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2025.02.25

お客様は必ずしも意思決定の判断基準が明確なわけではない

テストクロージングでお客様の購買意欲を確認しよう

なぜテストクロージングが重要なのか?

商談では価格を提示する前に実質的な合意を得ることが重要です。価格を提示してからだと値引き以外に契約を獲得する手段がなくなってしまうからです。価格を提示する前に実質的な合意を得るプロセスにはテストクロージングが有効です。今回はテストクロージングについてお伝えします。

テストクロージングが重要な理由

今回はテストクロージングについてお伝えします。

まず、テストクロージングとは何かというと、最終的なクロージングに入る前に、お客様の購買意欲を確認することです。商談の終盤に「いかがですか?」といった質問を投げかける場面を想像してください。テストクロージングは、この質問をするよりも前段階でします。

お客様が買いたいという意思を持っているかどうかを事前に確認するのです。お客様に買いたいという意欲が見られればその後の商談をクロージングに向けてスムーズに進められますが、反応が思わしくなければ焦らず、少し前の段階に戻って再度丁寧にアプローチすることが重要です。

「お客様の温度感がわからない」「買ってくれるか不安で値引きしてしまう」といった悩みを抱える営業の共通の課題は、購買意欲を確認する手順を掴んでいないことです。見積を提示した後に「どうですか?」と尋ねるのではなく、見積を提示する前にお客様の購買意欲を確認する必要があります。

お客様が「価格を見ないと判断できません」と言った場合、すぐに見積もりの話を進めてはいけません。お客様の購買意欲がまだ高まっていない状態で価格を提示すると、値引き以外に契約を獲得する手段がなくなってしまいます。

お客様が重視するのは、「とにかく安いかどうか」ではなく「費用対効果の納得感」です。しかし、商品説明を聞いただけでは、その効果をどう測るかは明確になりません。そのため、「費用対効果の納得感」については営業がリードし、費用対効果をどのように評価するのかを明確にすることが求められます。

「判断基準が曖昧なまま見積を検討した経験がある」お客様は75%を超えています。このような状況で見積を提示してしまうと、お客様は当然「価格」に目が行きます。そのため、見積提示に進む前に判断基準を明確にするための議論が必要です。

価格以外の基準が上位にくるかどうかは営業の腕次第です。「商品」や「価格」のせいにすると受注率は向上しません。ある会社で失注原因を調べたところ、「4割がスペック不足、3割が価格」でした。しかし、同じ顧客層に対して同じ商品を難なく売っている営業も社内にいました。その事実には目が向けられていなかったのです。

「価格以外の判断基準」を育てない限り、価格が原因の失注は減りません。では、多くの営業がそこに気づかないのはなぜでしょうか。それは、お客様が提案を断る際には「建前」と「本音」があるからです。調査をするとお客様が営業の提案を断る理由として「費用対効果に納得がいかなかった」という項目は、建前を本音が上回っています。すなわち、営業には提案を断る本当の理由である「費用対効果に納得がいかなかった」ということは語られないことがあるのです。

「価格以外の判断基準」を議論するチャンスは見積を提示する前です。見積を提示するとお客様は価格に目が行きがちですが、これは必ずしも「価格だけで決める」という意味ではありません。それに気づいている営業は見積を提示する前にテストクロージングをし、高い価格でも売れています。

テストクロージングのタイミングを習得するには、ロールプレイによる練習が有効です。お客様から「価格を見てみないと何とも言えないですね」というサインが出たら、価格以外の判断基準を育てることが重要です。

商談の成否を分けるのは「価格の話をする前」

価格の話を一度してしまうと、営業側の選択肢が値引きに偏りがちになります。実際、弊社もさまざまな企業から提案を受けますが、こちらから値引きをお願いしていなくても営業の方から「少し値引きしましょうか」と言われることがあります。もちろん、買う側からすると安くなるのは嬉しいことですが、営業にとっては「値引きしか買ってもらう手段がない」というのは仕事のやりがいやモチベーションにも関わってきます。

価格の話をする前に「買いたい」という意思が固まっているお客様であればその後の商談を問題なく進められますが、「価格を見てみないと何とも言えないですね」と言われた場合は、少し立ち止まる必要があります。

なぜなら、「価格を見てみないと何とも言えないですね」という言葉は、判断基準がまだ固まっていない可能性や、費用やコストが判断基準の中で過度に優先されている可能性を示しているからです。この状況でクロージングを進めると、価格競争に陥りやすくなります。

