<コンペの定義>
・お客様から複数の会社が呼ばれている
・お客様に対して複数の会社が、1日もしくは一定期間の中で「順番に」「公平に」プレゼンの機会を与えられている
・公正に運営されている
今回「コンペ」と呼ぶのは、以上のことを満たしたものを前提としてお話しします。
コンペで抑えたい、プレゼンの順番とは
そんなコンペにおいて、何番目にプレゼンするのが有利だと思いますか?
もちろん人それぞれの好みや、相性というものもあります。
また、とても面白い喋りができて、ぐいぐいお客様を引きつけられるような、圧倒的なトークに自信がある方にとっては、あまりプレゼンの順番は関係ないかもしれません。
しかしそうではなく、あくまでもベーシックなプレゼンをしてなるべく有利に進めたいという方には、明確におすすめしたい順番があります。
結論から言うと、おすすめしたいのは1番最後です。
それはなぜでしょうか?
ひとつひとつ、理由を考えていきたいと思います。
「1社に決める」 = 「他のすべてを切り捨てる」
まずコンペということは、お客様が複数の会社の中から1社選ぶことになります。
そして1社選ぶということは、他のすべてを切り捨てる決定をする、ということです。
「1社に決める」 = 「他のすべてを切り捨てる」
これが大きな、大事な前提になります。
そして他のすべてを切り捨てるには何が必要か。
まず、すべての提案が揃っていない状況では、1社に決めることはできないですよね。
以前別の記事で、本番のプレゼンを迎える前に「今のところうちは何位なんでしょうか?」と、コンペでの順番、中間順位を聞きましょう、というお話をしてきました。
(→コンペの最中、必ず聞くべきこと)
今回説明するのは、いざ本番当日にどうするか、というところです。
お客様としては、各社の正式な最終提案が出揃っていない状況では、印象としての中間順位はあったとしても、他を切るという判断はまだできません。
プレゼン1番目の不利な点
特に1番目にプレゼンをする場合、お客様はまだ他の会社のプレゼンを聞いていないため、そのプレゼンがそもそも良いのか悪いのか判断できません。
また、お客様側としては、プレゼンを聞いていくときに、どこにアンテナを立てるべきなのかがまだはっきりしていない状況です。
そんな状況の中で自分のプレゼンの勝負どころをアピールしても、上手く響かない可能性が高くなってしまいます。
ですので、最終提案を行う順番として、1番目は不利と言えます。
プレゼン2番目、3番目(途中の順番)の不利な点
では2番目、3番目といった途中の順番はどうでしょうか。
「最後の方になるとお客様は疲れてくる」とおっしゃる方もいます。
もちろん体力的なところもありますが、しかしそれよりも、複数の会社の中でまだ後ろにプレゼンをする会社が残っている状況では、お客様としてはどうしても「最終的に決めるかどうか」という目線では聞きづらい段階です。
つまり、そういった目線でプレゼンを聞く段階に差し掛からないと出てこないような、具体的に踏み込んだ質問はされづらいと言えます。
また、自分の会社の提案内容によって、お客様が気にかけるポイントや確認したいことが新たにあぶり出される可能性があります。
それらのポイントについて、お客様から後からプレゼンする他の会社に質問され、その会社から良い答えが返ったりすると、逆に自分の会社が不利になってしまう、ということにもなってしまいます。
そういったことを考えると、2番目や3番目など、途中の順番でのプレゼンも不利な材料が残ってしまうのです。
最後にプレゼンをする利点と、心がけたい「双方向」
そこで、最後の順番をおすすめしたいのです。
最後の提案になると、お客様としては「決めるかどうか」という目線でプレゼンを聞きやすくなります。
この段階では、それまでの各社の提案によってアンテナも磨かれ、判断基準もはっきりした状態です。
また各社への所感もある程度揃っています。
この状態でプレゼンをする時にご注意いただきたいのは、一方向の話をする時間をあまり長めに取らないということ。
極端な話、60分間の時間の中で、「50分間プレゼン、10分間質疑応答でお願いします」という案内書きが来ていたとしても、あえて、「10分間プレゼン、50分間ディスカッション」という展開に持ち込みます。
もちろん、資料としては50分プレゼンできるようなボリュームは揃えていきます。
しかし最後のプレゼンになると、お客様はプレゼンを聞くだけでなく、決めるための確認、という大事なプロセスがありますから、そこは明らかに双方向にディスカッションできたほうが良いわけです。
双方向にすることで、お客様が疑問や不安に思われていることを払拭し、「他社と比べてどうなのか?」という疑問に対する回答によって、ご納得をいただく。
これは、一方的な説明ではなかなか届きません。
ですので、順番は最後を取り、双方向にすすめる割合を非常に大きくしておく必要があります。
極端な場合ですと、私は最後のプレゼンでは「どうですか?」という質問から入り、それまでのプレゼンの感想をお聞きしたりします。
注意点
こんな風に、コンペでのプレゼンの順番は最後がおすすめですが、注意点もあります。
順番が最後というのはたしかに有利である一方、あまりはっきりお客様の感触がわからない状態でプレゼンを作り込んでしまうと、プレゼンの内容自体がずれてしまうというリスクも起こり得ます。
そのような状況を避けるために、正式な最終提案の前にプレ提案、あるいは、プレ提案に近いディスカッションは十分にしておいた状態で、最後の順番を取ることがとても大事です。
それによって、本提案の最終的なプレゼンを各社がする前に、自分の会社が出すプレゼンがどのように認識されているか、というある程度の感触についてはわかるはずです。
これがある程度見えた状態で最後のプレゼンを作り込み、「他の会社を切ってもいいかどうか」という判断に対して耐えうるような双方向のディスカッションの場をつくる。
これが、複数の会社が並んでコンペをする場合の手堅い定石、ということになります。
私自身もコンペの順番はいつも最後を取り、双方向のディスカッションをすることで、コンペ無敗を続けています。
実際に自分でやってみてもそうですし、お客様に試してみていただいても効果がある方法です。
複数の会社でのコンペに勝つためには、ぜひ「プレゼンは最後の順番を取ること」「双方向のディスカッション」を意識していただければと思います。