商品や業界に詳しいだけでは、充分ではない
今回は「営業が持っておくべき知識」についてお伝えします。
知識がない営業は「御用聞き営業」で終わってしまいます。かといって、商品の特徴を詳しく語れるだけでは足りません。以下は「営業が持つべき5種類の知識」です。
- ①お客様が成功するまでのステップ
- ②陥りがちな落とし穴
- ③トレードオフを乗り越える勘所
- ④課題解決の引き出し
- ⑤上記①〜④を踏まえた商品の使いこなし方
①お客様が成功するまでのステップ
「お客様が目的やゴールを達成するために上がっていくべきステップ」の全体像を理解しておく必要があります。さらに「ステップごとの難易度」も押さえておけると望ましいです。ステップの全体像と難所を営業が理解していれば、お客様を適切にガイドすることができます。
②陥りやすい落とし穴
「頭では理解しているけれど、うっかりハマってしまう」ような落とし穴が事前にわかっていれば、それを避けることが可能です。このようなリスクを明確にしてお客様に提示できれば、無駄な失敗を防ぐことができます。
③トレードオフの乗り越え方
商材の機能が豊富だと便利ではありますが、その反面、使いこなせないリスクも増えます。そうすると「あちらを取ればこちらが立たず」という状況にお客様は直面してしまいます。その際、「どちらを重視されますか?」と判断をお客様に丸投げしてはいけません。「今回の鍵はこれです」という提示をするようにしましょう。
④課題解決の引き出し
お客様は「打てば響く」営業を求めています。営業としては、お客様が直面する課題を幅広く、網羅的に押さえておく必要があります。その上で、それぞれに対して応えられる状態を作っておきましょう。「課題の一覧」を持ち、「その課題をどう解決していくか」に最も詳しい存在になるのです。
⑤上記①〜④を踏まえた商品の使いこなし方
多くのお客様は商品の適切な使い方がわかりません。購入後のカスタマーサクセスに丸投げせず、営業が提案段階からガイドするようにしましょう。例えば商品のデモをするとき、単なる機能説明に終わらず「お客様がおっしゃっていた●●のお悩みについて…」と言えるかどうかが重要です。
商品知識はどうやって身に付ければよいのか
商品知識や業界知識は営業によって非常に大きな差がつくポイントです。
弊社の「お客様1万人調査」の結果、高い成果を上げる営業とそうでない営業との違いは、商品知識において顕著でした。前者には商品知識を強みとしている人が多く、後者には商品知識を強みとしている人は少なかったのです。
ただし、単に情報を暗記するだけでは不十分です。商品知識の習得に重要なのは、冒頭にあげた5つの知識です。
それらはテストのように単純に暗記できるものではありません。では、どうすれば効率よく身につけられるのでしょうか?
ここで興味深いのが、ノーベル経済学賞の受賞者でもあるダニエル・カーネマン氏の「ファースト&スロー」理論です。「ファースト&スロー」理論によると、人間の思考は大きく「システム1」(即座の、速い思考)と「システム2」(遅く、論理的な思考)に分かれます。成果を上げるためには、システム2の「遅い思考」が重要です。
例えば、忙しい日常で反射的にお客様との商談に対応していると、システム2の遅い思考は働かず、本当に必要な知識は身につきません。逆に、しっかりと「遅い思考」を活かせば、知識の定着率は高まるでしょう。
知識を深化させる「手書きメモ」の習慣
実践的な方法として、私は常に手書きのメモ帳を机に置いています。手書きメモの習慣が、遅い思考を助け、知識を深化させる手段となっています。
現代のビジネスではデジタルツールが多用されていますが、私自身は今でもミーティングで時折、手書きのノートを取ります。なぜなら手書きをすることで脳が活性化され、思考回路がスムーズにつながっていく感じがするからです。
オンラインサロンやイベントで話す際にも、最近はスタイルを変更しています。以前はパワーポイントを使って説明していたのですが、最近はリアルタイムでホワイトボードに手書きをしています。この方法で、さまざまな思考のつながりが視覚化され、受講者の理解が深まります。
この手法は、人と対話をする時だけでなく、自分自身の考えを整理する時にも有用です。私の手書きのノートはかなり乱雑ですが、25年以上にわたって一貫しているポイントがあります。それは、重要なポイントに星印をつけることです。このやり方で、一目で何が重要かが分かります。
商談をうまく進める資料の使い方
若手の営業が取る商談ノートを見ると、多くの場合、お客様が言ったことだけが記されています。しかし、高い成果を上げる営業のノートには、自分の意見やアイデアも書かれていることが多いです。これにより、知識が豊かになり、商談も有意義な時間になります。
ただ、営業の場合は単純に書いているだけでは不十分で、商談やプレゼンでそれを人に話す機会があります。その際、営業資料をそのまま読むだけではなく、しっかりと自分の解釈や意見をお客様に伝えることが重要です。
資料に書かれていることだけを話していても、商談は深まりません。資料はあくまでガイドであり、対話を深めるための道具です。
対話を深めるためには資料を「活用する」という考え方が重要です。特にオンライン商談ではリアルタイムで資料を編集するなど、柔軟な対応をしながらお客様との対話を深めるようにしましょう。