2024.06.03

聞きづらい予算の聞き方とタイミング

営業が商談中に聞いておくべきヒアリング項目としてBANT(予算・決裁者・ニーズ・時期)があります。
ニーズと時期は比較的聞きやすいと思いますが、予算と決裁者については「聞き方」と「聞くタイミング」が難しいと感じる方も多いのではないでしょうか。

今回はこの「予算の聞き方」についてお話しします。
予算の聞き方を間違えてしまうと、単価と受注率が落ちてしまいます。

予算はどのように決まるかを知る

「予算の聞き方」を考える上では、まず「予算がそもそもどうやって決まるか」を知っておくことが大事です。

予算は「どこかの会社が出した見積もり」の数字を参考にして決まります。
大きく、次のように場合分けすることができます。

①ーa:予算額を決めるための提案依頼(営業発信)
①ーb:予算額を決めるための提案依頼(購買発信)
②ーa:予算額が決まった状態での提案依頼(過去)
②ーb:予算額が決まった状態での提案依頼(現在)

①ーa:予算額を決めるための提案依頼(営業発信)
これは、購買計画がない状態で、営業から「提案があります」とくる場合です。
このタイプの案件では「予算はいくらですか?」とお客様に聞いても、答えは返ってきません。
営業が出した見積によって予算が決まります。
提示額が高めなら、予算額も大きくなります。

①ーb:予算額を決めるための提案依頼(購買発信)
これは、顧客側が購買計画を作るために「まずはいくらぐらいかかるのか」の目算を立てるケースです。
このタイプの案件では、営業が出した提案見積はその場では真剣に検討されず、「いったん相場がこのぐらい」を社内確認してから本格検討が始まります。

②ーa:予算額が決まった状態での提案依頼(過去)
これは、過去に発注したことのある企業でいくらかかったかが金額の基準になります。
このタイプの案件では、顧客側に「相場観」があり、品質と価格の費用対効果がある程度は言語化されています。
予算を上げにいくなら、明確なロジックが必要になります。

②ーb:予算額が決まった状態での提案依頼(現在)
これは、既に有望な一番手企業がいて、その競合が出した見積が基準になっているケースです。
このタイプの案件では、当該競合に発注する可能性が、ある程度は現実化しています。
そのため、予算云々よりも、まずはその一番手を提案内容でひっくり返さないといけません。

質問の仕方とタイミングのコツ

①ーaや①ーbの予算額を決めるための提案依頼の場合は、
「いくらをこえると検討の対象外になりますか?例えば、A円、B円など、金額によってもレベル感が変わってきますが…」という聞き方で、検討対象外になる上限金額について、選択肢付きの質問で聞きます。
(Aはこちらが予想する金額の2〜5倍、Bは1.2〜1.5倍)

ただしタイミングには注意が必要です。
ある程度は提案に価値を感じていただき、お客様から「真剣に検討したい」というサインが出てからでないと、「そんなことより、まずは御社がいくらでできるかをご提示ください」と返されてしまいます。
この返しがこないように、ギリギリまで価値訴求し、響くまで粘る必要があります。

②ーaや②ーbの予算額が決まった状態での提案依頼の場合は、予算金額より先に、金額の基準になっている他社がどこなのかをヒアリングします。
「こういった類の案件ですと、A社さんとかB社さんですか?」
このときのA社は「業界でいちばん高い企業」、B社は「安かろう悪かろうの企業」にすると、答えが返ってきやすくなります。

ただしこちらもタイミングには注意が必要です。
「他社の存在を匂わせる発言」と「他社の存在があるのに、当社に対する期待が高そう」な気配が漂ってきてから聞いた方が、競合の社名と金額感を聞きやすくなります。
他社に比べて大きな価値訴求をすることで、「むしろ御社に発注したい」という意向が見えるまで頑張ります。

予算を聞くには、「予算がそもそもどう決まっているのか」を理解しておき、今回のケースはどれに当たるのかを探り、ある程度の価値訴求ができてから(お客様に響いてから)予算について質問するのが重要です。

これらの段階を踏まず、単に「ご予算はいくらですか?」と聞いても、意味のある回答は得られにくいでしょう。

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