営業に限らずまずやってみてから考える
営業に限らず、「人生、常に実験」というのは、私自身が最も大事にしている考え方のうちの1つです。
私は、今まで人生の大きな決断があったとき、損得や合理性をきちんと検討して意志決定するというより、直観に身を任せて生きてきました。
例えば、25歳のときに初めて独立起業したときも、一緒にやりましょうという話がでて、30秒もかからず決めてしまいました。
私は「とりあえずやってみて、うまくいかないことがあったら、そうなってから考えよう」という指針で物事を決めます。もちろんそれが原因で、失敗や反省をすることもたくさんあります。ただ、早く決めてやってみることで、うまくいくにせよいかないにせよ、そこから学ぶことが多いのです。
起業の例を出しましたが、このようなシチュエーションでは、決断の前にいろいろシミュレーションする方が多いと思います。
独立するにあたって、お金はどれくらい必要なのか、自分にとって売る商材はあるのか、お客さんはいるのか、仲間はいるのか…などなど、考え始めたらキリがないですよね。
もちろん、関係者が増えてくれば、周囲にかかる負担や迷惑は考慮する必要がありますから、ときには慎重になるべきこともあるかもしれません。
しかし、リスクの範囲が限定的なのであれば、やってみた結果どうなのかを早く検証できた方が、特に、ビジネスにおいては有益なことが多いと考えます。
特に、こと営業やお客様に対する提案などにおいては、この「常に実験」というスタンスはものすごくパワフルな結果をもたらしてくれます。
どのくらい試す回数が多いかが勝負
以前、「激怒されるまで質問する」というお話をしました。
多くの営業は「これ以上質問したら怒られる」という基準を、実際に怒られるラインより相当手前に(自分自身の思い込みで)引いているので、ほとんどの方は躊躇して質問するのを止めてしまっていますよ、という内容です。
これも、1回怒られたらそれはそれで次考えればいいじゃないか、という姿勢でやってみることで、見える世界がガラッと変わってきます。
実際怒られるまで質問してみようと思ってみても、とりあえず試してみて、突っ込んで聞いてみよう、そして突っ込んでみたら意外と怒られることはなく「あ、思いのほか、たくさんのことを聞けたな」となります。
この「思いのほか、たくさんのことを聞けたな」という感触が「気づき」につながるわけですが、気づきを得るまでの時間が、常に実験モードで人生を回していると、ものすごく早いのです。
何か1つ「やってみたらうまく行ったな」という発見があり、そこに紐付く成功体験があると、あとは試す回数の多さが勝負になってきます。
私がこのBlogで色々お話していることは、自分で実際試してみて、あるいはやってみてうまくいったこと(そして、今も続けていること)です。
それらは「やろうかやるまいか…うーん、考えよう」という風にやってみたというよりは、
(あれこれ悩むより)まずやってみる
↓
やってみると結果が出る
↓
その結果をもとに次を改善する
↓
そしてまたやってみる
↓
やってみて結果が出る
↓
その結果をもとに次に改善する…
このサイクルを、早く回し続けることによって生まれているのです。
営業における「やってみたことの結果」は、お客様を通してしか判断できない
私は商談や打ち合わせを、多いときで1日に15件ぐらい入れます。
また、研修は年間200件、コンサルティングのセッションは年間800件ぐらいやっています。
「これをやってみて何が起こるかな」という、試して検証するサイクルをなるべく多く、そして速く回していくことを大事にしています。
ときには1日の中で、似たような場面の会議を異なるお客様で経験することになりますが、研修にしろ打ち合わせにしろ、同じように進めることは1回もありません。
PDCAは1日単位で回すのではなく、30分単位で回しています。
もちろん、「1回1回の間を空けて、もっとゆっくり、考えながらやる」という選択もあります。
実際、考える時間も確かに必要です。私は、平日は早朝に毎日1〜2時間ぐらい、そして週に1回は土曜日の午前中いっぱいを使って、じっくり考える時間を取っています。
ただ、「考える時間」を確保したとしても、「たくさん試してみた回数」がある方が、やはり気づきが多いのです。
毎日出会うビジネスパーソンの方々の中には、やはり情報がないと決められない、もうちょっとじっくり考えたい、うまくいくかどうかを検討してから行動を変えたい、という方が多いです。
私は、そのスタンス自体を全て否定するつもりはありません。
ただ、相手(お客様)があって、結果が確実にもたらされるかどうか分からない、という類の仕事をされている方、特に営業職の方に対しては、ある限られたリスクにおいて、実験という言葉をキーワードに色々試してみるスタンスを強くお勧めしたいのです。
営業というのは「営業」と「お客様」に立場が分かれる以上、自分がやったことがどうだったのかは、相手を通してしか判断できません。
よく「営業って行動量が大事だよね」ということが言われます。
なぜ行動量が大事かというと、お客様に判断されて自分の行動を改善するという経験を、どのくらい沢山するかによって成果が全く変わってくるからです。
たくさん試すからこそ得られるものがある
実際、私がお会いしたことのあるハイパフォーマーの方々は、行動量が多い方がほとんどです。
行動量が多いといっても、気合や根性に基づく単純な精神論からの量でありません。
もちろん精神的なものも大事は大事なのですが、ハイパフォーマー営業はたくさん試すからこそ、多くの気づきを競合の営業よりもたくさん得ているのです。
例えば、1日に新規のテレアポを50回するとしても、多くの営業はあれこれ思い悩みながら電話した末に1件目のトークと10件目のトークが同じだったりしますが、ハイパフォーマーは躊躇することなくどんどん電話をかけていき、1件ごとにトークに少しずつ改善を加えて変えていくので、10件目のトークはガラッと変わったものになっていきます。
「たくさん試すからこそ得られるものがある」という世界観は、特に営業という職業に就かれている方や、営業組織において非常に大事な意味をもたらしてくれるのではないでしょうか。
私は今でも提案やプレゼンをすることがありますが、自分の経験上100%成功している負け知らずの方法があっても、最初から最後までまったく同じやり方でコンペを戦うことはありません。
必ず何か新しいことを試しています。
もし仮にそれで失注したとしても、新しいアプローチを試してみることの方が、長期的に見て優先順位が高いと考えているのです(とはいえ、7年以上の無敗が崩れるのは怖いですが・・・笑)。
このように、「人生、常に実験」のスタンスでまずやってみてそれから考え、PDCAを速く回していくことで得られたものがたくさんあります。
一方で、もし仮にすぐに決断せずにゆっくり考えていたら、今まで試した回数は劇的に減っていたはずです。
考えただけでとゾッとします。
ビジネスにおいては、たくさん試す中から、いろいろな結果をもとにした検証や改善を行なっていく、このインパクトは非常に強いのです。
「人生、常に実験」。
例えば営業していくにあたって、提案の中で「こうやってみたらどうか」「提案書をこう書いてみたらどうか」「今日はこういう風に喋ってみたらどうか」ということを1回1回変えてみて、それによって自分の行動にまたフィードバックしていき、成功確率をしっかりと上げていく。
これをぜひ、皆さんにおすすめしたいと思います。