「品定め質問」の答え方
新規の初回訪問で「品定め質問」がきた際に、以下のような質問がよく見られます。
- 弊社の業界での事例や実績は?
- 他社にはない独自の強みは?
- 費用はおよそどのぐらい?
このような質問に対して実績や強み、費用だけを正面から答えるのは不十分です。真に求められているのは、「当社が提供できる価値のポテンシャル」を伝えることです。
初回訪問時にお客様がこのような質問をするのは、「この会社(営業)との商談に時間を使う価値があるか」を判断したいからです。多くの初回訪問がガッカリするものであるため、お客様は無駄な時間を避けたいと考え、無意識に営業の実力を測ろうとします。その際には、見えない「足切りライン」が存在することに注意が必要です。
以下のような対応をした場合、「足切りライン」に引っかかる可能性があります。
- 質問にテンパってしまう
- 問われていることに対してズレた答えを返す
- 一般的な答えで終わらせる
このような対応では、約8割の営業が足切りされてしまいます。逆に、聞かれたことに全く答えずに質問し返すような対応も避けるべきです。
品定め質問をクリアするためには、以下の4つの要素を30秒から1分程度で回答する必要があります。
- ①事前に最低限の情報を調べている
- ②お客様に対する仮説を予め考えている
- ③当社として価値を提供できる根拠がある
- ④他社と比較してお役に立てる点がある
高橋
御社のHPやIR資料を拝見し、XXの記述がありましたので、社内でXXを議論されているのではないかと考えました。弊社は、御社と同業界でXXに悩まれる企業様に対して、XX〜XX円ぐらいの費用でXXの支援を提供しており、お客様からはありがたいことに“XXですね”とフィードバックをいただいております。
このように費用感を幅で伝え、「この場にお客様が時間を割いている理由」の核心に迫る「核心質問」を投げかけます。
高橋
これは他社の事例ですので、御社には独自のご事情があるかと思います。そこで弊社がどのようにお役に立てるか、御社のご期待に合致するように1つお尋ねしたいのですが、すでに御社のことを十分に理解されている他社さんとお付き合いされているのに、初めての弊社にこうして会っていただけるのはなぜでしょうか?
初回訪問での商談を成功させるためには事前準備と質問力、そして価値訴求力が重要です。
新規営業で重要なのは「もしもシリーズ」
また、新規営業において特に重要なのは「もしもシリーズ」です。この「もしもシリーズ」とは、「自分がお客様の会社に転職し、お客様のミッションで仕事をする立場になったと仮定して、どうやって成果を上げるかを具体的にお客様の文脈に合わせて考えること」です。
例えば、組み立て部品のメーカーに対して営業強化のコンサルティングを提案する場合、ただサービスラインナップを紹介するだけではなく、「組み立て部品メーカーとしての部品販売をやられているのであれば、こういったことが起こっているのではないでしょうか」「こういうところに、課題を解決しにくい構造があるのではないでしょうか」といったように具体的な問題点を指摘し、その解決策を提案します。そしてその提案にご納得いただけたら、後半で自社のサービスを紹介する、といった流れです。
これは「言うは易く行うは難し」の典型例であり、「もしもシリーズ」のレベルを上げていくことは簡単ではありません。
弊社代表の高橋は何もない状態から会社を立ち上げ、1つ1つ必要なものを作り上げたり、改善したりしてきた経験があります。そのため、職務上サービスや製品を作る側にいたわけです。しかし、社内には「完成された商品しか売ったことがない」というメンバーも当然います。そのようなメンバーが「もしもシリーズ」を実践するにはどうしたら良いのでしょうか。
そこで重要なのは、上位役職者が自分の会社の業績をどのように上げているのかをできる限り詳細に共有することです。例えばBtoBのビジネスにおいては、相手の会社を良くするために提案を行います。しかし、自分の会社を良くするために何かを考えたことがない人が、お客様の会社を良くするために考えることは困難です。
競争が激しくなると、表面的に良さそうな商品を作って紹介するだけではビジネスの成長は見込めません。今の時代においては、本当にお客様の課題を解決できるものが求められています。
ただ、そのためには「もしもシリーズ」ができることが必要です。単に「うちの商品はこうですよ」と特徴を述べるだけでは、営業がどれだけ良いことを言ってもお客様の信頼を得ることは出来ません。提案がどれだけ説得力を持つかは、自分の会社を良くしようと考え、実際にどれだけ建設的に行動した経験があるかによって変わってきます。
重要なのは「お客様になりきって」考えること
自分が日常的に抱えているミッションの範囲だけでは、集める情報もその範囲に限られてしまいます。その結果、想像力が限られ、新しい発想が生まれにくくなります。そのため、自分の職務の範囲を超えて会社にとって何がプラスになるかを考え、行動することが求められます。無理にハードワークを推奨するわけではありませんが、与えられた仕事だけをこなしているだけでは「もしもシリーズ」を実践できるようにはなりません。
もちろん与えられた職務を全うすることが前提ですが、その上で会社全体がどうすればより良くなるのかを考えることが重要です。これが、よくベンチャー企業のオーナー社長が言う「経営者目線を持つ」ということだと言えるでしょう。
ネット上ではそれに対して「経営者並みの給料をくれるならやるよ」といった意見も見受けられますが、重要なのは経営者のように働くということではなく、まずは考えてみて、想像を巡らしてみるということです。
それをしたことがないと、いざお客様を目の前にしたときに「こうすればもっと御社は良くなるのではないか」という提案がなかなか出てきません。なぜなら、情報を豊富に持っている自分の会社に対して「どうやったらこの会社が良くなるのか」と考えたことがない人が、全く情報がないお客様の会社について「どうやったらこの会社が良くなるのか」と想像することは困難だからです。
これはオーバーワークを推奨しているわけでもなく、給料や職務を超えて働きましょうということでもありません。そうならない範囲で、まずは「考えてみる」ことが大切です。
もちろん、「もしもシリーズ」のレベルを高める方法は他にもありますが、大事なこととしては「もし自分がこのお客様の会社をより良くするとしたら、どうするだろうか」ということを、あたかもその会社に入社したかのようなリアリティを持って考えることです。そのように考えて営業活動を進めることで、お客様に対する提案がより一層響くようになるでしょう。