今回は、新しいアイデアを生む方法についてお話します。
「どうやって売ったらいいのか確信が持てていない」ということがあると思うのですが、そのときに一番わかりやすいのは「お客様に逆に聞いてしまう」という方法です。
「もしもお客様が私の立場だったら、これをどうやって売りますか」と聞くのです。
お客様の赤ペンチェックで気づいたこと
最初にこれに気づいたきっかけは、私が25~6歳でまだ全然売れない、売れる感覚がわからないときに、ある親切なお客様が僕の提案書に赤ペンチェックをしてくれたことです。 自分の提案書に目の前で赤ペンを入れられていく感覚は新鮮でした。 「そのページはこういう意図なんだけど、全然伝わってないんだなあ」などの発見がありました。 その中で印象的だったお話をします。
当時、扱っていた商材は人事系の研修でした。 提案するテキストがとにかく分厚かったので、「中身がわからないものは買わないだろう」と考え、良かれと思って、研修テキストの中身をかなり大胆に載せた資料を付けていました。
赤ペンを入れてもらったとき、相手の方に「これ全然要りませんよ」とピーっと線を引かれました。 それに対して、私は「でも中身がわからないと、買うのに躊躇するんじゃないですか」と言いました。 「だったらこの部分だけサンプル出したらいいんじゃないですか」と言われたのですが、自分としては「中身がないものを買うってどういうことなんだ」と不安があったわけです。
するとそのお客様は「中身よりはこれを受けるとどうなるかを書いてください」とおっしゃったのです。 そこで「なるほどな」と思いました。 お恥ずかしながら、とにかく中身の良さを説明しようとして、これを受けたらどうなるかということについてあまり書いていなかったのです。 今思えば本当にビジネスの初歩なのですが、当時は気づかなかったのですね。
「あなたが私の立場だったら」の問いかけ
「もしもあなたが私の立場だったら」という問いかけをしたときに、時々ものすごく鋭いことをおっしゃるお客様がいます。 お金を払ってても採用したいほどのアイディアを、無料でいただけるのです。
私の会社は、コロナがあったときにサービスラインナップを大胆に見直しました。 リアルでやっていた研修ができなくなったので、単純にオンラインにするだけではなく全部見直すことにしたのです。
そのときに、あるお客様が「私だったら、会社で『無敗営業』を共通言語にしているので、”本の内容がマスターできます”と言われるといいですね」とおっしゃいました。 早速そのままお客様の案をいただいて、「『無敗営業』マスターコース」というのを作りました。 おかげさまで一番引き合いのあるコースになっています。
「組織で『無敗営業』を読んでいます」という方や会社がおかげさまで増えてきているのですが、「本当にこれで上手く使えているのだろうか」とか「身についているのだろうか」という不安や悩みがあるということは、お客様に「もしあなたが私の立場だったら」という問いかけをしなければ気づかなかった話でした。
自分の盲点に気づくために
このように、もしお客様に聞ける方がいそうであれば、全員が全員素晴らしいアイディアをくださるわけではないのですが、「もしもあなたが私の立場だったら」という枕詞で「どうやって売りますか」「どうやってアピールしますか」と聞いてみてください。
実は『無敗営業』という書籍は、直前まで違うタイトルの予定でした。 私が社内のメンバーに「本のタイトルがどうしても思いつかなくてやばい、もうこのままだと売れない気がする」とグチグチ悩みを言っていたら、メンバーが「私だったら『無敗営業』ってタイトルつけますけど」と言ったので「え、マジで、それ採用」という感じでタイトルが決まった経緯があります。
どうしても自分だと気づかない盲点があるのですね。 その盲点にいかに気づくかということが重要で、そのときに「もしもあなたが私の立場だったら」と質問を投げかけることがヒントを生んでくれるかもしれません。