お客様を味方につける基本的な考え方とは?
今回は大企業に強い営業チームを構築する方法についてお伝えします。
このテーマを取り上げる理由は、スタートアップ界隈のトップ企業から共通した相談を受けるようになったからです。主な内容は大企業向け営業の強化に関するものです。
最近では中小企業向けの営業活動の手法が確立され、大企業への営業活動は多くの企業で課題となっています。特に、スタートアップ界隈のトップ企業が取り組み始めているので、今後はさらに他の企業も大企業向け営業の強化をしてくることでしょう。
大企業向け営業に強くなるための考え方として当社の経験から言えることは、お客様をしっかりと味方につけることが基本であるということです。企業の規模が大きくなればなるほど、スタートアップの人々が想像しにくいレベルのリスクや不安が伴うことがあります。
例えば、スタートアップの会社では失敗やトラブルがあっても乗り越えて進むことが可能ですが、大企業では「取り返しのつかない失敗をしたくない」「自分の評価を下げたくない」という考えがあります。まずはこれに気づくことが重要です。
当社代表の高橋は大企業で正社員として働いた経験はありませんが、大企業向け営業に関しては非常にフィットしています。新規開拓から営業チームの構築までを成功させた経験から、皆さんがつまずく「仕事に対する重みの違い」を理解しています。
大企業向け営業ではこの「重み」に対する想像力が求められます。大企業で働く人たちが感じている「仕事に対する重み」の感覚を想像することができるかどうかが重要になるのです。
なぜ商社の「弁当の発注」は難しいのか
この「重み」に対する感覚は、皆さんの営業チーム全体で共有できていますでしょうか?
高橋が今でも覚えている20年近く前のエピソードがあります。当時、大手の総合商社に勤めていた高橋の友人が、ある日、飲みながらこんなことを語り始めました。
友人
知ってるか?弁当の発注って本当に大変なんだよ
総合商社では新人の営業が会議のお弁当を発注する役割を担っているのですが、これがとてつもなく難しいタスクであるというのです。
高橋
ちょっと待って、頼めばいいだけじゃないか
友人
いやいや、違うんだ。まず、参加者全員の好きなものや食べられないものをチェックする。そして、偉い役職者の方の最近の会食のジャンルをチェックし、そこに重複がないようにする。過去に発注された弁当もチェックしなきゃいけない。同じものがあってはいけないんだよ。直後の会食の予定もチェックして、そこにも重複がないようにする。飲み物の選択にも気を使う。水派とお茶派がいるし、お茶にも色々な種類がある。人それぞれ好きな銘柄のお茶というのがあるんだ。飲み物を頼む時に、水とお茶の比率なんかも考慮しなければならないんだ
高橋は純粋に驚いたようですが、友人は冷静に語ったようです。
友人
たかが弁当でしょう、と思うかもしれない。でもそうじゃなくて、大企業では1個1個の仕事が大きいから、いろんな場面で、この人はできる営業かどうかというところを見られているんだ。その1つが、この弁当の発注なんだよ
この話を聞いて、会議の前後の予定もチェックし、過去に発注されたお弁当の種類もチェックするなど、とても細かい部分にまで注意を払う大企業の文化に驚かされました。
その友人は、お偉い方との飲み会で食べ物をこぼした際に、シミ抜きを持っているとインパクトが違うとも話していました。
この話は、スタートアップで働いている方には全く異なる世界に感じられることでしょう。
お客様の視点での想像力の重要性
自分たちにとっては軽々しく思えることでも、お客様にとっては非常に大きいことであると気づく力、想像力が重要だというのが大企業向けの強い営業チームを構築する際のポイントです。想像力が土台となり、それをもとにどう仕事を進めていくかということが重要になります。
このエピソードから、仕事の「重み」やその背後にある文化を理解し、感じ取る力が、どれだけ細かいタスクであっても、ビジネスの成功において非常に重要であることがわかります。
目の前に高くそびえる高山、それを貫くトンネルを掘る作業は非常に困難で時間のかかるものだと感じるものです。つるはしを手にしてトンネルを掘る作業は、一度に大きく進展することはなく、少しずつしか進みません。その途中で「いつまでこの作業が続くのだろう?」といった気持ちや、「進展している実感が湧かない」という雰囲気が生まれることもあるでしょう。
営業の現場でも、多くのお客様が暗闇の中で辛い思いをして、終わりが見えない中でトンネルを掘り進めている様子を目にすることがあります。体力と気力が限界に達しかけたときに「大丈夫、進んでいるんだ」というメッセージを出せるかどうかは非常に重要でしょう。そのためには営業チーム全体に仕事が進展している感覚を生み出し、「勝ちパターン」を創り出すことが必要です。
進捗を明確にし、行き詰まったときのための人材育成の仕組みを作り、ひとつひとつの段階をクリアしていくことが求められます。大企業向けの実績があまり無い場合は、既に存在する数件の実績を徹底的に研究する必要があります。
「実績が増えない」と嘆くのではなく、既存の実績をどう生かすかを考えることが重要です。大企業向けの営業活動は、実績を積み重ね続ける作業でもあります。一度ブレークスルーが起きると、続く大規模取引も決まることが多いです。
大企業向けの営業は非常に難しいと感じるかもしれませんが、成功パターンが見えたら横展開が容易になります。大企業は他社が成功している事例を重視することが多いため、最初の実績を作るところまでの心の折れない姿勢が重要です。