一方的に売る世界から、共に価値を生む世界へ
これからの営業スタイルはどのように変わっていくのでしょうか。
「営業」と聞くと、お客様に強引に売るというイメージを持つ方も多いかもしれませんが、営業組織の在り方や世界観は変化してきています。これからの営業組織について、考えていきましょう。
『無敗営業 チーム戦略 オンラインとリアル ハイブリッドで勝つ』(日経BP)の中では、営業組織のスタイルを3つに分けて、図解しています。
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「ズレ」の世界(営業1.0)
お客様の意見やニーズを無視して、営業担当が一方的に商品を売っている状態
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「二人三脚」の世界(営業2.0)
営業とお客様の間に生じるズレを解消し、話すことで壁を乗り越える状態
3
「共創」の世界(営業3.0)
営業とお客様、関係者全員が当事者として夢中になり、試行錯誤の中で新しい価値がうまれる状態
近年、ITツールが進化したことで、営業ができることの選択肢や範囲が格段に増えています。
クラウドサービスやチャットサービスなどを用いることで、組織をまたいだコミュニケーションを円滑に進めることが可能となり、営業3.0 のような世界観でお客様と営業がともに価値を創出していく新しい営業の形が生まれているのです。
創発的に価値が生まれる環境をつくる
この進化には管理側から見ると悩みが伴います。自分の見ていないところで営業メンバーが勝手にお客様とやりとりすることにマイナス意識を持つマネジャーもいるでしょう。営業が自主的に行動することで、マネジャーのコントロールが難しくなる場面も出てくるかもしれません。
しかし、厳しく管理したり数字のみを追求しつづけたりしていると、現場で創発的に生まれるものを妨げることになってしまいます。マネジャーとしてもITツールを活用することで、適切な管理を心がけましょう。SFA(営業支援システム)やCRM(顧客管理システム)を導入し、行動記録やデータを蓄積していくのもよいでしょう。
管理しすぎると、新しいアイデアや突発的な成功を生み出す「現場の可能性」を潰してしまうのです。ツールをうまく使いながら、管理しつつも好きにやらせる、ギリギリのラインで様子を見ながら進めることが重要です。ただ数字を追う営業スタイルではなく、お客様との関係性の中から新しいものを作り上げる。そのような楽しさを知る人が増えると、営業の世界も変わってくるでしょう。
管理のバランス感とさじ加減がカギ
現場の自由度を高めて、創発的にアイデアや工夫が生まれる環境を作るには、管理のバランスとさじ加減が重要になってきます。特に、ルールや決まり事を明確化することは大切です。
「やってはいけないこと」「やること」の言語化をおすすめしましょう。具体的には、営業各自が自由に解釈できる状態にすることが重要です。小さなトラブルの種が生まれることもありますが、そのトラブルを適切に管理することで、組織はより柔軟で、創造的なものになります。
イレギュラーが多すぎると無駄が生まれて統制が取れない。しかし、少なすぎると新しいアイデアや価値は生まれにくい……。こうしたバランスを見つけるのが、営業組織のマネジメントにおけるカギといえるでしょう。
良い「さじ加減」を掴むための秘訣は、「理想」や「成功のイメージ」の共有にあります。
「◯◯する」ではなく「◯◯の状態」という表現で、言語化しておくと共有しやすいです。
社内のミーティングでは、その状態を実現するために実行していることを共有することもおすすめです。