2024.06.04

目標に対するプロセスマネジメント

お客様の意向とズレた一方的な売り込みは、なぜ生まれるのでしょうか。

原因をたどると「Excelの目標管理が生んだ文化」に行き着きます。

SFAが普及してきていますが、多くの会社はまだまだ(実体としては)Excelで目標管理をしています。

SFAも単に導入するだけでなく「リアルタイムのフェーズ更新」が必要です。

「Excelの目標管理」が生み出す「隠し玉」

定期報告のため課長が課の売上をExcelで集計します。

課の目標に少し足りず、「このままでは部長に報告できない」と考えた課長は、”気持ち、乗っけた”見込額で部長に伝えます。

この、”気持ち、乗っけた”というのは、「確度は低いものの、頑張って受注しようという決意の伴った案件」です。

部長は各課からの進捗報告を見ます。

部の目標に少し足りず、「このままでは役員に報告できない」と考えた部長は、さらに”気持ち、乗っけた”見込額で役員に伝えます。

Excel管理の会社では、部長と課長の「気持ち会議」が実施されていることが多いのです(どのぐらい乗せて役員に報告するかを議論する場)。

このように、Excel管理だと、役員にあがってくる進捗報告は「現場の気持ち」が乗っかった数字になっています。

役員もそれは薄々わかっているので、「…で、実際のところはいくらぐらい(数字が)行きそうなの?」と尋ねます。

このやり取りがされている会社では、「未達でも困らないように」高めに目標が設定されます。

そして高めの目標設定は現場にプレッシャーを生みます。

メンバーは確度がまだ低い「緩めの案件」を、いざというときのプラス要素として隠しておきたいと考えます。

これは、受注できるはずの案件を失注すると怒られるため、それなら、そもそも案件として上司に期待させないようにしようという心情がはたらくからです。

こうして「隠し玉」が生まれます。

「隠し玉」によって案件の実態が見えなくなると、チーム目標達成の難易度が上がります。

プロセスが見えなければ、上司は「結果で判断するぞ」となりますが、そのメッセージが強く出すぎると、お客様の方を見ない営業活動が生まれやすくなり、とにかくノルマのために手段を選ばず頑張ります。

フェーズを正しく管理する

隠し玉をなくすには、正しいフェーズ管理が必要です。

●案件の”卵”も含めて「今どの段階にあるか」をフェーズで定義する
●フェーズは、タスクとして何をやったかではなく、お客様との間で何を確認できたかで表現する
●フェーズはリアルタイムで更新する
●フェーズ定義の認識ズレがあったら対話と議論

フェーズ管理が正しく機能すると「いま数字はどんな状況か」がリアルに見えてきます。

「気持ち」を排した実態が見えれば、現実を無視した目標達成プレッシャーをかけることは難しくなります。

そして、お客様のためになる活動をしないとフェーズが上がらないようにすれば、皆がお客様の方を向くようになります。

SFAを導入していても、

●フェーズの定義が「初回訪問→2回目訪問」などの表現になっている(お客様には訪問回数は関係ない)
●フェーズを更新しないメンバーが許容されている
●フェーズの認識ズレが放置されている

このような状況ですと、実態はExcel管理と変わらず、SFAのポテンシャルを活かしきれません。

フェーズ管理が機能してくると、営業マネジャーの目線は

●新規案件作成
●フェーズアップ
●パイプラインと期待収益

に向くようになります。

数字が伸びないメンバーはどこでつまづいているかが具体的になり、「壁」が明確になれば指導もしやすくなります。

パイプラインの状況を見れば着地予想の精度も上がります。

フェーズを正しく定義・運用すれば、社内での過剰なノルマプレッシャーは軽減され、お客様の方を向いた営業活動になってきます。

「ノルマの存在は善か悪か」というのは正しい論点ではなくて、「目標とは何か」「目標をどうマネジメントするか」への議論が必要です。

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