質問力を駆使して、お客様の真意を探る
質問力を活用して営業活動をされている方々は、受注できたら嬉しくなって、成功の要因をお客様に聞くと思います。
「なんでうちに発注していただけたのでしょうか?」 ただそこで返ってくる答えというのは「提案が良かったから」「対応が早かったから」など抽象的なものが多く、それを次の活動に活かすのはなかなか難しいと思います。 もっと具体的で貴重な声を受注の理由として集めたいですよね。
お客様が選んでいるポイント
私がこういうことに気づくきっかけというのは実は結構さかのぼるんですが、営業活動を始めてまだ経験がない時、本当に始めから数えて、二社か三社か…そのくらい昔のことです。 ある時、結構無理かもしれないなという提案が通った時に、会食の場でお客様と飲みながら、「今回は、こう言っちゃなんですが、うちみたいな会社にするのは結構勇気のある決断だったんじゃないですか?」と聞いちゃったんです。 受注したばっかりでそんなことを聞いちゃっていいのかな、と、今思うとすごくリスクがあったかもしれないなと思うんですけど、実はこれがものすごく気づきのきっかけになりました。
ただ単純に「なんでうちに発注してくれたんですか?」と聞くのではなく、「当社案と対立案、もう一社さんと長い間ことやっていたわけですから、もう一社さんの方が安心感があったんじゃないですか?」と聞いてみました。「うちみたいなできたばっかりの会社に発注するのって、そんな大事な人材を預けるのは、ちょっと勇気がいったんじゃないですか?」恐る恐るこう聞いたんです。 なんでそのような思い切った決断をしてくれたんだろうか、と気になったんですよね。そこで返ってきた答えは凄く意外でした。
そのお客様は前にやってもらってた会社に対して不満があったけれども、あまり言えなかったのだそうです。実はこういうことをやって欲しかったのにやってくれなかったとか、こういうところをあまり快く思っていなかったと。それが根っこにあったのだけれども、今回私が提案した時は、その不満に思っていた要素がなく、なんとなくこっちの方がいいな、と思ったとのことでした。 そこで私はそれを聞いてどう思ったかというと…提案が良かったわけじゃないんだ、と軽くショックを覚えました。でもよく考えると、お客様が選んでいるポイントと自分のアピールしてることって、少し違ったんだと思ったわけなんです。
リアルで生々しい声が貴重なフィードバックに
それ以来、お客様から受注をいただくたびに「もう片方の選択肢の方がいい選択かもしれない、その悩ましさの中で、なんでうちに発注していただいたのでしょうか?」「既存をひっくり返す時には、もう一社さんの方がいい提案をされたと思う。そんな可能性があったにもかかわらずなんでうちなんでしょうか?既存の方がわかってるでしょ。詳しいでしょ。うち初めてですよ。なんでうちなんですか?」と聞くようにしました。そこまで踏み込んで返ってきた答えって凄く具体的なんですよね。本当にリアルで生々しい声が上がってくる。
ある時は、私よりも前に、凄く高明な大学教授とか、先生たち三人くらいと会ったベンチャー企業の経営者が仕事を発注してくださったのですが、私は四人目として営業しに行ったんですけれども、前の三人の先生たちは、「御社はこのようなことが課題だ。ここがだめだ」と結構けちょんけちょんに言ってきて、その経営者の方はそこが頭にきたらしいのです。 その時私は、三人の人たちがそんなことをやっていたとつゆ知らず、一生懸命経営者のいうことをノートに書いていて、なるほどと熱心に質問をして、ということをやっていたのですが、その傾聴の姿勢がよかった、実は提案書を書く前に決まっていたと。後で聞いてみるとこんな風に、自分の気づいてないところで、お客さまが意思決定をしている。この事実に気づくことが凄く大事だなと思うんです。
私はたまたま、お客様が思い切って意思決定したな、という時にうっかり聞いてしまったわけなんですが、そこからは意識的に聞くようにしました。例えば競合が相手じゃない時も、「内製でやるという選択肢があって、そっちの方がノウハウが貯まるというのが社内にあったんじゃないですか」「なんであえて外部の会社に金を払ったんでしょうか?」とそういう風に聞いたり、「今やらなくてもいいという社内の声もあったんじゃないんですか?なんで今、リスクをとって投資をするという判断をされたんでしょうか?」と聞いたり。そういうことを踏み込んで聞いてみると、そこで出てくる答えというのは凄く自分の営業活動の提案に対して、貴重なフィードバックとなりました。 なぜかというと、自分がこうだ!とアピールしてもお客様は意外と違うポイントで選んでいて、そのポイントに対する情報を詳しく知るというのが凄く大事だからです。
選ばれた理由を聞くコツ
みなさんもぜひ試してみてください。 結構関係がしっかりとできていて、そういうことを聞いても教えてくれそうだなというお客様を、一社や二社じゃなくもっとたくさんの会社、最低三社を選んで聞いてみてください。そこで出てくる答えの中に、もしかしたら三社共通のものが出てくるかもしれない。複数の会社が同じ理由で選んでくれているとしたら、これは相当はっきりした自社の強みだと思うんです。自分の都合として押し出すんじゃなく、お客様からいただいた声として、強みとしてとらえてもらっているんだなということです。 これってだいぶ違ってきますよね。 なので、ぜひ選ばれた理由というのを聞いてみていただきたいんです。聞く時のコツですが、対立案との間で、ちょっとだけ対立案持ち上げて、ちょっとだけ当社を下げて、それで「その悩ましい選択の中で、なんで選ばれたのでしょうか?」という聞き方にしてみてください。すると、凄くいい答えが返ってきて、それが自分にとって貴重な材料になると思います。