商談で、お客様が深くうなづき、思わずメモを取るような話をどのぐらいできるか。
これは、「商品知識や業界知識の詰め込み」「立て板に水の如くの滑らかトーク」があればできる類のものではありません。
キーワードは”A→Bの変化”にあります。
お客様のうなづき、メモにつながる”A→Bの変化”
「深くうなづき、メモをとるだけの意味がある」と思う要素は”A→Bの変化”に関係しています。
●今まで自分/自社が行き詰まっていた原因がわかった(これを取り除けば良い未来がある)
●自分/自社が具体的にどうすればいいかのヒントがあった(から、メモをしておき、後でアクションにつなげたい)
一方で、大量の商品知識や業界知識に関するウンチクは、「資料に書いていないからメモしておくか」ということはあっても、お客様にとって”A→Bの変化”につながらなければ、深いうなづきは生まれません。
また、立て板に水の滑らかトークも、”A→Bの変化”に関係していなければ聞き過ごされてしまいます。
提案する商品やサービスは、お客様にとっての”A→Bの変化”につながるものであるはずです。
そのため、「何が変わるのか」「どう変わるのか」「なぜ変わるのか」に紐づけて語る必要があります。
同時に(お客様は、他の手段では)「なぜ変われないのか」にも通じていなければなりません。
それが積年の課題だからです。
ここで、営業が”A→Bの変化”に実際立ち会ってきた経験値が物を言います。
数々のお客様の変化を支援してきたからこそ、重みのある言葉で語れるのです。
しかし、”経験値”で話を片付けてしまうと、「じゃあ、入社したばかりの営業はどうしたらいいのか?」となります。
そこで必要になるのは「手段化」と「受け売り力」です。
話を構造化する力を上げる
以前、中途入社して間もないのに実績をあげているハイパフォーマー営業に「なぜ前職と全く違う業界・商品で、そんなに売れるんですか?」と聞いてみたことがあります。
すると、「私が提供しているのは、ただの”手段”です。お客様の成功が目的なので、前職とやっていることは同じです」という答えが返ってきました。
多くの営業は、自社の商品・サービスを主役として説明し、「お客様が買うかどうかご判断ください」の世界観で見ています。
この主従を逆転させ、「お客様のどのような変化を実現し、それに自社商品がどう貢献するのか」で語ると、お客様は「変化」の部分に反応します(結果として耳を傾けてくれます)。
「お客様の変化が主目的、自社商品は手段」で捉えられるようになると、話を構造化する力が上がります。
「AからBへの変化を実現。そこには自社商品がこのように貢献した」の図式で、具体例を抽象化できるからです。
そうすると、社内にある事例を構造でうまく説明できるようになり、「受け売り力」が向上します。
こうして「A→Bの変化に役立つ話」のネタが蓄積され、伝えるスキルが磨かれていきます。
お客様は、A→Bの変化が実現できそうな気配を感じると、うなづきやメモをする、といったポジティブな反応が増えます。
「話す→ポジティブな反応」のフィードバックをたくさん経験することで、コツがつかめ、引き出しが徐々に増えていきます。