このような場合、判断基準をしっかりと育てていくことが大切です。お客様は単なる価格の絶対額ではなく、費用対効果で判断する傾向があります。弊社代表高橋の著書『無敗営業 「3つの質問」と「4つの力」』(日経BP)にもありますが、お客様は他の何かと比較して最終的な判断を下します。したがって、比較する対象が明確でない場合、お客様も納得して決断できないのです。

無敗営業 「3つの質問」と「4つの力」

高橋浩一

比較対象を明確にせずにそのまま価格の話に入ってしまうと、お客様が迷った際に「買ってもらうためには仕方がない」と値引きをしてしまうことになります。実際のところ、値引きとセットでクロージングをする営業は非常に多いです。「今だけ特別価格です」「御社に特別に安くします」といった形で、お客様が迷う前に「これでご決断ください」と促すのです。

もちろん、値引き自体が絶対的に悪いわけではありませんが、値引き以外の手段がなくなると、迷っているお客様に対して値引きを繰り返すことになり、営業としての意義を見失ってしまいます。極端に言えば値段しか見ないお客様が増えてしまい、営業の仕事が単なる値引き交渉になってしまうのです。これは営業の本来の役割を考えると、決して愉快なことではありません。

そのため、テストクロージングの段階で価格の話をする前にお客様に「買いたい」と思っていただくことが重要です。

では、どうすれば費用や見積もりの話をする前にお客様に「買いたい」と思っていただけるのでしょうか。

それには、商談の中でお客様の心が動いた瞬間を見逃さないことが重要です。例えば「値引きしてくれて嬉しい」「今だけお得だ」「このタイミングで買うべきだ」といったことも「心が動く瞬間」ですが、これらは「値引きというアクション」に結びついているだけです。

それに対し、「この営業は信頼できる」「このサービスのこの部分に惹かれた」といった理由で心が動く瞬間は、営業の腕で作り出すものです。それこそが営業の醍醐味であり、腕の見せどころです。

お客様は費用対効果を重視する傾向があります。しかし、それに次ぐ重要な要素は、営業の理解力の高さや柔軟な対応です。営業としての実力はお客様にとって強力な訴求ポイントとなるのです。営業の腕で勝負できると分かれば、商談の中で訴求できるポイントは大きく広がります。

商談の早い段階で実質的な合意を得よう

高橋は20代の頃、「一緒に話をすることで頭の整理ができた」という理由で多くのお客様にサービスを購入いただいていました。商談の中でお客様との信頼関係を築くことが営業の強みになるのです。

その際に、高橋はテストクロージング的なアプローチを途中から取り入れました。例えば「もし仮にこれをやるとしたら」といった枕詞を使いながら、お客様がどの程度その提案に乗ってくるかを見極めるようにしたのです。

具体的には、お客様の課題や悩みをホワイトボードや手元のノートに書きながら、「もし仮にこれをやるとしたら、この部分はこういう風に解決できるんじゃないでしょうか?」と提案してみるのです。それに対してお客様が「そうそう」と乗ってくれたとき、これは温度感がぐっと上がっているサインです。温度感が上がったら話す量を少し減らし、受け身に回るようにします。お客様が徐々にノリノリになり、自分からどんどん話を進めていき、「なんかもう早く買いたいんだけど」といったモードになるまで、一歩引いて見守るのです。

ここまで来たら、「値段の話をする前に、ちょっとひとつ確認ですが、◯◯さん個人としてはこれをやりたいと思われますか?」と聞きます。大抵の場合、ここで「はい、やりたいです」という返答が返ってくるでしょう。これは、ほぼ確実にお客様が前向きな答えを出すであろうという確信を持った上で質問しているのです。

「これから見積もり作成に入ります。いったん価格のことは置いておいて、現時点で導入したいと思われますか?」というセリフは、実際にはテストクロージングの一部として使われているわけです。商品紹介とクロージングの間にはいくつもの小さなテストクロージングの機会があり、それらを経て「このお客様は買いたがっているな」と確信した時点で、本格的なクロージングをするのです。

まだお客様の購買意欲が不明な段階でクロージングに進むのは、リスクの高い行為です。商談の早い段階で実質的な合意を得ることが重要です。

逆に、見積もりや値引きに頼ってクロージングをする場合、決定の場面は商談の最後に訪れます。つまり、最終的に提示する価格が決め手になるわけです。しかし、その瞬間以外にお客様の心を動かせないのであれば、打つ手が値引きに限られてしまいます。

このように、テストクロージングの本質は決定のタイミングを前倒しにし、営業が活用できる手段や選択肢を増やすことにあります。実際、お客様は営業のスキルや実力を見て購買を決めることがあります。テストクロージングを有効活用して、より良い成果を得られるようにしましょう。

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