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2024.10.31

事例は「出し方」で響き方が変わる

案件化に繋がる事例紹介の仕方とは?

お客様に響く事例紹介の仕方とは?

事例は「出し方」によってお客様への響き方が全く変わります。その際、お客様と他社事例の「共通点」を見つけることがポイントです。今回は事例紹介における4つのポイントについてお伝えします。

事例紹介では4つのポイントを押さえよう

商談の機会があっても案件化に進まないと感じている営業に共通する悩みの1つが「事例の出し方」に改善の余地があることです。以下の4つのポイントに注意することで、効果的な事例提示が可能になります。

  • ①課題を特定してから事例提示を行う
  • ②事例の引き出しを広く持つ
  • ③複数の事例を提示し、反応を探る
  • ④響くポイントが見えたら深掘りする
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まず、事例を出すタイミングが重要です。喉が渇いていない人に水を差し出しても喜ばれないのと同様に、顧客の課題が不明な状態で事例を出しても効果は薄いです。そのため、顧客の課題を引き出すために「なぜ今この問題に時間を使うべきなのか」を問う「核心質問」が有効です。解決されずに残っている課題を特定することが肝要です。

次に、その課題に対して適切な事例を提示します。ただし、提示する事例が1つだけだと「その会社は当社とは違うので…」という反応を引き出してしまう可能性があります。したがって、複数の事例を提示できるように事例のストックを広く持つことが重要です。特にオンライン商談では手元のPCで必要な資料をすぐに探せるため、事例を提示するのが容易になります。

複数の事例がある中でどれがお客様に響くかは試してみないとわからない場合があります。いくつかの事例を提示してお客様の反応を見ながら響くポイントを探ります。1つの事例で反応が薄い場合はすぐに次の事例を提示し、「当たり」を探すのがポイントです。

「当たり」がいくつか出てくると、お客様の課題についての理解が深まり、その課題に対する関心も高まります。ここで、案件化に向けたさらなる深掘りを行います。いくつかの事例に対して好反応が得られた直後であれば、質問を投げかけやすくなります。

お客様との「共通点」を見つける

事例はお客様からリクエストがあって出す場合もあれば、営業側から提示する場合もあります。まずはお客様からリクエストされた場合について考えてみます。

よくある質問としては「御社で我が社のような業界を支援した事例はありますか?」や、「我が社のような企業規模の会社を支援されたことはありますか?」といったものが挙げられます。

ここで避けたいのは「持ち帰らせていただきます」と、その場で回答を保留してしまうことです。これはできるだけ避けるべきです。弊社が実施した「お客様1万人調査」においても「その場で迅速に回答できるかどうか」が非常に重要なポイントであることが確認されています。

では、事例について質問されたときにどのように答えるべきかですが、質問される内容としては「我が社のような業界の例はありますか?」や「我が社のような企業規模の事例はありますか?」といった具合に、業界や企業規模に関するものが多いです。

その際、まず業界や企業規模についてお客様がなぜそのように言及されるのかを考える必要があります。お客様は自社に何らかの特殊性があると考えているため、そういった質問をするわけです。つまり、相手の営業が何でも解決できるとは思っておらず、「うちの会社は特殊だから、一般的な解決策ではうまくいかないのではないか」と暗に示しているのです。ただ、お客様はそのことを詳細に説明するわけではありません。

そこで重要なのは、お客様の特殊性をきちんと理解しようとする姿勢です。一方で、あまりにも特殊性に焦点を当てすぎると「やはりうちは特殊だから、御社のサービスは合わないかもしれません」とお客様に言われてしまう可能性があります。これは避けたいです。

そこでおすすめの対応としては「御社と共通点がある企業様に対して、当社でも事例がございます」とお伝えすることです。「共通点」という言葉を使うことで、業界や企業規模に特殊性を感じているお客様にも安心感を与えることができます。立ち上げ直後の会社でなければ、共通点のある事例を出せるはずです。立ち上げ直後であればまた別の対応が必要ですが、ある程度事業をしている会社であればこの回答は問題なく出来るでしょう。

さらに、「御社と共通点がある企業様に対して、当社の事例はもちろんございます。ただし、もっと具体的に理解を深めたいので、特にお困りの点や課題意識をお伺いしてもよろしいでしょうか?」と一言添えると良いでしょう。

するとお客様は、「ええ、そうですね。実は少し特殊な点がありまして」と話し始めることが多いです。その「特殊な点」というのは、営業側から見ると「それほど特殊ではない」と感じることが多いです。もちろん、本当に特殊なケースもありますが、それほど特殊なものではないことが多いでしょう。多くの場合、他のお客様との共通点を見出せるはずです。

