当社の経験から言うと、お願いすることのコストは、その場で少し恥ずかしい思いをするとか、ちょっと決まりの悪い思いをする程度のものです。礼儀を尽くして、駄目もとで聞いてみることが重要です。拒否されたとしても、それだけのことです。だからこそ、積極的にお願いしてみる価値があるでしょう。