多くの営業組織では「失注報告」の際、メンバーから正しい情報があがってきません。
原因として考えられるポイントは3つあります。
①上司が”なぜ”で聞いてしまう
②「失注」のときだけ詳しい報告を求める
③失注が部下の責任になっている
失注にまつわる正しい情報を得るためには、この①②③に注意してマネジャーが部下に確認する必要があります。
今回はこの3つの原因について、ひとつずつ考えていきましょう。
正しい情報が上がらない3つの原因
①上司が”なぜ”で聞いてしまう
案件を失注した際、「なぜ失注したのか?」と上司から聞くことがあると思います。
しかし「なぜ」と聞かれたメンバーは、「自分の責任ではない(しょうがなかった)」ということを示したくなります。
その結果、大事な情報が隠れてしまったり歪んでしまったりするのです。
そうならないよう、上司はまず報告に感謝を示した上で、「理由」ではなく「事実」を確認するべきです。
失注報告を受けた上司は、まず「報告ありがとう。お客様からの連絡は電話だった?それともメール?」と質問してみましょう。
これならメンバーも「事実」で答えやすいためです。
もし「電話で連絡いただきました」という返答であれば、続けて上司は「なるほど。お電話では、何という台詞だったの?」と聞きます。
ここでは、台詞の”事実”を確認することが重要です。
台詞の”事実”がわかったら、次に「そういうことなのね。ちなみに、他にも何かお客様がおっしゃっていたことはあった?」と確認します。
この、「他にも」が重要で、意外とこの部分に大事な情報が入っていることが多いです。
このようにして、まずはお客様からの失注連絡について、台詞の”事実”をしっかり把握します。
台詞の”事実”を確認したら、次に”できごとの流れ”を確認します。
その判断に影響を与えていたのは上司の一言なのか、会議での誰かの発言なのか、それとも他社のプレゼンによるものなのか。
このように、台詞の事実からスタートし、できごとの流れを追いかけていけば「なぜ失注したのか」が見えてきます。
そして、実は次の質問が重要です。
「もし仮に、時間を巻き戻したとして、この案件を絶対に受注することを狙うなら、いつの時点の行動を変える?」と聞きます。
返ってくる答えによって、真の原因が何だったかがわかります。
メンバー本人も問いに答えていくうちに、「こうすれば受注できたんですね…」と発見に繋がったりします。
②「失注」のときだけ詳しい報告を求める
受注・失注に関わらず、決着案件の振り返りは、学びの宝庫です。
報告を受ける際に”事実”から確認していくことで、正しい原因を把握でき、本人にも気づきが生まれます。
当然、「受注案件」についてもこうして振り返りをすることの学習効果は高いです。
当社では、失注の振り返りに対して、受注の振り返りは3倍以上の時間をかけています。
なぜ、失注よりも受注の振り返りを重視するのか?
それは「再現性」を上げるためです。
失注を詳しく責めても、メンバーは「うわー、憂鬱。責められるのは嫌だ…」となってしまいます。
一方、受注を掘り下げるとメンバーは嬉しいですし、また繰り返したくなります。
また、成功要因を言語化してあげることで、本人にとっての助けにもなります。
失注の原因が正しく把握できれば、「メンバーがいつの時点でどう行動を変えたら受注になっていたか」がクリアになります。
それは裏を返すと、「上司がどう介入すれば、失注を防げたか?」が明らかになることでもあります。
上司が介入すれば防げた失注は、部下の責任ではないのです。
③失注が部下の責任になっている
失注報告を受けた多くの上司は、「部下の成長のために(悔しい体験を繰り返させないために)」よかれと思って「なぜ?」で聞いてしまいます。
これは「原因を解決してあげたい」という心理のためですが、原因は部下にはないため、これが逆に仇になっています。
「なぜ?」の矢印は上司である自分に向けることにし、メンバーには”事実”の確認から入りましょう。