営業の初回訪問時、「御社の課題は何ですか?」という平凡な質問をしてしまっては、お客様から白い目で見られてしまいます。一方で、「御社はこれが課題なのでは?」の当て推量を外してしまうのも避けたいところです。
そこで、「課題に対してこれまで取ってきたアクションの理由」を理解するための問いを投げると、初回訪問の質が上がります。
初回訪問で聞くべきこと
営業が初回訪問で聞くべきことは、以下の2点です。
(1)見積や提案を出すために必要な情報
(2)お客様のことを真に理解するために必要な情報
多くの営業は、(1)だけ聞いて資料を作ってしまうのですが、これだと浅い提案になりお客様から不満をもたれやすいのです。では、(2)の情報を得るためには、どう聞いたらいいのでしょうか?
お客様の”ヒストリー”をたどる
もし、お客様が他の手段でお悩みや課題を既に解決していたら、自分の目の前にはいないはずです。「他の手段では解決しきれなかった何か」があるから、こうやって時間をいただいているのです。そうなると知りたいのは、
●なぜ、これまで当社と出会わなかったのか?
●なぜ、このタイミングで当社と出会ったのか?
といったことです。
しかし、過去に出会わなかった理由やいま出会った理由をストレートに聞いても、不思議な顔をされるだけですよね。
そこで「お客様が、お悩みや課題に対して、これまで、どういう打ち手を取ってこられたのか」の”ヒストリー”をたどるのです。もちろん、事前に調べられることは調べたうえで「お客様は、これまでAの打ち手を取ってこられたということですが、なぜ、Bの打ち手は選択されなかったのでしょうか?」といった核心に迫る質問を投げましょう。
「選ばれなかった選択肢」にヒントがある
お客様の価値観は、何かを「選ぶとき」よりも、「選ばないと決めるとき」に色濃く反映されます。「候補に挙がったが選ばれなかったであろう選択肢」を必死に考えて商談に臨みます。これらを聞くと、
●お客様の根深い課題
●お客様のリソースやケイパビリティの実情
●組織で検討を進める上での本当のネック
などがわかります。さらに「選ばれなかった選択肢」を話すときのお客様の声のトーンや表情に注目してみましょう。その「非言語」に大きなヒントが眠っていることがあります。
「何かやらないといけないと思っているんです」と口ではおっしゃるものの、本当に動くつもりはそこまでない……というお客様がいます。若い営業担当は、お客様の本音を見抜けず「提案のチャンスあり」と頑張るのですが、得てしてそういう案件は流れることが多いのです。お客様の本気度は、提案を出してから判断するのでは遅いと思ったほうがよいでしょう。
案件が成就する可能性が高いのは、「お客様が、過去に選ばなかった選択肢について、本当はそれをやりたかったができなかった理由があり、今度の当社の提案では、それを解消できることが見込める」のをお客様に実感いただけたときです。初回訪問でテンプレのヒアリングをするだけでは、この瞬間はやってこないのです。