今回は、営業の初回訪問から次のステップにつなげる難しさについて、「初回訪問におけるお客様の心理」の側から考えてみます。
①望んだわけではないアポ
②望んだアポ
この2パターンのいずれかによって、世界観は異なります。いずれにせよ、鍵は「誤解に基づくジャッジ」をされないようにすることです。
①お客様が望んだわけではないアポ
「望んだわけではないアポ」とは、コールドコールからのアポイントや、インサイドセールスによる掘り起こしから生まれた訪問のことです。
お客様からすると、
●何かよくわからないけど会って(話して)みるか
●まあとりあえず時間は空いているし
●なんか一生懸命だし
といったように、勢いに押されてアポを承諾していることが多いと思います。
この類のアポは、商談当日になると
●あれ、カレンダーに入っているこのアポなんだっけ?
●メールを検索すると……ああ、「売り込み」ね
●でも今日忙しいんだよな。なぜこのアポ入れたんだろう
●有用な情報がなければ、失礼のないようにさっさと終わらせて、仕事に戻ろう
というふうに、お客様の心が変わっています。
お客様の心の中は「有益な情報はあるのか?なければさっさと終わらせたい」となっている状況です。注意すべきは、有益な情報を望むお客様の気持ち自体が、漠然としたものであることです。だから冒頭に「今日は情報収集ですので…」と言われたアポでは、いきなり何かの情報を出しても、響かず終わることが多いのです。
お客様は、
(A)さっさと終わらせたい(見切りたい)
(B)でも何らかの良い情報は欲しい
という、一見すると矛盾した感情を抱えています。往々にして、先に(A)で引っかかって「はい、終了」となることが多いのです。この「品定めモード」は見切ること自体が目的化しているため、まずはこのモードを外すことが必要になってきます。
品定めモードを外すには、
●アポが決まってからアポ当日を迎える前の間
●商談冒頭の3分
このいずれかにしかチャンスはありません。 できればアポ当日を迎える前に、「質の悪い売り込みアポとは違う何か」を証拠として提示したいところです。そこで、アポ前の電話やメールをテンプレート化させないことが非常に重要です。
アポ前に伝えるべき情報は、
●私はお客様のことを最低限、調べている
●まさしく御社にこそお役に立てる理由がある
●今のタイミングだからこそ、御社にお役に立つことができる
●他のよくあるベンダーとはここが違う
●そして、私自身は「めんどくさい営業」ではない
といったことです。これらをいかに凝縮して伝えるかが鍵になってきます。
そして「アポ前に伝えるべき情報」を伝えた後は、「商談前」か「商談開始直後の3分」いずれかの時点で、「お客様にとって、解決されないままに残っている課題やお悩みは何か?」という情報をいただくとよいでしょう。これをつかまずにいきなり商品説明をしても、さっさと切られてしまうのがオチです。
「お客様にとって、解決されないままに残っている課題やお悩み」を把握していない状態で、会社紹介や商品説明を始めてしまうのはとても危険です。誤解に基づいて「ああ、やっぱり違ったか」とジャッジされてしまうからです。お客様は一刻も早く「この場を終わらせて仕事に戻りたい」という心理になっているため、そういったバイアスも働きやすくなってしまいます。
②お客様が望んだアポ
一方で「望んだアポ」とは、
●お客様自身が資料請求
●お客様がウェビナーに参加して、もう少し話を聞いてみたいと思った
●お客様からの自発的な問い合わせ
などといったパターンです。この場合、お客様は「前向きモード」なので営業側からすると「やりやすい」と感じます。しかし、こういった経路からのアポにこそ落とし穴があります。
お客様が望んだアポといえども、
●お客様は当社のことをよく知っているわけではない
●こちらもお客様のことをよく知っているわけではない
という「ギャップ」が存在しています。したがって①と同様に、「商談が始まる前」か「商談冒頭の3分」で、お客様のことを理解するための質問をしておきましょう。
①と異なるのは、お客様が「話してくださるモード」になったら、自社の話をする前に、とにかくとことんお客様の話を聴きに回ったほうがよい、ということです。ここで「せっかくお時間をいただいているのだから、さっさと自社の紹介をしないと」と焦ってしまうと、ズレが起こりやすいのです。
お客様がアポを望んでいる場合は「何かに困っているが、それが解決されていない」状況です。いったいそれがどういうことなのかを明らかにしてから自社の紹介をした方が、深く響きます。お定まりのルーチンで、「資料請求された背景を教えていただけますか」と一言聞いたらすぐ自社の話をしてしまうことのないよう注意しましょう。