2024.06.07

勝率8割の引っ越し会社

普段の営業活動の中で、お客様から他社と価格や提案内容などを比べられ、受注を勝ち取ることができることもあれば、残念ながら今回は負けてしまった…という体験を、日々されていると思います。

他社との比較があった際、勝てるのはどんな営業の方なのか?
今回は、私がプライベートで出会った営業の方のお話をさせていただきます。

以前、プライベートで引っ越しをした際、妻が引っ越しの見積サイトからいくつかの会社へ問い合わせをしました。

経験がある方も多いかもしれませんが、そういった問い合わせをすると、かなりの件数の電話がかかってくることになります。
私は普段なかなか縁が無い引っ越しの世界に興味を持ち、3社ほどの引っ越し業者の方に実際にお会いして、営業を受けてみることにしました。

引っ越し業界というのは、非常に価格にシビアな世界と言えます。
たくさんの業者を比べる見積サイトがあるくらいなので、引っ越しを考えている利用者はまず何社かに問い合わせをし、その中で1番安いところを選ぶというケースが多いと思います。

そのため、私は「引っ越しは価格で決まりがちである」と考えていました。
しかし実際に営業を受けてみると、必ずしもそうではなさそうだということに気がつきました。

引っ越し業界のスタンダードな営業

まず、1社目です。
自宅へいらっしゃるなり、段ボールの箱の数と荷物の大きさの確認をし、すぐに見積を出されました。
ここで出していただいた見積もりによって、「引っ越しにはこのくらいの金額がかかるんだな」という目安ができました。


そして2社目。
こちらの営業の方も、1社目の方と同じように自宅へいらっしゃるとすぐに段ボールの大きさと箱の数を質問され、その場で見積を出されました。

この時点で私は、引っ越し業界というのは荷物の大きさと箱の数で値段が変わるということに気がつき、「同じ条件で算定されるのであれば、なるべく安いところで頼むのが自然なんだろうな」と思いました。

他社とは違うアプローチ

しかし、3社目の営業の方が来たときに、その認識が変わる体験がありました。
その方が自宅へ来られたときの最初の質問は、「私は何社目ですか?」というものでした。
何社目か、という質問は、裏の意味を考えてみると「何社かの間で比較をされている」ということを自覚している質問だということが伺えます。

そこからの会話は次のように進みました。


「御社が3社目ですね」
「では見積はすでに取られましたか?」
「見積もいただきました」
「見積をご覧になってみていかがでした?」
「思ったより安いなというところと、そこそこするなというところがありました。意外と見積って開きがあるんですね」


そこまで会話したところで、その営業の方は、「ちょっと家の中を見させていただけますか?」とおっしゃいました。


家の中はある程度荷造りされてはいたものの、部屋の様子もまだわかる程度だったので、見ていただくのもいいかなと思い、私はその営業の方と一緒に部屋の中を歩きました。
部屋を見て回っている間、「ここにはどんなものが置かれていたんですか?」や、私の趣味の話など、色々と質問をしてこられました。

その中で、妻の趣味についてもいろいろと聞いてこられ、

「ではなるべく壊さないように運んだ方がいい大切なものもありますね」
「食器棚についてはお母様からの贈り物で、中に入っているものも大事に運んだ方が良いですね」
という風に、私にさまざまな引っ越しのアドバイスをしてこられました。

そういった会話もあり、3社目の営業の方と話をしているうちに、「こういうものは大切に運ばなくちゃいけないな」とか、「こういうものは壊したくないな」という想いが浮かんできました。

それらの荷物に対してのリスク、運び方に気を付けないといけない点が私自身のなかでわかってきたのです。

そして、その営業の方に「うちで扱っている段ボールでこういうものを使うと、壊さずに運ぶことが出来ますよ」という風に提案され、妻も私も「この段ボールいいね」ということになりました。

 

しかし私は、その特殊な段ボールの片付けについて気になったので、「普通の段ボールと違って片付けるのが大変じゃないですか?」と質問をしました。

するとその営業の方は「この段ボール、片付けが実はものすごく楽なんです」「荷ほどきの時間がかえって短縮できますよ」とおっしゃり、後片付けにかかる時間が短くなる、というポイントをアピールしてこられました。

ここまでのやり取りを通じて、「なるべく壊したくない」「安全に運んでほしい」「荷ほどきに時間をかけたくない」など、なんとなく意識に中にあったものの、はっきりと見えていなかったポイントが明確になってきました。
つまり、この営業の方の質問や会話によって、引っ越しにおいて価格以外に大事にしたい点が浮かんで来たのです。

顧客に価値訴求する

その「価格以外に大事にしたい点」が浮かんできたことで、前に営業にいらした2社は段ボールの箱の数と荷物の大きさの確認だけだったので、安全性や後片付けといったところは大切にしてもらえないだろうな、という風に感じてしまいました。

 

3社目の営業の方のように、単純な価格だけではなく、「安全に運んでもらえる」「片付けが楽である」というポイントについて話して来られると、営業を受けるこちら側としても自然と価格以外のところで考えるようになってきます。
その結果、提示してこられる価格が多少高くても「この会社さんに頼みたいな」という風に思いました。


さらに、3社目の引っ越し会社の営業の方に「ちなみに勝率は大体何割ですか?」と聞いてみると、「8割を超えています」という答えが返ってきました。


想像してはいましたが、本当にたくさんの引っ越し業者が存在し、価格見積サイトがある世界で勝率8割を超える営業というのは、質問を混じえながらしっかりと会話(ヒアリング)をし、お客様自身もなんとなくしか意識していなかったようなポイントを浮き上がらせ、そこで生まれたネックがあれば、それに対する解決方法をきちんと提示することで解消し、価格以外のポイントを示した上で受注を勝ち取る。

なるほど、やはりそういうものなのだな、と感じた体験でした。

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