商談の場面で「今じゃない」「昔から他社との付き合いがある」とおっしゃるお客様は、すぐ翻意させようと強引に説得するほど心を閉ざしてしまいます。「サービスの魅力」「他社との違い」をひたすら押す営業では、成約率が上がりません。深掘りすべきは「今この場に時間を使っている理由」です。
お客様が求めているのは「翻訳」
まず、「サービスの特徴」や「他社との違い」を主張しても、お客様の心に響きにくい現実を理解しておく必要があります。お客様が求めているのは「翻訳」です。お客様のことをしっかりと理解し、お客様に対して提案がどうマッチしているかを、営業都合のストーリーではなく、お客様に合った文脈で語る必要があるのです。
お客様に合った文脈で発注のストーリーを描く際、欠かさずに聞き出したいのは
●「今じゃない」と感じつつも、なぜこの商談に時間を割いているのか?
●「昔から付き合っている他社がある」のに、なぜこの商談に時間を割いているのか?
という情報です。強引に取ったアポでなければ、必ずここにヒントがあるはずです。
「今ここに時間を使っている理由」を掘り下げる
お客様が「今ここに時間を使っている理由」を丁寧に掘り下げていけば、どこかに、営業の提案を必要としている根拠があります。ただ、お客様が「売り込まれるのでは」とガードしている状態では、これを聞かせていただくことはできません。正面からお客様を説得したり論破したりしていては、この壁を突破することはできないのです。
「今この場に時間を使っている理由」をきちんと聞くことは、お客様との関係構築にも役立ちます。営業を必要としている理由があるということは、お客様の方にも「わかってくれる営業とはつながっておきたい」という気持ちがあるということです。営業が無理にプッシュすると、この気持ちの糸が切れてしまうので注意が必要ですね。
よく「売り込まない営業は売れる」と言われます。成果が出ない営業は、よくこれを「売り込まないで待つこと」と誤解してしまいます。実際は、売り込まないからといって単に待っているのではなく、「お客様が今この場に時間を使っている理由を丁寧に掘り下げる」という能動的な動きがそこにあるのです。