プレゼンでは資料に書いていない情報を伝える
資料の内容を単に「読む」スタイルのプレゼンテーションは、聴き手の関心を引き付けません。特にプレゼンの開始時にこの方法を取ると、お客様の興味は急速に低下し、再び引き上げるのは困難です。初回の訪問で会社の紹介を行う際、資料をそのまま読むことは、訪問そのものを無駄にしてしまいます。
プレゼン経験が豊富な人は、スライドの内容を単に読むことはしません。彼らが採用する方法として、スライドに記載されていない情報を口頭で提供します。
- その理由は…
- 具体的に言うと…
- つまり…
このような情報を提供することで、聴き手は「資料に記載されていない価値ある情報」に集中します。
資料内容が全体の70%を占め、残りの30%を口頭で補足すると、聴き手は内容に集中してくれます。ただし、内容を「語る」だけでは、プレゼンが予定調和的に進行してしまい、場の雰囲気が一定以上に高まることはありません。お客様を真に引き込むためには、資料を「語る」以上の方法が必要です。それが、資料を「使う」ことです。
質問を事前に用意し、お客様の反応を引き出す
プレゼンの場を活気づけるためには、資料を「使う」シーンを組み込む必要があります。スライドは「引き金」として使用され、核心をつく問いかけが主役となります。例えば、「…というのが私の意見ですが、皆さんの意見はどうでしょうか?」というような質問を事前に準備するのです。
多くの人々は、資料を「読む」か「語る」のいずれかのスタイルに留めています。このスタイルで「以上ですが、何か質問はありますか?」と尋ねても、場の雰囲気を盛り上げることはできません。お客様の反応を引き出すためには、資料を「活用して」重要な質問を行うことが求められます。では、どのタイミングで資料を「使う」のでしょうか?
資料を「使う」シーンを組み込もう
10ページの資料であれば、以下のようなバランスが理想的です。
- p1:使う
- p2:語る
- p3:語る
- p4:使う
- p5:読む
- p6:語る
- p7:使う
- p8:語る
- p9:語る
- p10:使う
プレゼンの開始時と終了時に「使う」を配置します。開始時の「使う」は聴き手の関心をつかむため、終了時の「使う」は印象を深め、アクションを促進するためです。「読む」スライドは1〜2ページに抑えます。
重要なのは、p4やp7のような中間のポイントにも「使う」を配置することです。特にオンラインでの商談では、初めに設定したストーリーをそのまま伝え、「何か質問は?」と尋ねるだけでは、反応が得られないことが多いのです。お客様の参加意欲を高めるため、双方向のディスカッションを期待して事前準備をすることが大切です。
当社代表の高橋は約15年間、一般的な商談で「用意した資料を始めから終わりまでそのまま話す」ということはしていません。資料はあくまで手段であり、目的ではありません。「読む」「語る」の比率が高すぎると、資料そのものが目的となり、お客様を無視したプレゼンになってしまいます。
ホワイトボードを活用し、アイデアを視覚化する
ホワイトボードの活用も役立ちます。ホワイトボードを使うことで、お客様との対面商談でも、オンライン商談でも、アイデアを視覚化して共有することができるようになるからです。
例えば、対面商談では大きなノートに文字を書くか、プロジェクターを使用することができます。オンライン商談では、画面共有を使ったり、オンラインのホワイトボードツールを活用したりこともできます。
iPadの画面を共有し、ホワイトボードのように利用することもお勧めです。大切なのは、対話をリードする力や表現力を高めることです。これによって、お客様との対話がより効果的になり、営業の価値を実感していただけます。
ホワイトボードの使用は、資料を活用する手段として非常に有効です。ただし、重要なのは、相手との対話を通じて共に考える力を鍛えることです。ホワイトボードを使い、何もない状態からアイデアを具現化し、お客様と共に考えることで、対話がより深まるでしょう。
高橋が新卒で入社したコンサルティング会社では、会議室にホワイトボードが置かれ、ミーティングはほぼすべてホワイトボードを使って行われていました。
ホワイトボードを使うことで、議論や整理がしやすくなります。社内会議などでは、ワードやGoogleドキュメントなどに内容をメモしている場合もあると思いますが、それと合わせてホワイトボードがあると議論の自由度が高まります。
資料は活用するだけでなく、議論のスキルを鍛えよう
お客様との商談でも、手元のノートをホワイトボードに移すことで、相手と共有しやすくなります。ノートに内容を整理して、自分と相手に見える形で書き込むことで、話の内容や進行についての共通理解が得られます。
特に、提案書をホワイトボードに描きながら議論を進めることで、お客様の納得感が高まり、受注につながることもあります。
オンライン商談でも、タブレットや紙のノートに書いた内容を写真に撮って共有する方法があります。これによって、お客様の注意を集めつつ議論を進めることができます。ホワイトボードを使うことで、資料を活用するだけでなく、議論のスキルを鍛えることができるでしょう。
もちろん、ホワイトボードの代わりに1枚の紙でも問題ありません。重要なのは、相手とのコミュニケーションを大切にし、共に考える力を鍛えることです。これによって、資料の有効活用がより効果的になるでしょう。