「お客様に予算や競合状況など質問したいが、良い言い回しがわからない」
「聞くことを躊躇してしまう」
このような悩みを抱える若手営業の方に、お勧めの”質問力の鍛え方”が5つあります。
①1軍・2軍・3軍ノート
②楽勝・惨敗案件に注目
③マッサージ師のごとく
④場外戦ルートを作る
⑤期間限定キャンペーン
今回は、この5つについて、お話しします。
質問力の鍛え方
①1軍・2軍・3軍ノート
まずノートの真ん中に線を引き、左右に二分割します。
例えば「予算がうまく聞けない」といった壁にぶつかったら、ノートの左側にその壁を書きます。
そして右側に、自分が思いつく質問の台詞を箇条書きで書いていきます。
もしアイデアが思いつかなければ、「営業 予算 質問 コツ」などで検索いてみましょう。
そして、ノートの右側に台詞(言い回し)をたくさん書いていき、ランクをつけます。
3軍:まだ試したことのない質問
2軍:試したことがあるが、うまくいく確率は50%ぐらい
1軍:ほぼテッパンで聞き出せる
あとは、先輩の商談に同行したときなど、良い言い回しがあったらノートに追加していきます。
※私自身が、当時のノートをもとに書いた本がこちらです。
オブジェクトハンドリング集のようになっていますが、言い回しを1000個書いていますので、ショートカットしたい方はご覧ください
②楽勝・惨敗案件に注目
書籍『無敗営業』でおなじみ、案件を難易度で3段階定義します。
楽勝:案件発生段階でほぼ受注が見える。自社のファンからの依頼など
接戦:どちらに転ぶかわからない。相見積もりコンペなど
惨敗:どう頑張っても受注が難しい。他社のファンなど
ここで注目するのは「楽勝」と「惨敗」です。
接戦案件で新しいことを試すのは怖いと思います。
1軍・2軍・3軍ノートでいうと、1軍のネタで勝負せざるを得ません。
そこで、質問の幅を広げるためには「どうやっても勝率が変わらない」楽勝と惨敗の案件に注目するのがおすすめです。
楽勝案件のお客様では、3軍の質問でも「試しに聞いてみる」ことができます。
そして意外と盲点なのが、惨敗案件のお客様です。
皆さん、勝ち目がない商談では途中から諦めてエネルギーレベルを落とすと思います。
しかし、それはとてももったいないことです。
もしお客様が競合のファンだった場合、「他社の情報」を根こそぎ聞くチャンスだからです。
他社のどこを気に入っているのか、何が良くて評価されているのか。
どんどん聞いていきましょう。
私は15年前、起業直後で業界の先駆者に挑んだことがあります。
ターゲットの大企業では、特定の競合がシェアを占めていました。
いくら提案しても、すぐには取引が開きません。
そこでお客様に「どこを気に入っているのか?」と毎回聞きました。
お客様は他社ファンなので、ポイントがたくさん出てきました。
惨敗案件で競合ファンのお客様に「他社が評価されているポイント」をヒアリングしたら、最後に投げる質問があります。
「ちなみに、その会社様に対する満足度は、100点満点で言うと何点ぐらいですか?」
ここで100点という答えは滅多になく、88点や92点などの答えが返ってきました。
惨敗案件と言えども「競合が100点満点ではない」ことを聞いたら、そこからが勝負です。
92点だったら「残りの8点は何なのか」徹底的に深堀りします。
そして、残り8点の正体がわかったらダメ押しの質問で、「あと、何があったら御社の120点までいきますか?」と聞きます。
私は、この「100点質問」「120点質問」を惨敗案件で1年間聞き続けて、当初はまったく勝てなかった競合に関する情報を蓄積していきました。
1年後、反撃開始です。
狙っていた業界では、上位企業に対するシェアをほぼひっくり返すことに成功しました。
まとめますと、
●楽勝案件
3軍の質問でもお客様がリアクションを示してくれるため、たくさんトライできる。
2軍や1軍の質問ストックが増える。
●惨敗案件
ダメ元で「何が壁で受注できないのか」を詳しく聞いて情報収集ができる。
さて、ここまできたら「接戦」における質問の幅を広げに行きます。
③マッサージ師のごとく
「突っ込んで聞きすぎること」を懸念する営業の方がいます。
そこで思い出していただきたいのは、”マッサージ師”の例えです。
マッサージ師は、開始後の数分で「痛くないですか?」「どこがこっていますか?」と聞き、途中でも適宜、ツボを外していないかを確認しながら施術していきます。
「痛くないですか?」は、営業で言うと「こんなところまで聞いてしまって大丈夫ですか?」
「どこがこっていますか?」は、営業で言うと「私が聞いているポイントは、ズレていないですか?」
これを都度確認しながら商談すればいいのですが、なぜか聞かない営業が多いのです。
お客様に都度確認しながらでないと、良いマッサージはできません。
それと同様に、お客様に都度確認していくことで、営業においても相手のNGラインを確認でき、ズレていない商談ができます。
皆さん、マッサージ師がきちんと確認してくれた方が嬉しいですよね?
