「お客様は何にお金を払っているのか」
これは、営業にとって永遠のテーマです。
”ドリルを買う人が欲しいのは「穴」である”という話は有名ですが、これを単なる営業トークの次元で終わらせるのはもったいないと思います。
「お客様がお金を払ってくださっている対象は何なのか」を真剣に追いかけている企業は強いのです。
接戦案件の受注直後に発見がある
営業現場では、「お客様のニーズを捉えよ」「課題解決営業をせよ」という指示が飛び交っています。
しかし、営業が「お客様のニーズや課題」だと思いこんでいることの多くは、購買担当者の個人的意見です。
お客様が「会社として、何の課題を解決してくれると思ったからお金を払っているのか?」は意外と追求されていません。
これを確かめる最大のチャンスは、接戦案件の受注直後です。
提案中には口が堅かったお客様も、受注直後には色々と教えてくれます。
そこで「お客様は何にお金を払っているつもりなのか」を深掘りすると、意外な発見があります。
お客様の台詞がきっかけで良い方向へ
昔、新人研修を受注したお客様に色々と突っ込んで聞いてみると、「実は、我々は研修にお金を払っているわけじゃないんです」と言われたことがありました。
若かりし頃の私は「えっ!あんなに一生懸命、研修の内容を考えたのに…」とショックを受けました。
しかし、その次のお客様の発言がとても印象的でした。
40代のお客様曰く「僕は、最初の上司が素晴らしい人で、その人が教えてくれた台詞を今でも覚えています。講師の皆さんには、新人にとっての”0人目の上司”として、ずっと残り続けるメッセージを伝えてほしいんです」
なるほど。20年残るような学び体験か…。
このお客様の台詞を社内に持ち帰り、メンバーと徹底的に議論しました。
単なる「新人研修」を受注したと考えたら、”1年目社会人が知っておくべき基本”で内容を構成するかもしれません。
しかし、「20年残るような学び体験」にお金を払っていただくとなると話は変わってきます。
それに基づいて商品開発やマーケティングを考えると、どんどん良い方向に、色々な前提が変わってきました。
営業は会社変革のキーパーソン
「お客様が何に対してお金を払っているか」の声をいちばん多く拾えるのは、最前線にいる営業です。
「営業がどんな情報を社内にフィードバックするか」がビジネスインパクトに直結します。
特にコロナ禍の状況では、多くの会社が商品開発・マーケティング・営業のビジネスプロセスを再検討しています。
お客様に近い営業が、「商談の場面で伺うニーズ」だけでなく、受注直後に聞ける「何に対してお金を払っているか」の本音を社内に還流させることで、全社的な気づきや発見を促すことができます。
そういう意味で、激変の時代における営業は会社変革のキーパーソンだと、私は思います。