今回のテーマは「スキルマップ」についてです。
まずは以下のエクセルシートの図をご覧ください。こちらは、社内で若手育成をメインテーマとしたときに、実際に使っていたものです。
どういう考え方でこのシートを作ったか、またどういうふうに運用していたかということについて、解説したいと思います。
シートの概要
まず、このシートの位置づけとしては、新人若手の方が「どういう段階を経て成長していくか」や「今自分がどこにいるか」などをわかりやすくするためのものです。 育成側からも「具体的に今どこがネックになっていて、今どこにチャレンジしていて、何ができるようになったのか」ということをメンバーとコミュニケーションするという目的があります。
横軸に1から7までステージがあり、スキルのレベルを段階的に定めています。 縦軸にある「各レベルの要素分解」は、どういう場面で発揮されるスキルかということを書いています。
その下に「4本柱のスキル」とありますが、これは書籍『無敗営業』にある「4つの力」のことで、それらを7つのレベルに合わせて表現をさまざまに変えています。 さらにその下に「4本柱を支える汎用スキル」とあるのは、営業としてのメインの力以外の大事なマインドセットやスキルなどについて書いている箇所です。
シートの考え方
ステージ
「ステージ」というところに書いてあるのは「初期トレーニング」「独り立ち未満」「独り立ちはしているが目標未達」……といった段階的なスキルの状態です。 マネジメント側には別のスキルがあると思うのですが、一旦対お客様のものに絞っています。
レベルの定義
「レベルの定義」の部分は、いわゆる「can do」形式で書いています。 「can do」というのは「●●できる」という書き方のことです。 他のレベルとの違いを示すために、「▲▲はできないが、●●できる」というように書いています。
さまざまな企業の似たような資料を拝見するのですが、ここが例えば「顧客課題に沿った提案」のような、体験止めやキーワードで書かれている場合が多いのです。 もちろん顧客課題に沿ってみんなやってはいるのだけれども、もう少し具体的な粒感が知りたいのではないか、ということで「can do」の形(何ができて何ができてないか)に落とし込んでいます。
各レベルの要素分解
続いて「各レベルの要素分解」では、商談の場面/商談のための社内活動/商談にひもづかない社内活動というふうに、どんな場面で何ができて何ができないかということを書いています。
場面を分ける背景としては、すべてお客様に関する活動ではあるけれども、営業で成果を上げるためには「商談の場でお客様向けにうまく話せるか」とか「うまくヒアリングできるか」ということばかりではないので、そこの場面の幅広さを意識しているということです。
4本柱のスキル
「4本柱のスキル」の部分では、4つの力についてレベルごとのゴールと武器を定めています。この武器の内容が、書籍『無敗営業』に書かれている内容と対応しています。
例えば「質問力」のところを見ると、レベル3で「基本項目のヒアリング」「枕詞」「具体化質問」「課題を聞き出す質問」と書いているのですが、「課題解決質問」いわゆる「スピン」などはもっとレベルが高いものなので、後ろの方のレベルで必要とされるというふうにしています。
このような感じで、書籍の内容と連動してこのレベルが設定されているのです。
シートの運用方法
次に、このシートをどのように使っているかについてです。
面談で○×を突き合わせる
いわゆる「月1面談」をするときに、これを印刷した紙に、本人とマネジャーそれぞれが○×をつけてきます。
毎回の面談時に「今ステージどこにいるよね」という確認をするのですが、「今自分がいるステージ」と「自分がいるステージの1個先のステージ」の分について、できていると思ったら○、まだできていないなと思ったら×という感じですね。 慣れてくると、準備は5分程度で終わります。
面談時にそれを突き合わせるわけですが、大事なポイントは、マネジャーとメンバーの認識がずれているところを発見することです。 メンバー側として「自分はできている」と思っていてもできていない場合や、謙虚な人だと「自分はできない」と思っても「いや、それ十分できてるよ」ということがあります。
レベルアップさせるための運用
会社のマネジャーの方とお話をしていると、メンバーに「できていない」「まだまだだ」と思い知らせなければいけないというお考えをお持ちの方が多いと感じます。 それがどういうことかというと、「調子に乗ると成長が止まるのではないか」と思っているのです。
しかし、こういうレベルの定義が共通言語としてある状態であれば、マネジャーの仕事はなるべく早くこのレベルを先に進めることになります。 むしろどんどん「できている」状態になっていった方がいいわけです。 したがって具体的には、メンバー本人が×だけれどもマネジャーが○だと思ったところについては、そこの認識をしっかり伝えてあげたほうがいいですね。
こういうことを月1ペースでやっていくと、ポイントが明確になるのでレベルが上がっていきます。 ただ「ここがどうやっても乗り越えられない」というところも出てきますので、そこをロールプレイやテストで補います。
ロールプレイやテストなどの引き上げる方法がセットでないと、メンバー側からすると「どうやってレベルアップしたらいいんだ」と悩んでしまうので、このような運用をしています。
これをご覧になった方からは「細かいですね」とよく言われますが、いきなりこのレベルの細かさは必要ありません。 最初はざっくりしたものから作っていって、徐々にレベルの表現を細かくしていきましょう。 およそ3ヶ月~半年に1回のペースで、シートをリニューアルしていく運用をするのがいいのではないかと思います。