私は日経課長塾で一般の方々に対して、提案や営業力の講座をやっています。そこでいろんな会社から来られる方々へ、私がお客様役になり価格交渉を仕掛ける、という営業シミュレーションを毎日のようにやっているのですが、先日とてもびっくりしたことがありました。 お客様役の私が「ちょっと高いですね」と言うと、ほぼ全員が即座に値下げをしてきてくださったんです。お客様の立場からしたら安く買えるのでありがたいんですが、もし営業の立場でこういう行動が身についてしまうと、値下げなど「価格の安さ」を武器にした売り方しかできなくなってしまう。これは非常に怖いことです。
値段交渉に応じる前に絶対してほしいこと
価格交渉に応じる前に絶対これだけはしてほしい質問があります。それは「価格以外の順位を聞く」ということです。 例えば、お客様から「高いですね」と言われたとします。この時、ほとんどの方が瞬間的に「じゃあ安くします」とか「いくらだったらいいんでしょうか?」ということを聞いてしまいます。しかしそうではなく、まずこんな質問をしてみましょう。
★コンペの場合 「あ、高く感じられるということなんですね。価格の話で今おっしゃったことはわかるんですけど、ちょっと参考までに、いったん価格を置いておくとして、価格以外ではどうなんでしょうか。当社が一番なんでしょうか、他の会社さんが上なんでしょうか?」
★コンペでない場合 「価格という要素を除いたら、内容としてはこれはやってみたい、ということで社内でお話を通せそうだとお感じなんでしょうか?」
このように、価格以外においてはほぼ決定の水準を満たしているのかどうかを聞いてみることによって、後の交渉材料が全く変わってきます。もしこれを掴まずに持ち帰ってしまうと、とにかく安くすることで受注しよう、という風になってしまいますよね。
値下げ以外の選択肢が増える
さて仮に、価格以外の順位を聞いて二番目だったとしましょう。もう一社、価格以外の要素でうちよりもいい競合がある。ということは、価格以外でまだカバーしなくてはいけない要素があるということですね。そしてそこを満たすことができれば、逆に価格が高くても受注できるかもしれない。価格以外の順序を聞かないということは、この可能性をつぶしてしまうということなのです。 つまり、全部を価格で解決するというスタンスになってしまうと安くするしかできないのですが、価格以外の順位を聞いてみれば、その返答によってはこちらの選択肢が増えるということです。 場合によっては、価格以外の要素をカバーすることで結果的にそのままの価格で受注できることもあります。
今後、もしお客様から「ちょっと高いですね」など価格交渉を持ちかけられた時には、いきなり価格の話をするのではなく、いったんその話は置いておいて「価格以外ではどうなんでしょうか?」とぜひ聞いてみてくだい。 コンペの場合には、価格以外の要素における順位はうちが一番なのか?違った要素での順番がわかれば、価格で単独一位になるまで価格を安くする以外にやることがあります。 そしてコンペじゃなくとも、価格以外では決定の水準を満たしているのかを確認し、値引きは本当に最後の最後のところにずらしていっていただきたいのです。これによって営業として非常に選択肢が増えますし、「安さだけが売りじゃないですよ」というポジションを取ることもできます。
価格交渉になったら、価格以外の順位を聞かずして値下げをしない。ぜひこれを念頭に置いて提案に臨んでいただければと思います。