「お客様に興味が持てない営業」の悩みをよく聞きます。
それは例えば、このようなお悩みです。
営業の方「私はお客様に興味が持てないんです。営業に向いていない気がします」
上司の方「最近の若手はお客様に興味を持たないんです。だからお客様と距離を縮められない」
実は私も、お客様に興味が持てないことでずっと悩んでいました。
「不」に焦点を当てる
「外向型」「内向型」という言葉がありますが、色々な診断や心理テストをやってみると、私はだいたい90〜95%ぐらい内向型寄りの結果が出ます。
たびたびブログでもお話ししていますが、私は人と接することが苦手で、対人恐怖症の時代が10年。
他人に興味を持てない自分に対して劣等感があり、人と明るく話せる友人や知人を見て、羨ましいなとずっと思っていました。
16歳で飛び込み営業バイトを経験し、人と話すことには多少慣れました。
しかし、それでも人と話すことが苦手で、相手から距離を感じられやすいことに悩んでいました。
今でも、講演の聴講者と1対1でお会いすると「高橋さん、今日は体調悪いですか?元気ないようですが」とよく言われるほどです。
私自身はいつもと同じ感じなのですが…
私が幸運だったのは、25歳で起業したとき、死ぬ気で営業しないといけない状況に追い込まれたことでした。
営業を誰からも教わったことはなかったのですが、極度の人見知りなりに色々と試行錯誤しました。
その頃、巷にある営業本を読んでも、書いてあることが実行できない自分に凹んでいたとき、とある記事が目に留まりました。
今では有名ですが、その記事は、リクルートの「ビジネスを通じて社会の”不”を解消する」という話でした。
「不便・不満・不安に注目する」という文章を読んで、20代当時の僕は衝撃を受けました。
これは、営業においてとても大事な考え方なのではないだろうか。
お客様との商談でも、とにかく”不”に焦点を当てたらどうなるだろうか。
それまでは、「お客様と関係を築かないといけない」「お客様との距離を縮めないといけない」と思っていたのです。
しかし、一旦そういった強迫観念から離れて、自社の商品を売ることすらも忘れて、とにかく、お客様の”不”を理解しようと努めました。
すると、商談の会話での注目ポイントが変わってきたのです。
転機になった、あるお客様の「不満」
その当時は、「アイスブレイク→会社紹介→ニーズヒアリング→提案→クロージング」を完遂することに一生懸命でした。
しかし一旦それを捨て、「まず、お客様が何に”不”を感じているか、それだけをきちんと理解しよう」と考えました。
中には、色々と聞いたのに提案できるきっかけが見つからずに帰った商談もあります。
その中で、あるお客様から聞いた「不満」が大きな転機でした。
「いや〜、色々と話を聞いてもらったのに、提案の依頼もできずすみませんね。でも、ほとんどの会社は、自社の商品を押し込んでくるばかりでイマイチなんで。ある意味、逆に、ありがたかったですよ」
そこで私は反射的に、「どんなことがありがたいと感じたか」を恐る恐る聞いてみました。
すると、「課題とか悩みなんて、社内で話したら『愚痴ってないで何とかしろ』て言われるし、社内に良いディスカッション相手もいないしで、実は全然考えが進まなくて。今日は、頭の中が整理できて助かりました」とのこと。
悩みや愚痴を聞き続け、一緒に整理するだけで感謝されるというのは、当時の私にとっては新鮮な発見でした。
そこからしばらく「売るのをやめて、相手の”不”をひたすら聞いて整理する」ことを続けていたら、ごく自然に1件受注できました。
いま思えば、それが「ターゲットとなるお客様」なのかもしれません。
「お客様に興味を持てるかどうか」というのを、いわゆる対人コミュニケーションや適性の文脈で捉えると、昔の私のように、性格やタイプによって苦手意識を感じてしまう人も出てきます。
しかし、「お客様の”不”を理解する」ことにフォーカスすれば、そこは技術で伸ばせる世界なのです。
いくらでも上達させることができます。