多くの商談は「営業が想像しているより手前の時点」で決まっています。見積もりや提案を出したり、決裁者アポの設定にいくら力を入れたりしても、実は既に手遅れ(お客様の腹は決まってしまっている)ということはたくさんあります。手遅れを減らすためには、商談の「フェーズ」を営業組織でどう運用するかが鍵です。
フェーズを定義・運用する
「営業の見える化をしたい」というご相談をよくいただきますが、成功の鍵を握るのは「フェーズ」の概念が組織全体で理解されているかどうかです。「そろそろ見積を出そうかな」という段階で上司に詳しく報告され、見積提示をするタイミングで上司がサポートし始めるという現状の流れを、いかに前倒しできるかが重要になります。
案件の発生段階からきちんとマネジメントしましょうと話すと、多くのマネジャーは「メンバーの訪問は、毎回、日報で詳しく報告させている」と答えます。実はここが落とし穴になりやすいのです。日報に頼ったマネジメントをすると、「報告だけは詳しく書く」メンバーが増えて大事な接戦の情報が埋もれてしまいます。
フェーズを定義して「商談が前進しているかどうか」に焦点を合わせることで、
●報告のための報告(仕事している風に装う)が減る
●経験の浅いメンバーでも、やるべきことがわかる
●営業活動が進んでいるかどうかが可視化される
●着地見込みの精度が上がる
など、たくさんのメリットが生まれます。
フェーズの運用をするうえでは、「この段階にきたら、こういう情報がわかっているはず」という項目を定義して、「然るべきフェーズにきたときに、入っているべき情報が入力されているかどうか」を見ることが必要です。フェーズの定義がきちんとされていれば、SFAでこのあたりをかなり便利に運用できます。
勝負どころを掴んで勝ちパターンを作る
ここからが重要な話ですが、接戦の決定場面をヒアリングすると「どの瞬間にお客様の心が動いたか」がわかります。そしてその瞬間は「意外なほど手前にある」ということが判明します。それは、フェーズのどこに当たるのか?その「フェーズの番号」を組織全体で共通認識できるかどうか?これが勝ちパターンにつながるのです。
例えば私の会社では、過去に接戦の決定場面のヒアリングをしたところ、「初回訪問から数日間の、要件整理の動作」でお客様の心が大きく動くということがわかりました。社内の定義でいうとフェーズ4です。したがって、そのフェーズ4だけ定義を少し細かめにしています。このアクション精度が勝率に反映されるからです。
フェーズ4が勝負所なので、
(A)フェーズ3から4に進めず停滞している商談はないか
(B)フェーズ4から5に進めず停滞している商談はないか
をアラートのダッシュボードでチェックします。
(A)は「勝ちパターンが実行できていない可能性が高い案件」
(B)は「勝ちパターンをメンバーが誤解している可能性が高い商談」
となります。
社内の定義では、見積や提案を出すのはもう少し後のフェーズですが、そこで頑張るのではもう遅いのです。「実際に勝負が決まる場面」に力を注ぐようにすると、提案内容に細かく赤入れや値引きをしなくても受注率が上がりますよ。
あとは、トップが旗を振って「フェーズアップ祭り」をします。組織全員でフェーズを上げまくるのです。当社のダッシュボードは、業績のモニタリングDBを開くと、売上数字より先に「フェーズアップ件数」が目に入る位置に置いています。売上は急にコントロールできませんが、フェーズアップはやれば毎日できるからです。