法人営業において「無言」は強力な武器
営業、特に法人営業に関する本を読んだことのある方だったら、「クロージングの際には自分からあれこれ話すのではなく、無言のほうがいい」という話をご存知かもしれません。
お話することが大切である営業の現場において、この「無言」とはどういうことでしょうか。
「無言」というのは、「お客様に失礼にならないようにする」というのが前提として守られていれば、商談を有利に進めるにあたって非常に強力な武器になります。
営業の方が一生懸命説明してプッシュして「やりましょう」と迫るより、お客様が乗り気になって「やりましょう」と言ってくださった方が望ましいと思いませんか?
これは多くの営業の方が望んでいる展開だと思います
そのためには、こちらが話す割合を減らして、相手に話していただく割合を増やす必要があります。
しかし、営業をする際についつい話すぎてしまうという方が非常に多いのです。
【高橋の営業研究】無言はどのような効果をもたらすのか
私は昔、営業の現場において「無言チャレンジ」ということをやってみたことがあります。
お客様を前にして「自分が話したいのをぐっとこらえ、どのくらい無言でいられるか」ということにチャレンジするというものです。
たとえば、営業初回訪問の場合でみてみましょう。
名刺交換をしたあと、数秒間の無言の時間をつくってみると、お客様の反応はさまざまです。
「あれ、今日は何のアポだっけ・・・、何かいいこと説明してくださいね。で、御社の強みは何ですか?」というようなスタンスのお客様がいらっしゃいます。
一方、お客様ご自身のなかで課題や悩みが明確になっていて、「当社はこういうことで困っているんですよ」と、切り出してくださるお客様もいらっしゃいます。
無言チャレンジを重ねてみると、後者のほうが明らかにクロージング率が高いということがわかったのです。
お客様にお話をする際、冒頭で「本日はお時間いただきありがとうございます。まずは弊社の説明をさせていただきます。」と毎回同じように始めてしまうと、お客様がどちらのタイプかわからないまま商談を進めることになります。
そこで、さきほどの例ように、名刺交換の直後に数秒黙ってみると、お客様の熱量や本気度がリアルにわかります。
こちらが営業を始めずに無言でいると、お客様の熱量が低い場合は「え、えっと、今日はなんでしたっけ?」となります。
一方で、営業の方に相談したいことが明確なお客様は「今◯◯で悩んでおりまして」という切り出しをしてくださいます。
両者では、その後の商談の温度感がまったく異なります。
この無言チャレンジをしてみるまでは、お客様の温度感の違いを冒頭で感じることはできませんでした。
いろいろしゃべって、質問して、「これだったらいけるかもな」という感触を得るのが商談の後半になってしまっていたのです。
商談のスタートのタイミングからお客様の温度感を掴んでおけば、その後の展開がだいぶ進めやすくなりますので、どのタイミングで温度感を察知できるかは、重要なポイントなのです。
これはクロージングの際にも同じことが言えます。
クロージングの難易度が高い商談の場合は、焦ったり不安になったり、ついつい追加で話してしまいがちなのですが、どのくらいまで無言でいられるかをチャレンジするような感覚でやっていると、クロージングの「間」というものを徐々に掴んでいくことができます。
いつも一生懸命説明して説得してクロージングするという営業方法で進めていると、いつまでたってもクロージングの間を掴むことはできません。
法人営業において大切なことは見極め、行動を合わせるということ
「無言チャレンジ」を始めたばかりの時は、躊躇することもあるかもしれません。
「今日は無言チャレンジをするぞ」と自分に言い聞かせて、「XX秒くらい無言でいられたぞ」というようにカウントしてみてください。
もちろんお客様に失礼にならないようにすることが大前提ですが、そこでお客様が進んで話してくださるかどうかを見極め、それに自分の行動を合わせていくことができます。
無言でいることで、「相手が積極的に話してくださる」「前向きに進めてくださる」ということを実感することができるかと思います。
まずは、なるべくチャレンジしやすいお客様から始めてみるのが良いと思います。
自分がいきなりあれこれしゃべるのではなく、ちょっと黙るという勇気、「無言チャレンジ」をしてみてください。
そしてその反応を体感することで、自分の中で仮説を立て、そして検証していく、ということをぜひ試してみていただきたければと思います。