法人営業において、「失注」と「無駄な資料作成」を激減させるために「決裁者以外へ送る資料には表紙をつけないこと」をお勧めします。
なぜなら、資料に表紙をつけると、お客様は保守的に判断する心理になりやすく、また一方で営業は良い仕事したつもりになってしまいがちだからです。
表紙のない資料で、お客様の反応を見る癖をつけていきましょう。
危険なお客様の「ジャッジモード」
お客様担当者としては、変な提案を稟議にあげられないので、自身で吟味をして、上にあげるかどうかを判断します。
この時、資料に表紙がついていると「さてさて、上にあげるかどうか判断しなければ」という気持ちになりがちです。
しかし営業としては、そう簡単にお客様を「ジャッジするモード」にさせてはいけないのです。
もしお客様担当者が受け取った資料に表紙がついていなかったら、担当者は「これは正式提案ではないんだな」と受け取るため、まだジャッジモードになりません。
その状態で、提案に対するフィードバックや、担当者自身のアイデアをもらうようにします。
担当者も、正式提案ではない段階なら、色々と意見が言いやすいはずです。
表紙のない資料に、お客様担当者からフィードバックやアイデアをもらったら、「ありがとうございます!」と、資料をバージョンアップして当日か翌日に再送します。
ここでももちろん、まだ表紙はつけません。
そして「フィードバックをもらう→提案資料に加筆→再送」のサイクルをぐるぐると素早く回すと、「顧客の意見に耳を傾けてくる営業だ」と感じ、その度に担当者の納得感は上昇し、提案内容に「自分ごと感」が増してきます。
するとあるタイミングで、「これ、稟議にあげたいので…」と、担当者からの相談が営業にくるようになります。
この一連のプロセスは、資料に表紙がついていると成り立ちにくいのです。
二人三脚の状態を作り出す
もし、資料の表紙に「●●株式会社御中 XXXのご提案」と書いてある場合、お客様は無意識に、「自分が判断すべき提案内容がこの中に見積もりつきで書かれているのだろう」と想像します。
結果、保守的に判断するモードになりがちです。
表紙がついていない資料は「未完成」であり、「これからブラッシュアップしていく余地がある」ように感じるため、お客様担当者は「ジャッジする」心理になりにくく、自分の意見を足したり、営業に対して質問をしたくなるものです。
こうすると、お客様担当者と二人三脚の状態を作りやすくなります。
特に最近は、お客様の課題がどんどん複雑化しています。
もはや経営陣は現場のことがわからないので、稟議を判断するときは、「担当者がどれだけ本気でやりたいと思っているか」を重視するケースが多いのです。
そのため、経営陣から現場の担当者に「どう?」と聞かれた時、担当者が強い意欲で推してくれるかがとても重要です。
お客様担当者にいきなり「表紙つきの提案資料」を出すと、担当者が自分で判断するのが難しいという理由で、あまり深く考えずに上層部に判断を仰いでしまいます。
その場合、往々にして提案は通りません。
「表紙のない提案資料をお客様と二人三脚で磨き上げる」というプロセスこそが、受注率を爆発的に上げると言えます。
提案書作成は「仕事」ではない
逆に営業担当者としても、表紙つき提案資料をお客様に出すと「社内で検討します」と言われ、真剣に検討されていないにもかかわらず、そのまま待ってしまいがちです。
提案書作成を仕事と捉えてしまう営業の悲劇は、こうして生まれます。
そのページがお客様の判断に影響を与えるかどうか、お客様の判断ポイントを詳しく知らないまま、提案書作成に時間をかけてしまうことで、多くのムダが生まれます。
さらに営業マネジャーが提案資料を丁寧にレビューしていたりすると、その悲劇は倍増です。
ほとんどの提案では、「資料」が決定打になることはありません。
「失注」や「無駄な資料作成」を激減させることができる、「表紙なし提案資料」について、お話ししました。
それでも、「表紙をつけざるを得ない場合」があると思います。
その場合の方法については、次回ご紹介していきます。