『達人のサイエンス』という本があります。
この本から学びたいのは「あの人のスキルはどのようにして上達していくのか」ということです。 きっと誰もが自分のスキルが右肩上がりに上がっていってほしいと願うはずです。
順調な成長とは
大抵の人は「何かやればやった分だけ上がる」とか「時間が経てば経った分だけ上がる」と思いたいものです。
しかし、順調な成長とは、マスタリー(上達)の学習曲線にある形が極めて順調な成長なのです。
きっとみなさんは滑らかな右肩上がりの成長だけにしたいと感じることでしょう。 しかし、多くの方が実際に感じる成長はもっと階段状なのではないかと思います。
停滞を表す図の平らな部分を経て、スパートをかけたように急に上がり、その後少し下降します。 そしてまた停滞する……と、これがセットになっています。
この「下降した後に停滞する」という部分がセットになっているので、何かを上達したい人にとってはモチベーションの問題や、果たして自分が上達してるのかどうかわからないという問題が生じるのです。
能力を引き上げるための練習とテスト
そこでもう一冊おすすめしたいのが『成功する練習の法則』という本です。
この本は、全米バスケットボールの監督として名を馳せたジョン・ウッデンの考え方など、いろいろなスポーツの世界の名将の人たちの考え方や、ビジネスの世界で成果を上げている人に共通する考え方が紹介されています。
この本を参考に、「能力を引き上げるための練習とテスト」を図にしました。それぞれについて解説します。
①段階的なレベル定義
あの人のスキルは『達人のサイエンス』に出てくるようなカーブを描いて上達していくとすると、レベルの定義も段階的になっている必要があります。
②「重要場面」の切り取り方
『成功する練習の法則』で私が非常に興味深かったのが「一流のプレーヤーほど、区切った断片的な部分を練習する」という記述です。
一般的なイメージでは、試合形式で一通りのゲームの流れをしながら、トレーニングをするのがレベルの高い練習だと捉えられているかもしれません。 しかし実際には、一流のレベルに行けば行くほど、ある特定の場面を区切って、状況設定をつけてその部分を徹底的に鍛える練習方法を取るのです。
③動画サンプルとチェックポイント
実際どうやるのかについてのビジュアルのイメージがあるということ、そしてそのビジュアルのイメージを支える箇条書きがチェックポイントの定義です。 ちなみに私の『無敗営業チーム戦略』という本の中でも、「型のグーチョキパー」という表現で書いています。
④反復練習で引き上げ、実践して確認
基本的にスキルが上がるときは、反復練習が欠かせません。 その後に実践して確認する反復練習だけでは、モチベーションの問題が生じます。
⑤批評で終わらせず、実践と修正
多くの営業マネージャーや経営者の方の指導は、アドバイスで終わることが多いもの。 例えば営業に同行して帰社した時、
「今日はどうだった?」
「今日はうまくできませんでした」
「あの場面はもっとこういうふうにやった方が良かったんだよ」
「わかりました。ためになりました」
……以上。と、このようにアドバイスで終わる指導が多いのです。 これは日章で終わってる指導です。 実践と修正とは、以下のような感じです。
「さっきの商談はここがこういうふうにもっとこうしたらよかったよね」
「なるほどわかりました」
「はい。今もう1回の場面再現してみようか」
このように、その場でさっと簡単なロールプレイを行い、ちゃんとアドバイスが実践できてるかどうかを確かめます。 これが実践と修正です。 ここまでやると能力を伸ばしやすくなります。
お客様の話を要約するスキルの教え方
お客様の話を聞いて、「要はこういうことですよね」と一言でまとめることができない営業担当に対し、話の要約の仕方について教える方法を解説します。
まず、こういう状況でこういったことができているかを5段階に分けて定義しています。 ポイントは「レベル1に絶対クリアできるレベルを持ってくる」こと。 そうでないと、心が折れてしまう恐れがありますからね。
実際にワークマンという会社では、若手の人たちを引き上げるために平均点90点のエクセルのテストを作った結果、全社員のエクセルのレベルを上げたという事例があります。
レベル5は、理想の状態を表します。ただ、2から5のレベル感は適当で構いません。ここまで細かく考えていると時間が足りなくなってしまいますからね。
そこで練習・テストをするための教材は、忙しい現場マネージャーが時間を取られすぎないよう、簡易的に作れるもので十分です。