「うちとは状況が異なります」と言わせないために
今回は「商談で導入事例をどう魅力的に伝えるか」についてお伝えします。
特に法人営業の領域ではよく見かける話題で、たとえば「この会社が●●という製品を導入しました」といった事例が記事として取り上げられることも少なくありません。
お客様が登場し、特定の課題を解決した結果、どのように成功を収めたのか。それをストーリー仕立てで語ることは法人営業の世界では定番だと言えるでしょう。
しかしその一方で、当社はこの手法には限界を感じています。
事例紹介では、例えば「この営業がこういうことを行いました、その結果、こうなりました」という形式が非常に多いです。当社は、事例紹介が単に結果の報告に終始してしまっていることに問題意識を抱いています。
なぜなら、紹介される事例に出される会社は、商談をしている現場のお客様とは異なる会社であるため、必ずしも共感を生むわけではないからです。言い換えれば、「その会社ではうまくいったかもしれないけれど、うちはその会社とは状況が異なります」といった反応を引き起こしてしまうことがあるのです。
こうした状況を回避するためには、どうすればよいでしょうか。
ポイントは「共通点」を見つけること
まず、事例紹介では話の入り口からつまずいてしまう方が多いです。
例えば、相手がベンチャー企業であるにも関わらず、大企業の事例を紹介する際に「これは御社とは違う大企業の事例なのですが」と前置きする方がいらっしゃいます。この一言がお客様に「うちの会社とは状況が異なる事例だ」と感じさせるため、逆効果になることがあります。
ここで重要なのが、共通点を見つけることです。
例えば、「御社と同じように、担当者が意欲を持っているものの、経営層の理解が得られていない状況から始まった案件です」と共通点を強調することで、お客様の共感を生むことが可能になります。
事例紹介の「良さ」を挙げるとするならば、「導入した企業のブランド」「お客様の状況との類似性」「論点の的確さ」「具体性」などを示せることでしょう。これらの要素は、足し算ではなく掛け算で働くことが多いです。
特に「論点の的確さ」と「具体性」の掛け算は、事例の力強さを際立たせる要素です。
お客様が直面している問題と導入事例の接点を明確にし(「論点の的確さ」)、それを具体的なデータやストーリーで裏付ける(「具体性」)ことでお客様の共感を生むことができます。
他社事例の効果的な使い方
お客様の困っていること、やりたいこと、悩んでいることをどのくらい捉えられているかは重要です。導入事例で示す際には「具体性」が必要ですが、他社の赤裸々な情報を勝手に公開してしまわないよう、情報の取り扱いには十分気をつけましょう。
具体的な情報の表現には注意が必要です。例えば、他社での導入事例を具体的に話そうとすると、デリケートな部分や許諾を得ていない情報が出てくることもあります。そうすると、本来明かしてはいけない部分を言うことになりかねません。
例えば「ある企業の担当者が非常に興味を持って検討していたけれど、経営層の理解が得られなかった」という状況の事例があったとします。
ここでのポイントは、「仮に御社の場合であれば」と一言添えて、「お客様の状況にあった具体的なアイデアを提案すること」が重要です。
それによって、デリケートな部分や許諾を得ていない情報を赤裸々に話すことなく、目の前のお客様の論点に合わせることができます。目の前のお客様に合わせ、具体的に話すということを大切にしていきましょう。