質問力=お客様を「激怒させる」ということではない
営業の場面では、とにかくお客様に対するヒアリングが大事と言われています。
しかし、「しつこく聞いたらお客様に嫌がられるかな」「この内容を聞いても教えてくれないかな」と思い、躊躇したことがある方も多いのではないでしょうか。
タイトルには「激怒」という言葉を使いましたが、「お客様を怒らせましょう」ということではありません。また、気合と根性で営業をしましょう、ということでもありません。
営業の方がお客様にヒアリングをする際に、「これ以上質問したら怒られるかな」と感じるラインがあるかと思います。
しかし、お客様が怒るラインは思ったよりも先にあり、激怒される(くらい)までのラインを目安に深く聞いても大丈夫ですよ、ということをお伝えしたいのです。
もう一歩踏み込んでみる
10数年前、私が会社を起業した当初はお客様がいない状態でしたので、1日200件ほど電話をかけ続けていました。
何社も連続して受付電話の段階で断られてしまったり、ガチャっと切られてしまったり…
話していただけるまでのハードルが結構高く、徐々に心が保てなくなっていたある日のことです。
「もっと粘ってみたら、今までとは何か違うことが起こるかもしれない」と、ふと思ったのです。
「お客様に激怒されるまで粘ってみて、もし怒られたらやめよう」と心に決めて、自分を奮い立たせるようにテレアポを始めました。
たとえば「全員会議に入っておりまして」という定番の断わり文句があります。
担当の人が会議に入っているのだったらしょうがない、と諦めがちな場面ですが、
「そうなのですね。ちなみに、その会議はいつ終わりますか?」
ともう一歩踏み込んでみます。
そうすると、お決まりの断わり文句に対して質問された状態になるので、相手の電話の方は戸惑います。
更に、「では、その方々の後ろのスケジュールを教えてください」と粘ってみることもできます。
「粘って質問し続けて、もし相手が怒ったらそこでやめよう」と思いながらやってみると、今まで自分がいかに手前で止めてしまっていたかということがわかり、突っ込んで質問をしても大丈夫だという実感を得ることができたのです。
お客様に対して躊躇なく何度でも質問できるようになるのに比例して、アポを取れる率も上がっていきました。
聞き方を変えてみる
これは商談でも同じでした。
例えば、
予算を聞く
↓
なかなか教えてくれない
↓
競合はどの会社ですか?と聞く
↓
それも教えてくれない
ここですぐに引き下がってしまうと、情報がほとんどないまま提案しなくてはいけないのですが、ここはさらに踏み込んでみます。
予算を教えていただけない場合、
「いくらの金額を越えたら上司の顔色が変わりそうですか?」
「いくら以上だと検討範囲を超えますか?」
など、聞き方を変えながら何度も質問すると、答えていただける質問が必ずでてきます。
教えてもらえることは案外たくさんある
こういうことをやっていくと、質問すれば教えていただけることが思いのほか多くあることがわかってきます。
・予算の金額
・競合の社名
・競合がいつ提案にくるのか
・競合の提案書がだいたい何ページくらいだったか
・何時間くらいの商談だったか
・商談は何人でやっていたか、役職が付いている人は来たか
・終わった後の内部でのディスカッションはどうだったか
・どこが響いたか
さすがにこれは失礼なのでは、と思うような質問でも聞いたら教えてくださるお客様は必ずいらっしゃいます。
つまり、ここまで聞いたら怒られると思って引いていたラインが、実際よりかなり手前にあるのです。
自分の思っていた激怒ラインと、本当の激怒ラインには距離があると言えます。
今まで一回も激怒されたことはない
実際、私は何百社という会社に対して色々と突っ込んだ質問をしていますが、今まで一度も激怒されたことはありません。
私がお客様に対してコンサルティングや研修をする際、様々な営業の方に「お客様は案外怒らないで、色々と教えてくださいますよ。」とお伝えしています。
すると、途端にコンペの勝率がグッと上がるお客様が出てきます。
予算の金額、競合の把握、競合の提案内容、競合がいつ営業に来るのか、ということをわかった上で提案するのと、何もわからない状態で提案するのとでは、成果の出方がまったく変わってくるのです。
「激怒される(くらい)まで質問する」ということをいろんな方に実践していただいている中、キーエンスご出身の元トップ営業マンの方とお話する機会がありました。
そこでこの「激怒される(くらい)まで質問する」ということを話したところ、同じようなことをキーエンスのOJTでもやっていたというお話を伺いました。
営業の強い方は無意識のうちにやっていますし、営業の強い会社というのはこのようなことが文化として根付いているのです。
怒らせるということが大事なのではありません。「激怒されるまで質問してみる」という心づもりでやってみてください。案外自分が手前にラインを置いてしまっていて、本当はもっと聞けるものだということを実感できるはずです。