④場外戦ルートを作る
質問の言い回しがある程度できるようになったら、次の悩みは「相手が忙しいときや商談時間が短いとき、十分なヒアリングをできる時間がない」というものです。
慌てて、つい「伝えること」「話すこと」がメインになりがちです。
しかし、相手のことを理解せず慌てて行う説明は、お客様に刺さりません。
「相手が忙しいときや商談時間が短いとき」は、1回の商談時間内に慌てて質問や説明を詰め込むより、「この営業は他の営業とレベルが違う」と思ってもらうことに全力を注ぎます。
ただし、それは超人的スキルではありません。
ズレないように「相手の意図を汲み取る姿勢」を示すだけなのです。
特に新規の場合、お客様が忙しそうに振る舞ったり、「手短に」などと促してくる時は、「ガッカリ営業に時間を割かれたくない」という動機が裏にあります。
実際に忙しいこともありますが、「わかってくれる営業」と認識してもらえたら、商談後にも電話や再訪問などの機会がいただけます。
「相手が担当者でなく、決裁者(特に経営者クラス)の場合、どうやって場外戦に持ち込むのですか?」という質問もいただくことがあります。
その場合はまず、決裁者の判断基準に関する情報を、担当者経由で予め聞いておきます。
※こちらについては、前回の記事をご参照ください。(https://www.torix-corp.com/blog20210409/)
次に重要なのは、経営者とやり取りする場外戦のコツ、「時間帯×コミュニケーションチャネル」です。
例えば、大企業役員は「早朝×メール」や「ランチ会食直後×電話」など、ご本人にとってやり取りしやすいポイントがあります。
そこで、「一本連絡してみよう」と思っていただける布石を投げておきます。
そして、いざ経営者に直接質問する時は、オープンクエスチョンで投げないことが大事です。
1日に数十〜数百回の意思決定をしている経営者に「どう思われましたか?」のように投げても、相手の負担を増やすだけになってしまいます。
そこで選択肢をつけて「AとBとではどちらに近いですか?」のように聞きます。
これは、メールでも口頭でも同じです。
⑤期間限定キャンペーン
最後に、ここまで紹介したやり方を「全部やってみよう」と意気込むより、「今週は、予算と競合を聞くための1軍・2軍・3軍ノートを作るぞ」のように、期間を決めて取り組むのがお勧めです。
そして、その期間においては、かなり極端にやってみてください。
もしそれがハマらなかったら、別のやり方を試せばよいのです。
質問の言い回しは「無意識レベルで、スッと出てくる」必要があります。
そのために、色々な試行錯誤を経ながら、身体に覚え込ませていきます。
そして何かを試す時には、「思い切り極端に」やることを推奨します。
そのかわり、うまくいかなければ「思い切りよく他のやり方に移る」潔さも大事です。