精神論的な指導「まずやろう。やればわかる」「沢山やろう。量が質に変わる」は、不特定多数に対する一般論としてはアリですが、職場で上司が部下に1対1でやってしまうとキツイです。
私はそれよりも
①構造を教える
②制約条件とヘルプについて握る
③工夫と発見の会話をする
を勧めたいと思っています。
上司からありがちな指導
職場で行われる精神論的な指導は「まずやろう。やればわかる。それでうまくいった自分が証拠だ」が多いでしょう。
これはn=1のように部下に見えてしまいます。
いわゆる生存者バイアスと言えますが、上司は生き残った側なので自分では気づきにくいのです。
よかれと思って行う指導が、部下にとっては腹落ちしないものになってしまいます。
上司の精神論的指導は、部下からすると逃げ場がありません。
「やるは正義、やらぬは悪」
この構図は、やってみないとわからないようになっているので、やる前に部下から何かを主張すると「最近の若手は腹落ちを求めて、素直に言われたことをやらない。だからなかなか結果が出ない」となってしまいます。
①構造を教える
まず、テレアポの精神と構造について考えてみましょう。
テレアポの精神
「まず50件。かければわかる」
↑↓
テレアポの構造
●お客様は電話がかかってくる前、別の仕事に集中している
●不信・不要・不急・不適の壁がある
●入り口20秒の印象で相手は判断する
●全て断るわけではなく、メリットがあって時間が空いていれば応じてくれる
●ABテストが重要
②制約条件とヘルプについて握る
制約条件とは、例えば電話なら
●電話をかけてはいけない時間
●電話口で話してもよいこと/話してはいけないこと
●電話口のその場で資料を送るのはOKか(あるいは上司に確認を取る必要があるのか)
●他業務との優先順位との兼ね合い
などです。
これらが曖昧だと仕事がしづらいので、はっきりさせておく必要があります。
やり方を教えるか、自分で考えさせるか。
うまくいかないときはどこで介入するか。
指導する側からすると線引きやバランスが難しいです。
なので、部下が「こういうヘルプがほしい」とサインが出せる環境を整えておき、リクエストがあれば支援します。
もちろん、人によってヘルプを求める度合いは変わってきます。
③工夫と発見の会話をする
人から押し付けられた仕事に「楽しさ」や「やりがい」を見出すのは難しいものです。
そのため上司は、部下が独自に工夫や改善できる余地を残しておきます。
そして
●どんな工夫や改善をしたか
●どんな発見があったか
について対話する時間を設けます。
「試行錯誤から何かを発見すること」の楽しさを覚えれば、自発的に動きます。
精神論的な指導は、もし一時的にうまくいったとしても、その部下がやがて人を育てる側になったとき、「同じような精神論的な指導しかできない上司」になってしまうリスクがあります。
時代はどんどん変わるので、後の世にたくましく生き残れるような力を、大切なメンバーには身につけてほしいと思います。
ただし、私は「仕事における精神論」を、世の中一般に対するメッセージとしては否定しませんし、むしろ個人的には「精神こそ大事」だと思っています。
気合も根性もなければ、成果や成長の壁を乗り越えられません。
しかしそれは私が勝手に心の中で思っているだけで、目の前の相手に直接ぶつけるものではありません。