今回のテーマは、お客様の「検討します」の裏にある「壁」についてです。
若い営業の方のお悩みや課題をTwitterで募集したところ、お客様の「検討します」とか「考えます」というところから先に進めないという内容を何名かの方からいただきました。 前向きに本気で検討するということであればいいのですが、どうしても後ろ向きな感じ、その先に進みそうにない場合がありますよね。
世の中には「応酬話法」や「オプションハンドリング」、「反論対策」、「買ってくれない理由を潰す」といった方法がありますが、今回それとは違った角度から考えてみます。
違った角度というのは、そもそもそこにどんな「壁」が発生しているのかというところから考えてみませんか?ということです。 壁については、不信・不要・不適・不急という「4つの”不”」が有名ですが、今回はそれらともまた違った角度です。
「壁」の4パターン
①関係性の壁
②情報整理の壁
③思い込みの壁
④損得勘定の壁
①関係性の壁
1つ目は、「気を許していないので動きたくない」という関係性の壁です。
先ほどあげた「不信・不要・不適・不急」4つの「不」はものすごく有名なフレームワークで、例えば、新規のお客様との商談では、まず訪問で「不信」を突破するというのがあると思います。 当社がしっかりした会社であると示すとか、自分の人となりを紹介するという方法がありますが、もう少しそれを広く考えた方がいいのではないかと思うのです。
つまり相手と「気を許せる関係」があることを前提としておくべきではないかということです。
以前テレアポの話題の際に、”今すぐ”のタイミングのお客様よりも、教えてくれるお客様を探しましょうという話をしました。 平たく言うと「しっかり話せる間柄のお客様を増やす」ということですね。 ”今すぐ”のお客様を探すというのは「不信・不要・不適・不急」を突破する考え方に近いのですが、いきなりそこから入ると、どうしてもブロックされてしまうことが多いのです。
したがって、そこをいきなり無理に突破するのではなく、関係性の壁をしっかり超えるべきで、そのために必要なのが「傾聴と自己開示」なのです。
②情報整理の壁
2番目は、「状況がクリアになっていないので動きたくない」という情報整理の壁です。
お客様の台詞では「もう少し考えます」とか「社内で話してみます」といった感じで表れます。若手の方からご質問いただく「壁」はこの②に近いのかもしれません。
そのときに多くの営業の方は、「情報の追加」という手段をとります。 考えるというお客様に対して、これでもかと検討がプラスに働くような情報を追加で提示するということですね。
私はここに落とし穴があると思っています。 情報が整理されておらず、ちゃんと考えられないことを気にして「考えます」というお客様に対して追加情報を与えてしまうと、余計に迷って、もう少し考えようとなりやすいのです。
そういう情報整理の壁があるお客様に対しては、検討に必要な情報を整理してビジュアル化するのがおすすめです。 お客様の課題やお悩み、それに対して当社が役に立てることも含めて、情報をきちんと見えるように整理をするというのが、②の壁に対するプロではないでしょうか。
③思い込みの壁
情報が整理されると、それに対してエモーショナルに対応するべき壁とロジカルに対応すべき壁が出てきます。
人間の脳で行われる思考は、ざっくり言うと、経験や直感といった速いスピードで処理する「速い思考」と、じっくり考えて理知的に情報を処理する「遅い思考」と分けられます。 それぞれの思考に対して働きかけるアプローチが違ってくるので、③と④でアプローチを分けています。 まずは、「速い思考」からくる「思い込みの壁」について解説します。
「言っていることはわかるし、確かに良いサービスであることはわかる」しかし「なんかうまく言葉にできないんだけど、これまでの経験とか直感から動きたくないんですよ」というケースがあります。 そこに対していくらロジックで迫っても、認知の枠組みが書き換わらない限りは先に進めないのです。
こういった「速い思考」からくる思い込みに対しては、思い込みの原因を特定して、枠組みを再定義します。 つまり認知の方に働きかけなければいけないというのが③の話ですね。
④損得勘定の壁
一方「遅い思考」つまり、じっくり整理をして損得勘定で考えている場合への対応が④です。 わかりやすくするため「引っ越しの部屋探し」を例に考えてみましょう。
家賃、間取り、築年数、駅から徒歩何分……といった情報を見比べて、場合によってはマトリックスか何かを書いて整理される方もいらっしゃるかもしれません。
こういうとき、損をしないように熟考しますよね。 これは④の話です。④に対しては、選択肢と判断基準に対して影響を与えます。 具体的には「選択肢を増やせるか」ということや、意思決定の判断基準に対して、要件整理の3つの観点から問いかけるということになります。
この4つの壁を改めて見てみると、どういうふうに乗り越えるかというアプローチがそれぞれ違います。 単純に「オブジェクトハンドリング」や「反論対策」として括らず、4つの壁の違いを理解することの重要性が、今回のテーマで最も伝えたいポイントです。