そのため、まず共通点について少し触れた上で、お客様の課題や悩みにしっかりと耳を傾けることが重要です。そして、自分が思いつく事例があれば「そのようなケースであれば、このような事例があります」と提案しましょう。また、その場で適切な事例が見つからないと感じた場合には、その時に初めて持ち帰るという判断をしましょう。

ただし、持ち帰るにしてもお客様から質問された瞬間にすぐ「持ち帰ります」と言うのではなく、「共通点がある企業様に対しての導入事例もございますが、詳しく理解させてください」と言ってお客様の悩みや課題を詳しく伺ってから持ち帰るのとでは、後に提供できる事例の精度が全く異なります。

このように、事例をお客様から求められた際の最初のコミュニケーションが非常に重要です。

事例は「味わい方」とともに伝えよう

ここからは、営業側から事例を出す際のポイントについてお伝えします。事例を提示する際によくやりがちですが避けるべきことは、いきなり事例を長々と説明してしまうことです。

例えば、営業は以下のようにいきなり説明を始めてしまうことがあります。

営業パーソン

当社にはこのような事例があります。この企業様は何年前に創業され、従業員が何人で、こういったサービスを提供している企業様です。当初はこういう悩みがあり、当社にこのようなご相談をいただきました。そこで、お客様とこういった議論を重ねた結果、このようなサービスを提供することになりまして…

しかし、これでは聞かされる側としては、どこに注目すればいいのかが分かりづらくなります。つまり、いきなり事例を詳細に説明しても、お客様にとってはポイントが伝わりにくいという問題が生じるのです。

当社が支援している食品メーカーや飲料メーカーのケースがあります。いわゆるナショナルクライアントと言われるスーパーやコンビニ、ドラッグストアなどで棚に並んでいる商品を扱っている企業様です。そこで高い成果を上げる営業の方々が試食や試飲を行う際に共通しているポイントがあります。自社製品をバイヤーの方に試食ないし試飲をしていただく際、高い成果を上げる営業は味わっていただく前に少しだけ解説を加えるのです。

例えば少し高級なレストランに行った際、スタッフが料理の説明をしてくれることがあります。「この野菜はこういった農家から仕入れています」とか、「調理法にこのようなこだわりがあります」といった説明です。こうした解説を聞いて少し期待が高まった状態で食べるのと、何も説明されずに食べるのでは味わいが変わります。ちょっとした一言で「味わいポイント」を伝えてもらってから食べると、やはりその料理がより美味しく感じられます。

事例を説明する際にはその「味わい方」や「ポイント」を少し前倒しで伝えることが重要です。「特にこの点は御社と共通しているので、この事例をご紹介します」といった形で話すと、お客様もその事例のポイントを理解した上で聞くことができます。

しかし、多くの営業はこのような「味わい方」や「ポイント」に触れず、ただ事例を説明してしまうことが多いです。しかし、これは非常にもったいないことであり、貴重な事例紹介の機会を失ってしまうことにつながります。

ここで1つ注意すべき点があります。先ほども述べたように、お客様は「うちは他とは違う、特殊なんだ」と感じたがる傾向があります。なぜなら、多くのお客様は過去に満足のいかない営業体験をしているからです。

それは「他の会社と一括りにされ、自分の会社をきちんと理解してもらえなかった」と感じる営業を受けた経験です。そのため、自分の会社の特殊性を無視され、他の会社と同じ扱いをされたと感じると「この営業はうちの事情を全然理解していない」と思われてしまうことが多いのです。

この点については書籍『無敗営業 「3つの質問」と「4つの力」』(日経BP)でも詳しくお伝えしておりますので、ご興味のある方はご覧ください。

無敗営業 「3つの質問」と「4つの力」

高橋浩一

そのような状況を踏まえると、いきなり1つの事例がぴったりとはまるとは限りません。そのため営業としては、もしも「これはあまり響かないかもしれない」という気配を感じたらすぐに「他にこういうケースもあります」と他の事例を提示できる準備をしておくことが重要です。

例えば満を持してA社様の事例を紹介したけれど、その事例が思ったほど効果を発揮しなかった場合、「やはりうちとは違いますね」とお客様に言われてしまうかもしれません。

しかし、次から次へと事例を出せば「この会社は守備範囲が広いんだな」と思ってもらえます。そうなると「そんなに守備範囲が広いなら、うちのような特殊な会社に対しても何か良いソリューションがあるかもしれない」と期待を持っていただけるのです。

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