2024.06.04

法人営業 に使えるお客様の「認知的不協和」対策

法人営業に使える「認知的不協和」対策とは何か

法人営業において是非とも活用いただきたい心理学についてお伝えさせていただきます。

「認知的不協和」とは心理学の用語です。 専門家の方には怒られてしまうかもしれませんが、あえてざっくり言うと、「何か(A)と何か(B)で矛盾した認知があると、その状態に人は耐えられない。迷った結果、人は自分を正当化する形で腹落ちさせる」ということです。

例えば、(A)が「禁煙しなきゃ」、(B)が「タバコが吸いたい」。

(A)と(B)は矛盾していますね。でもこういう状況はよくあると思います。 タバコを吸っている人が、「禁煙しなきゃ、でもタバコが吸いたい」と。こんな時、ほとんどの人がどういう行動をとるかというと、そのままではいられないので、自分を正当化して腹落ちさせます。

「よし、目の前の一本で最後にしよう」

目の前の一本で最後にするというのは、(A)「禁煙しなきゃ」も満たすこともできるし、(B)「タバコが吸いたい」も満たすことができます。

人間は矛盾した認知が自分の中に二つあると、そのもやもやとした状態に耐えられなくなり、自分を正当化させる感じで腹落ちさせる性質があります。

法人営業において新規開拓が難しいワケ

これを、「営業 を受けるお客様」の場合で考えてみます。 例えば、新規で営業 が来たけれども、既存で発注している会社があるとします。どちらも「いい提案だな」と思っても、お客様はどちらか一方しか選べません。

これは悩みますね。でも、決めなくてはいけないので、認知的不協和からいいますと、お客様はそこで納得する理由を探すわけです。

こういう場合、言うまでもなく新規の方が断られる率が高いのですが、新規開拓が難しいと言われるのは、お客様にとっては新規に来た営業 に対して、言いやすい理由が存在しているからなのです。 「やっぱり既にお願いしている会社の方がよくわかってくれていて安心だから、そちらにお願いします。初めて来たあなたはごめんなさいね」と。

そうすれば自分の心は痛まないし、納得しやすいわけです。たとえどんなに新規でいい提案がきたとしても、既存が捨てがたい魅力を持っている中で、お客様はどちらかを取らなくてはいけません。自分を安心させる、腹落ちさせる落としどころがないと、人間は気持ち悪くなってしまうというので、「断る理由を作りやすい」新規に対して断ることが多いのです。

新規で営業 開拓する際、既存の取引先をひっくり返す時には、この構造をよく理解しておく必要があります。

法人営業において「捨てがたい選択肢」になる

先日、コンサルティング先の現場でこんなことがありました。 私がお客様役をやって色々な方に営業 をやっていただくシミュレーション、いわゆるロールプレイングの研修をやっていた時のことです。設定としては、コンペで、どこか1社しかお客様は選べない。このような競争状態です。

私が厳しいお客様役を演じていた時、どこかひとつの会社しか選べない状況で、ある受講生の方が商談の際にこんなことをおっしゃいました。 「なんとかうちの提案をお願いします!仮に今回ダメでも、次の提案はがんばります。御社とはいい付き合いを続けていきたいのです!」

とても誠実な営業 の方だったので、つい、ぽろっと出てしまったセリフだったと思うんですが、これをさっきの理論に当てはめるとどうでしょうか。「今回の提案がダメだったとしても、次また頑張りますので」ということを営業 の口から言ってしまうと、お客様は悩んだ時に、「次頑張ると言ってくれているのだから、今回選ばなくてもいいか」と、断りやすくなりますよね。

私はその営業 の方に、「今回ダメでも次はもっといい提案をします。頑張ります!という風に、今回断られることを正当化する材料を自分から出さない方がいいですよ」とフィードバックしました。

要は、自分の方を断りづらくしておかないといけない、ということです。どちらかしか選べないという場合に片方を断る際、自分を正当化するということが認知的不協和ですから、自分の側を断られやすくしないためにはどうするかということを考えておく必要があります。

法人営業 において「もし断られても次があったら頑張ります」などと言ったりしないということもそうですし、あるいは、「当社は値下げできますよ」といったように、自分の提案に対する魅力を下げる可能性を自ら示唆するのもおすすめできません。

「こちらの提案を諦めるのは惜しい」という材料を、必ず残しておく必要があります。

それは例えば、熱心さや執念深さみたいなものかもしれませんし、あるいは他の営業 が持ってない貴重な情報を持っていますよ、他の会社にはない貴重な実績がありますよ、などといったものかもしれません。要するに、「他を選んだらこちらの良さは得られませんよ」という材料を明示的にこちらから出すということです。そうすれば、自社側が捨てがたい選択肢になります。

法人営業 において何か断る材料が探しやすかったら、迷った時にお客様は断りやすい方を断るという心理が働くのです。

自社を断りやすくする材料を残しておかない

みなさんが普段の営業 活動をされる時に、自社の商品の特徴を伝えようとか、提案を良くしようとか、そういうことを考えられると思います。

その際に、ぜひ考えていただきたいのは、「自社を断りやすくする材料を残しておかない」ということです。さらに加えて、競合を断りやすくする材料を入れておくのです。

それは、競合にケチをつけよう、競合を貶めようということではなくて、例えば「競合が持ってるいいところは当社も同じようにできますよ」など、こういった材料を入れておくということです。

一般的に、競合と差別化しようとすると、「当社と競合は違いますよ」という形で、違いだけをアピールする提案をされる方が多いです。しかし、本当に違い「だけ」をアピールすると、迷った末に、こちらに断る材料があったら断られてしまう可能性があります。

そうではなく、「競合の良さは当社もやろうと思ったらできますよ」といった見せ方をしておきます。さらに当社には競合が持たない魅力を備えていれば、お客様が競合を断りやすくなるという展開になります。

提案の時、ストレートに自社の良さだけをアピールするだけではなく、お客様の側にはこの認知的不協和という心理があって、迷ったら自分を正当化する形で腹落ちさせるものであるということ、その理由作りのために不利な材料を残さない、有利な材料を作っておくことを意識する

これをぜひ法人営業 をされる際の提案の中で生かしていただきたいと思います。

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