「営業の本質」を見失わないために
今回は「営業マネジメントの3つの落とし穴の乗り越え方」についてお伝えします。
多くの営業組織で採用されているマネジメント手法は、主に3つの観点からなります。1つ目は受注売上目標、2つ目は行動目標、3つ目は日報です。これら3つが、3種の神器のように様々な営業組織で用いられています。しかし、この3つだけでは陥りやすい落とし穴が存在するのです。
1
指示のやりづらさ
一部の営業マネジャーは、メンバーに細かい指示を出すのはやりづらいと感じることがあります。彼らは「目標さえ達成できれば、自分のやり方に任せる」という考えがあります。
この姿勢は良いものだと思いますが、結果以外は見ないという問題があります。メンバーが結果さえ出せば何も言われないと感じると、営業活動のプロセスについてはおろそかになりがちです。
2
目標の未達
受注売上の目標達成のために、最後に猛烈に追い込んでも、残念ながら未達に終わることがあります。そういった状況を避けるために、マネジャーは行動にKPIを設け、行動目標を管理しようと考えます。たとえば、訪問件数やコール件数などのKPIを設けることです。
しかし、そこで営業活動の質が犠牲になることがあります。逆に質を重視すると効率が悪くなるため、単に「訪問件数を増やす」といった方向になりがちです。
3
質の無視
「目標の未達」までの結果、単価の安いお客様のところに行くことで一時的な弾みがつきますが、質を全く見ないと行動目標を達成することが目的化し、本来の目標からズレてしまうことが起こります。そこで、「細かいところを日報で見る」というマネジャーも現れますが、すべての案件について細かく書く必要が出てくると営業活動の時間が圧迫され、重要な商談に焦点が当たらなくなるという問題が発生します。
このような3つの落とし穴は、今から10数年前に当社代表の高橋も営業マネジメントを担当した時に経験したと言います。
「ペース」を基準にした効率的なマネジメント
当時、高橋は日報のチェック、訪問件数の監視、売上の厳密な管理を行いつつも、数字が伸びずに苦悩していました。その中で、高橋は「ペース」という考え方にたどり着きました。「ペース」を整え、それに基づいて行動することが重要だと気づいたのです。
具体的には、1週間あたりにいくら分の案件を新しく作れば良いのかという基準値を設定しました。会社やチームで基準を定め、そのペースに応じた営業活動が案件にどれだけ繋がりやすいのかを明確にしたのです。この「ペース」という基準を設けることで、目標とは違った新しい方向性が生まれました。
ペースが乱れたらすぐに介入し、安定したペースに戻す。このシンプルな原則に注力し、何が起こったかというと、安定して案件が作られ、商談が進展し、全体的に成果が出やすくなりました。
それによって、営業マネジメントの土台が非常にシンプルになりました。ペースが保たれているかどうかに焦点を当て、日報などの細かい報告は必要なくなりました。ペースが基準に達していない場合は細かく状況を記述してもらい、逆に順調な人には無駄に時間を使わせないようにしたのです。
訪問件数では、件数よりも新しい案件の創出や進展が重要になりました。例えば、アンケートを元にした進め方や、案件が作れるペースを基準にしました。単純に訪問しているだけではペースは上がらないので、その場合は介入の対象としました。
その結果、ペースを保ちながら走り切れる人は自然と目標を達成しました。営業は時に月末の数字が足りずに焦ることもあります。しかし、ペースを基準にすることで、達成できたお客様のところに焦点を当て、穏やかに最終日を迎えられるようになりました。
数字の追及から脱却し、お客様と深い信頼関係を築く
このペースという考え方は、単なる数字の追求から脱却し、営業とお客様の間に深い関係を築く方向へと導いてくれたのです。どんなに追い詰められてもペースを守り、長期的な視野で取り組むことが最終的な目標達成に繋がります。
ウエイトをペースに大きく置くと、チーム全体が目標を穏やかに達成する方向へと動きます。最終日に慌てずに済むことが最善ですから、ペースをしっかり保つのが一番理想的でしょう。
ペースに注目し始めた瞬間から、物事が楽になります。ビジネスの世界には「プロセスマネジメント」というものがあります。しかし、プロセスマネジメントにチャレンジするものの、なかなか上手にできない経営者やリーダー、マネジャーが非常に多いのです。
先ほどの3つの落とし穴から抜け出す方法が見えず、プロセスマネジメントを導入しても、報告や管理の手間が増えるだけに終わってしまうことがあります。そこで、メンバーの意識を目標に向けて統一することが大事になります。これによって指標や、どのようにその指標を視るかという部分が自然と決まり、無駄がなくなります。
グラフのビジュアル化でチームの意識を合わせる
例えば、ペースを維持して安定的な目標達成ができている営業には、報告を細かくさせる理由などないでしょう。しかし、ペースを提示しても上手くいかない人がいる場合、適切な介入が必要になります。
介入する中で、ペースという考え方があれば、介入の成果が月末や期末の売上目標達成率を見ずともすぐにわかります。それはペースが細分化されているからです。受注や売り上げの確定額だけでなく、商談のフェーズやランクのペースもありますし、商談が作られてゆくペースなどもありますから、育成がうまく進んでいれば、目標に追いつくことができるのです。
ペースに重点を置く時に高橋が最初に行ったことは、グラフのビジュアル化です。社内に数字に強いマネジャーがいたので、グラフ作成を依頼したと言います。そのペースに対するグラフがビジュアル化されていれば、チームの意識を同じ方向に合わせることができます。
具体的な数字よりも、ペースを守れているかどうかを中心に考えることで、安定した営業活動が実現し、安心しやすくなるはずです。