2024.06.03

若手営業の「やりがい」と「モチベーション」

数字のプレッシャーや受注の壁に悩む若手の営業の方から、「やりがい」や「モチベーション」について質問されることがあります。
そんな時、よくある回答は「モチベーションに左右されない自分を作れ」「行動するからやる気が出る」というアドバイスかもしれません。
しかし私は今回、「発見の楽しさ」の観点からお話してみようと思います。

よく「過去と他人は変えられないが未来と自分は変えられる」「脳の構造は、行動すればやる気が出るようになっている」といった類の話があります。
ただこれは、社会人として一定の経験がある人(自分をメタ的に見られる人)に当てはまるもので、まだ土台ができていない新人の方々には実感しづらいと考えています。

そのため今回は、2つの場合分けをした上で、極めて実務的・実践的な話をします。

(1)初受注をした後 
(2)初受注をする前 

自分で受注をいただき「お客様から選ばれる」という経験をしてはじめて、本来の営業の楽しさは実感できます。
まず、「(1)初受注をした後」から説明していきます。

初受注をした後にすべきことは?

新人が初受注をしたとなれば、周りはとても喜びます。大騒ぎです。
これまで辛抱強く面倒を見てきた上司や先輩からハートフルなメッセージが送られたりもするでしょう。
こういったものは、確かに大事です。

しかし、上司や先輩はいつまでも面倒を見てくれるわけではありません。
そのため、初受注で大事なのは、お客様に「心が動いた瞬間」を自分でヒアリングすることです。

まだ商品知識や営業スキルが十分でない自分に、お客様が発注してくれました。
お客様の心はどこで動いたのか?「生の声」を聴き、掘り下げます。
お客様の声をリアルにご本人から聴くことで、自分の身体・心の奥深くに刻まれ、これが自信となり、自分をずっと支えてくれます。

私自身が起業してから初の受注をいただいたときのことです。
商品は不十分、実績はゼロ、営業スキルもない…という状況でしたので、 正直、最初の受注は、気合でひたすらお客様の社内資料作成を手伝いまくることでいただきました。
3ヶ月以上にわたる労務提供です。
これだけではただの精神論でしたが、その時に聞いたお客様の台詞が印象的でした。

「なんかさ、一緒に仕事したら楽しそうだなって思ったんだよね」

私は今でも、この台詞をくださった最初のお客様に感謝しています。
これこそが重要なヒントだったのです。
「そうか、商品以外の要素でも決まることがあるのか!」という発見がありました。
実はそのお客様は、職場のメンバーと一緒に仕事していて面白くないという不満があったのです。

起業当時は営業しても門前払いの日々でした。
1日100件コールしてアポ1件、やっと訪問しても次につながらない。
今だから言えますが「ちょうど御社の近くまで来ていまして、立ち寄ってご挨拶できませんか?」という必死の営業トークもやっていました。
そんな中、初受注のお客様からの「一言」が全てを変えました。

それから私は、商品を売るのではなく「一緒に仕事したら楽しそう」と感じていただくことに集中しました。
私はお客様に「今まで仕事していて一番楽しかった体験」を聞くようになり、徐々に情報が溜まっていきました。
商談でいかに「楽しさの予感」を感じていただけるかが勝負です。
そのうち「一緒に仕事したら楽しそう」という理由で、もう1件受注しました。

こうなると、営業活動で頑張るポイントがクリアになりますし、やればやるほど自信が深まっていきます。
今まで、「商品を提案して買っていただく」と考えていた世界観は完全にひっくり返りました。
お客様は自分の予想とは違った理由で購買を判断しています。
その理由は、お客様に聞いた方が早いし、正確です。

初受注までの高い壁をどう乗り越えるか?

このように初受注ができれば「はずみ」がつきますが、多くの若手(特に新卒)営業がつまづくのは、「初受注までの高い壁」でしょう。 そこで、初受注までは受注までの段階をもう少し分解して、「小さな実験」の癖をつけることをお勧めします。
例えば、1件1件のコール、メール、トークの内容などです。

「数をこなしていれば、量がいつしか質に転化する」とはよく言われますが、何の考えもなしにただ数をこなすだけでは、精神的につらくなっていってしまいます。
そこで、例えばコールをするにしても、ちょっとずつ、違う言い方を試してみます。
メールなら、書き方を少しずつ変えて試してみるなど、とにかく実験するのです。

コール、メール、トークの内容など、色々と実験していると「ちょっとうまくいく」ときがあります。 
「コールの台詞を変えたらアポが取れた」「メールの書き方を変えたら返信がきた」など小さな成功があったら、それについてお客様との会話で聞いてみます。
「他にも沢山の営業がくると思うのですが、なぜリアクションくださったのですか?」

どんなときでも、お客様が”選ぶ”行為をするときには、裏に必ず何らかの理由や背景があります。
しかし、お客様はそれをいちいち営業に教えてくれるわけではありません。
これが営業の難しさの所以です。
そのため、「選ばれた瞬間」を捉えて、その裏にある理由や背景を聞く癖をつけましょう。
そうすると、営業としてやることがクリアになります。

好奇心を育て、営業を楽しむ

「発見する楽しさ」を体感したら、営業で生じる”壁”の乗り越え方が見えてきます。
すると次第に、モチベーションを気にせずとも、営業に没頭するようになるのです。
人間は、本来「発見」が大好きな生き物です。
それゆえ、他の動物と違って独自の進化をし、文明を築いてきました。
ぜひ好奇心を育てて、営業を楽しんでほしいと思います。

今回お話した内容は、今まで私が出会ってきたたくさんのお客様が教えてくださったことです。
私はお客様にとても恵まれており、もう10年以上のお付き合いが続いている方が何人もいます。
今も毎日、大事なことはお客様から教えていただいているのです。

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